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52章 終わりに向かう日々

 アルウスは道人たちと話し合った後、しばらくしてデュラハン・パークに来る事になった。

 捕虜という形式なので自由には行動できなかったが、それでもアルウスは楽しそうにしていた。

 アルウスは今は使われていない倉庫部屋で読書をしていた。華凛たちはそんなアルウスを眺めている。


「アルウス、調子はどう?」

「あ、道人。来てくれたんだね。」

「よ、アルウス!」


 道人の横に黒い鎧武者のデュラハンが急に姿を現した。

 道人は謎の赤い大地と赤い空の空間に迷い込んでしまって、そこでこのヤジリウスというデュラハンを仲間にした。


「何か、この黒いデュラハンはんの情報が急に頭に流れ込んで来たんやけど…。」

「うむ、私もだ。」

「何だか変な感じでしょうや…。」

「うん、何だか無理矢理紙を食べさせられた感覚…。」

「いや、私らにはミストのその感覚はわからん…。」


 どうやら華凛以外にも脳内に情報を入れられたようだった。


「やぁ、ヤジリウスも元気そうだね。」

「何を読んでたの?」

「いつもの本だよ。コイル・ナンド著書、Solve the case。ふふっ、Solve the case!」


 アルウスは楽しそうにSolve the caseと言っていた。まるで気に入った言葉をすぐに使いたがる子供のようだった。


「ははっ、すっかり気に入ったんだね、その本。」

「うん、何たってボクの日本語の教科書みたいなものだから。もう五周は読み返したな…。本当は元の持ち主に返さないといけないんだけどね…。何せ、後ろ姿しかわからないものだから…。」


 アルウスはそう言いながら本の表紙を撫でた。


「この本を書いたコイル・ナンド先生も尊敬に値するけど、この本の落とし主にも感謝したいな…。」

「指紋とかでわからないのか?」


 デバイスからジークヴァルの声が聞こえた。


「いや、さすがの博士も指紋採取は専門外じゃないかな…。まぁ、この街に住んでる子だったらその内また会えるんじゃないかな?」

「うん、そうだね。」


 この会話の後、世界は暗転。戦いの映像が流れ続ける。

 バドスン・アータス以外に魚人の見た目をした謎の敵が現れ始めた。

 それでアルウスをきっかけにバドスン・アータスのハチゴウセンの一人、スランが仲間になった。

 ダーバラとディアスもアルウスがこちらにいる事で迷いが生じたようで完全に味方化した訳ではないが、協力関係にはなった。

 アルウスは横の繋がりが薄いハチゴウセンの中でも人望がある方だったようだ。

 アルウスの人望だけではなく、道人の人を惹き付ける人柄のおかげでもあった。


「道人、見てよ!ほら!」


 道人たちはデュラハン・パークの実験エリア近くの広場にいた。

 アルウスは青空に向かって思いっ切りブーメランを投げた。

 初めてブーメランを投げた時よりもかなり上達していた。


「すごいすごい、この短期間に大したもんだよ!」

「あぁ、なかなかの上達スピードだ。」


 道人とデバイス内のジークヴァルがアルウスのブーメランの上達を讃えた。

 アルウスはブーメランをキャッチする。


「でもさ、ジークヴァルはライガとの初戦闘でブーメランを使えてたんでしょ?ハーライムだってそうだ。ボクなんてまだまださ。」


 アルウスは右手に持ったブーメランを左手にぽんぽんと当てた。


「ははっ、アルウスは自分に厳しいな。」

「そこがアルウスの良いところなんだよ、きっと。こう言うのって美徳って言うんだったかな?」

「美徳…。ボクにはまだその言葉の意味はわからないけど…道人が言うんだ、きっと良い意味の言葉なんだろうね。よし、もう一回!」

 

 アルウスは道人やジークヴァルに褒められた弾んだ気持ちをブーメランに込めて思いっ切り投げた。

 投げたと同時に世界は暗転。また戦いの映像が流れ出した。

 謎の魚人との戦いがきっかけで人魚騎士・海音と協力関係になった。

 魚人たちの正体もキ○○べ○だとわかった。


「…? 何?」


 華凛たちの脳内に新たな情報が入ったが、よく聞き取れなかった。

 海音はア○ラ○○○○への門を守護する役目があるため、デュラハン・パークには来られなかった。

 バドスン・アータスとキ○○べ○の二つの組織と道人たちは戦い続けていた。


「何か、急に名前が聞き取れなく…?」

「私もだ。何だ、映写機か何かの故障か?老紳士殿よ。」


 華凛たちは慌てて周りを見た。


「これはゴーストの記憶映像なんだから、ゴーストには伏せられてる情報がわかるよね?」

「うん、キ○○べ○の事でしょ?」

「…? ゴースト…?」


 何故かゴーストの言葉まで聞き取れない。

 その時、華凛たちが見せられている場面にノイズが走り始めた。


「お、おい…。何か変だぞ?」

「ど、どうなってるん…?」


 風景に歪みがいくつか出現し始める。


「こいつら、何体も何体も…!」


 道人たちはたくさん沸いて出て来るキ○○ベ○の兵士たちとデュラハン・パーク近くの海岸で戦っていた。


「オラオラッ!オレ様のお通りだ!」


 巨体をした魚人は無数のボルトを飛ばし、ジークヴァルとアルウスに攻撃を仕掛けていた。


「行くぞ、アルウス!」

「OK!こう言う単細胞な奴は大抵動きがワンパターンなんだ!」


 ジークヴァルは右に、アルウスは左に駆ける。

 巨体の魚人は顔を何度も左右に振った。


「…ごめん!ラクベスの事、悪く言っちゃったよぉ〜っ…!」


 アルウスはこの場にはいないラクベスに謝罪しながら右拳に青、左拳に赤の火を纏わせて巨体の魚人に殴り掛かる。


「はっ、トロい拳だな!」

「囮だからな!」


 巨体の魚人の背後に現れたジークヴァルは斬撃強化ヘッドで強化された名無しの剣で巨体の魚人の背中を斬った。


「ぐおっ!?」

「いくらうじゃうじゃ湧いて来ても、リーダーがやられたら撤退するでしょ!それ、即ち…!」


 アルウスは右拳の青い炎の火力を上げた後、巨体の魚人にアッパーを喰らわした。


「Solve the case!」

「がぁっ…!?」


 巨体の魚人は上空に吹っ飛び、地面に倒れた。

 アルウスは右手の炎を消し、ジークヴァルとハイタッチする。


「な、何だ、この炎…!?纏わりついて…!?」

「あ、それ、しばらく消えないから。」


 巨体の魚人は自分の顎周りの青い炎を両手でわちゃわちゃさせながら痛がっていた。


「う、海に飛び込まねぇと…!?」


 巨体の魚人が焦りながら立ち上がったその時だった。

 街中で光の柱が立ち、たくさんのキ○○ベ○の兵士が吹っ飛んだ。


「きゃぁっ!?」

「愛歌っ!」


 愛歌も巻き添えで吹っ飛んだので道人が走り、全身で受け止めて地面に倒れた。


「…二人共、大丈夫!?」

「だ、大丈夫よ、潤奈…。道人、ありがとう…。」

「何じゃ、あいつは…!?」


 大樹が見ている方向をアルウスたちも見た。

 炎が燃え上がる街をバックに紫色の悪魔のようなデュラハンが不気味に佇んでいた。


「な、何だ、あいつ…?」


 アルウスも見た事がない奴だった。


「…クックックッ、サァテ…?」


 紫の悪魔は両手から黒いビームの爪を伸ばし、アルウスに向かって飛んで来た。

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