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58章 暴いてみせる、銀色の過去!

 身体から青いオーラを放ち、目を青くした華凛はMr.シルバーをじっと見つめていた。

 ゴーストは華凛に似た髪のサイドテールのついた鹿撃ち帽のようなヘッドが付き、茶色いインバネスコートを着込んだアクセスディテクティブゴーストに姿を変えて華凛の横で浮いた。


「颯ちゃん、無理したらあかんで!」

「くっ!」


 素子の颯を心配する声が聞こえて来た。いくら激!勇者丸を水の刃に変えて相性が良くなったからと言って、それでも全身から炎を放つ計都羅喉の方が火力で勝っているようだ。


「颯ちゃん…!待ってて…!」


 華凛がそう言うと周りに様々なパズルのピースが次々と浮かび始めた。華凛の目の前に青く光る球体も出現する。

 このディサイドヘッドは華凛がみんなと一緒に得て来た情報や、対象となる人物の隠している感情や秘密をパズルのピースとして散らばせるというもの。

 パズルを完成させた時、真実は必ず明らかになる優れものだ。

 初めてこの姿になった時は強制発動という形だったが、今回は自分の意思で発動させたので心なしかリラックスできている気が華凛にはした。


「ふむ、それが君たちのディサイドヘッドか。近くで見たのは初めてかな?」

「八雲先輩の家であなたは隠れてこのヘッドを見てたからこれで二度目だね。」


 Mr.シルバーの遠回しな言葉を華凛は即座に修正して見せた。


「ふっ、まさに君の憧れが詰められた良いデザインのヘッドだ。だが、私という存在を形作る元になった物のせいかな?ゴースト君が身に纏っているインバネスコートは見ていてあまり良い気分はしないな…。」


 Mr.シルバーはジェームズ・モリアーティの書物を元にして生まれた式神。どうやらシャーロックホームズに似た姿が気に入らないようだった。


「時間がない、あなたの全てを見させてもらうよ…!」


 この話術もMr.シルバーの策の内だろう事は華凛にはわかっていた。悠長に話していたら三分経ってヘッドチェンジが解けてしまう。

 華凛はMr.シルバーを見て洞察したパズルのピースを探し始める。


「華凛君、ここは私が作り出した結界アルジェントルランドだ…!私の心に土足で踏み入る覚悟はできているかな…!?」


 Mr.シルバーが不快そうにそう言うと背後から急に闇が広がって来た。


「なっ…!?」

「「華凛!」」


 A(アクセス)D(ディテクティブ)ゴーストとミストの叫びが聞こえた。

 ミストが華凛の右肩に触れた後、華凛は闇に包まれた。

 華凛は暗闇の中で一人漂う事になった。


「…真っ暗で何も…。」

「見えない事はないよね?」

「…そうだね。私がMr.シルバーと対峙していたと言う真実はなくなったりしない!」


 隣にはA(アクセス)D(ディテクティブ)ゴーストがいた。

 自分は一人で漂ってなんかない。華凛が認識を改めた途端、自分の胸元に青い球体を出現させた。同時に周りにパズルのピースが現れ始める。

 発光したパズルが灯り変わりとなった。


「ミストも引っ付いてたよね?」


 華凛がそう言うとミストも急に現れた。


「あれ?私…?」


 ミストは周りをきょろきょろし始めた。


「華凛?」

「ミスト、ありがとね。咄嗟に私を庇おうとしてくれて。ほら、私に掴まって?」

「う、うん…。」


 ミストは戸惑いながらも華凛に抱きついた。


「この暗闇は第二試練の時と同じ空間…。Mr.シルバーの過去を暴くにはちょうどいい…ううん!むしろ、打って付けだ!」


 場所なんて関係ない。華凛はパズルの完成を急ぐため、集中した。すると、眼前に映像が映し出された。


(やぁ、初めまして!そして、ようこそ!この世界へ!君は今日この日にめでたく命を得た訳だ!死の世界で命を得られるなんてなかなかないと思うよ?)


 長い紫髪をした男がそこには映っていた。

 白いぶかぶかした陰陽師みたいな服を着ていた。


(でも、元にした本のせいかな?まさかお爺さんの見た目になるとは思ってなかったよ…。生まれたばかりで老人の姿とか君には悪い事をしてしまったな。とほほ…。)

(い、いえ、気にしていませんよ、我が創造主…。)


 今喋ったのは間違いなくMr.シルバーだと華凛は確信した。


(そうかい?ごめんよ…。お詫びに…にはならないか。元々君に渡すつもりの物だったからね。)


 華凛が洞察した結果、この男は『魔月京師』という名だという事がわかった。

 魔月はMr.シルバーに巻き物を渡して来た。

 それは間違いなく、御頭(おがしら)商店街の事件で使われたものだった。


(その巻き物は君にとって学習の助けにもなるし、携帯食にもなれるという優れものだ!説明書もあげよう!是非役立ててくれ!さぁ、早速今日から私専属の式神として活躍してもらうよ!)

「私、何だかこの人に見覚えがある気がする…。」


 ミストは不思議そうに魔月を見ていた。

 華凛は近くのパズルのピースを手に取り、球体に組み込んだ。


「この人はミストの生みの親みたいだね。」

「この人が…?」

「うん。Mr.シルバーは一度目の世界、ミストは二度目の世界で生まれた…。式神の大元は同じだけど、Mr.シルバーはモリアーティに関する本で、ミストはジャック・ザ・リッパーの本で素材が違うから別存在になっちゃったんだね。」

「でも、私が生まれた時にこの人は私の前にはいなかった…。」


 華凛はMr.シルバーとミストの情報を調べてミストの疑問に関して調べてみた。


「…ごめん、何で生まれたばかりのミストの前に魔月って人がいなかったのかはわからないや…。」

「そう…。ま、別にいいけど。」


 ミストはちょっと不機嫌そうにぷいっとそっぽを向いた。


「…! 二人共、映像に変化が!」


 A(アクセス)D(ディテクティブ)ゴーストが映像の変化を教えてくれたので華凛とミストは視線を映像に戻した。


「これはボク…?」


 ボロボロになった御頭街(おがしらまち)でゴーストとケイトが戦っていた。

 笑いの仮面男もいた。


「この映像は第二試練で見たやつだね。」


 華凛は今映る映像に関するパズルのピースを探し出し、右手で掴んで球体に組み込んだ。


「やっぱり、Mr.シルバーはゴーストとケイトの戦いを偶然、遠くから見ていたんだ。笑いの仮面にナイフを投げたのもMr.シルバーだったみたいだね。」


 華凛はこの場の状況に関するパズルのピースも手に取り出す。


「…? 何…?」


 映像は途中から変になった。マダラ模様の映像がずっと続く。この状況は華凛が調べようとしてもわからなかった。

 しばらくすると街の姿が映った。ボロボロだったはずの御頭街(おがしらまち)が何事もなかったかのように綺麗になっていた。


「今ので二週目の世界に変わったって事…?」

(少しでも変えなければ…歴史を…。あんな悲惨な運命はもうごめんだからな…。)


 Mr.シルバーの声が聞こえ始めた。Mr.シルバーは図書館や捨てられた本、テレビ、施設への潜入、悪どい仕事などで情報を集めているようだった。


「Mr.シルバーはこれで羽島博士の事を調べたみたいだね。笑いの仮面の正体を知っている事を早速自分のアドバンテージに変えようとしたんだ。」

「Mr.シルバー、まさかキミは…?」


 Mr.シルバーはその後、羽島博士が式地博士と待ち合わせしている事を調べ、襲撃した。


(な、何だ、お前は…!?)


 困惑する羽島博士の身体にどんどんと紙が張り付いていく。しばらくすると羽島博士はMr.シルバーの姿となった。


「Mr.シルバーは羽島博士にディサイド・デュラハンの知恵が芽生える前に拉致したんだ。それで少しだけ未来を変えてみせた…。ずっこいのはケイトを自分用にカスタマイズしてラゴウとして自分のデュラハンにした事かな。」

「ずっこくて悪かったね。」


 Mr.シルバーの声が華凛の前から聞こえて来た。

 今度は映像から聞こえるMr.シルバーの声ではないのがはっきりわかった。


「やれやれ、面倒なヘッドだ…。」


 Mr.シルバーはそう言うと華凛たちは元の世界に戻って来た。


「華凛ちゃんにゴーストちゃん、ミストちゃん!」

「良かった、急にいなくなったからびっくりしたでしょうや!」


 素子と八雲が心配して来た途端、A(アクセス)D(ディテクティブ)ヘッドは時間切れで解除されて、華凛も目の色が戻ってオーラも止まってしまったが、未完成のパズルだけは残った。


「人間はどうしても目に頼ってしまうものだ。それで手元が疎かになる…。だから、私は君たちに敢えて私の過去の映像を見せ、それに集中させた。ただし、それは情報を制限したものだがね。言わば、サンプル動画といったものかな?」


 さっきまで華凛たちが見せられていた映像はMr.シルバーの抵抗、悪あがきによるものだという事がわかった。


「Mr.シルバー、キミはボクと同じであの凄惨な未来を変えたかったんだな…。」


 ゴーストの言葉を聞いてMr.シルバーは右の眉をぴくっと動かした。


「あの時、笑いの仮面にナイフを投げてボクを助けてくれた事…改めて感謝するよ。ありがとう。」


 ゴーストはMr.シルバーの過去を知って素直に感謝の気持ちを述べた。


「例え制限された情報をあなたから与えられていたのだとしても、私たちにはそれで十分だ。」


 華凛がそう言うと既に元の姿に戻ったラゴウがMr.シルバーの横に着地した。


「颯ちゃん、手当てや!」

「さ、さすがに熱かったぁ〜っ…!」


 素子はリスペクトゲールと共に地面に尻餅をついた颯の元へ駆ける。


「颯ちゃん、無事で良かった…!」


 華凛は今まで計都羅喉の相手をしてくれた颯の無事を確認した後、視線をMr.シルバーに戻した。


「そのデュラハン 、ラゴウはあなたなりの未来の変え方の一つだったんだね。」

「まぁね…。未来とはそう簡単には変わらないものだ…。だが、時として一石投じた小石が案外簡単に未来を変える事もある…。私はそういったロマンも嫌いではなくってね…。」

「Mr.シルバー、認識を改めよう!あなたは意外と良い人だ!悪どい盗っ人でもあるけどね!」


 華凛は強気になり、右手でMr.シルバーを指差してみせた。


「良い人はないだろう?せめて、ダークヒーローと言って欲しいものだね。」

「探偵と犯人は紙一重ってやつなのかな?人間は一面性だけじゃ語れない!そういう奴!」

「やれやれ…。さて、君たちはもうヘッドチェンジは使えない。これからどうするつもりだね?」

「こうするつもりだね!」


 華凛はそう言うと自信満々にスマホを手に取ってみせた。

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