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54章 ファイナルステージ開演!Mr.シルバーの思惑

 Mr.シルバーの背後から闇が広がった後、Mr.シルバー自身は姿を消し、華凛たちは黒と紫が混じった空間を漂っていた。


「よし!私のルフォーゼも実体化できるようになったし、ヘッドも温存できてここまで来られたね!この調子で最後まで頑張ろぉーっ!」


 華凛は張り切っているが、颯たちはダウナーな感じになっていた。


「ろぉぉぉ〜っ…?ど、どうしたの、みんな?何だか沈んでるけど…?」

「すまんな、華凛…。何とか思い出してやりたいのだが、第二試練に関する記憶が全く思い出せん…。」


 颯は腕を組んで?マークを浮かべまくった。


「うちもや…。おかげでうちら目線やと第一試練の後でもう最後なんやけど…。」

「同じくでしょうや…。」

「私も…。」「ボクも…。」


 どうやら素子たちは第二試練を受けた覚えが全くないから落ち込んでしまっているようだ。


「み、みんな、そんな落ち込まないで!ほら!私もゴースト絡みの、断片的な記憶しか思い出せないし!」


 華凛はデバイスのおかげで思い出せたので何度もデバイスを指差してアピールしてみせた。

 颯たちは華凛の頭が変になった!みたいな扱いはせず、第二試練があった事を信じてくれているのが華凛的には嬉しかった。

 状況について来られない事を悔やんでくれて、彼女たちなりについて行こうとしてくれているのも嬉しい。


「しかし、老紳士殿は何でそんな記憶に残らないようなものを私らにわざわざ見せて来たんだ…?」

「せやね、何か意味があるんやろうけど…。」


 ここでMr.シルバーに関して疑問を呈してくれているのも実にミステリー研究会らしいところで華凛的にも誇らしく思う。


「紙を体内に入れれば容易く記憶できる式神の私ですら覚えてないんだから、相当な記憶操作よ。」

「ミストちゃんがそう言うなら、そうなんでしょうや…。」


 まだ最終試練の場所には着きそうもないので華凛たちは忘却の第二試練に関しての考察をする事にした。

 考察とは言っても、そもそもあまり覚えてないので少しでも覚えている華凛が率先して話をする事にした。


「…Mr.シルバーはさ、私たちに色んな事を仕掛けて来てるけど、彼の行動はちゃんと一貫してるんだよね。私たちが真実に立ち向かえる程の実力があるかどうかを試す…ってさ。」

「確かにな。十糸(といと)の森で老紳士殿と戦った際にそう言っていた。」

「そもそも、Mr.シルバーはうちらの研究会を解散させようと仕掛けて来たんやし…。」

「私やミストちゃんはその頃の事は知らないでしょうや、Mr.シルバーがこちらを試す行動を取っていると言うのは頷けるでしょうや。」

「あの人、性格悪そうだもんね。わかるわかる。」


 華凛は颯たちの意見を聞き終わった後、話を続けた。


「つまり、第二試練もその一環…。私たちに対して警告の意味、または諦めさせるような意味を込めた…覚悟を問う試練だったと思うんだ。」

「確かにな。だが、問題はやはり何故忘れさせたのか?の一点だな。」

「これは私の推測だけど…。」


 華凛は脳内で言葉をまとめてから颯たちに意見を述べようとする。


「今後起きる出来事に対して、記憶ではなくて、警戒心や覚悟だけを私たちに予め植え付けたかったんじゃないかな?」

「ど、どういう事でしょうや?」


 八雲たちは一斉に華凛に注目した。


「私、本で読んだ事あるんだ。人間は記憶を失くすんじゃなくて、思い出せなくなるだけだって。記憶はその人から消えたりはしない。だから、ある日急に思い出せたりするんだよ。それで、Mr.シルバーは私たちにある種の時限爆弾…いや、そんな物騒なものじゃないか…。そう、目覚まし時計を仕掛けたんだ。」

「め、目指し時計でしょうや…?」

「うん、今後起こる未来で、私たちが真実に近寄った瞬間にその目覚まし時計は鳴り出す。」

「それが鳴り出したらどうなるんや…?」


 素子は人差し指を自分の頬に当てて上を見た。


「その瞬間に記憶がフラッシュバックするんだ。そうやって警戒心が強まる…。ここにいたらまずい…ってね。Mr.シルバーは私たちにこれから訪れる出来事に対しての警報システム、または脱出システムを植え付けたかったんだよ。同時に私たちがその状況に陥ったら立ち向かえるかどうかの事前ダウンロード的な意味も込めてるんだ。」

「第二試練だけで挑むか、逃げるかのどちらかでも取れる選択肢を私たちの脳に植え付けたというのか?」


 颯の疑問に対し、華凛は頷く。


「それが一体どんな恐怖なのかは…ゴースト、あなたは知ってるんだよね?」

「…! 華凛…。」


 ゴーストはさっきからだんまりだった。恐らく、ゴーストも何となく察していたのだろう。


「Mr.シルバー唯一の誤算は私が完全には記憶を失わなかった事…。だから、私はゴーストにこうやって未来に起こる出来事を直に聞く事ができる。」

「…華凛、ボクは…。」

「わかってるよ。Mr.シルバーも十糸(といと)の森で言ってたよね?五月に起こる事を知っているのに何故言わない、ってさ…。」

「…華凛…。」

「ゴーストは十糸(といと)の森で自分の事を話してくれたけどさ…。まだ、隠してる事、言わなかった事はたくさんあるよね?きっと、言わないのは私たちが想像もできない事がこの先に待ち受けてるから…。ゴースト、優しいもんね?だから、言えないんだ…。」


 華凛はゴーストには触れられないのはわかっていたが、それでもゴーストの胸の顔に手を置くように配置した。


「そこまでだ、華凛君。君の読みの鋭さには驚かされる。」


 Mr.シルバーの声が急に聞こえると華凛たちは急に強い光に襲われた。

 華凛たちは思わず目を防御した。


「こ、ここは…?」


 華凛たちが閃光防御を解き、ゆっくりと目を開けるとそこは緑豊かな大自然が広がった場所だった。

 来た際に見た真っ赤な大地が嘘みたいに綺麗な場所だった。

 蝶が舞う色とりどりな花々。水の流れる音が聞き心地が良い河。遠くに見える雄大な山々。広がる緑の木々。温かな日差しに雲一つない青空。

 つい見惚れてしまう程の光景だった。


「な、何だ、ここは?天国か?」

「もう、颯ちゃん!物騒な事言わんといて!」

「天国…か。言い得て妙だな…。」


 華凛たちはMr.シルバーが聞こえた方を向いた。

 Mr.シルバーはラゴウと共に立っていた。


「Mr.シルバー…!」

「待たせたね、華凛君。さぁ、ファイナルステージ開演と行こうじゃないか…!」

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