51章 ブーメランとSolve the case
街中で暴れる謎のデュラハン・ケイトと笑いの仮面を付けた男に対し、アルウスと道人たちは一時共闘する事になった。
アルウスは右に、フォンフェルは左に駆けてケイトを挟み撃ちにしようとする。
「惑わされるな、ケイト!どっちも燃やせばいいのだ!」
笑いの仮面男がそう言うと背を向けて走り出し、ケイトは下を向いた。
ケイトは地面に向かって胸の獣の顔から火炎放射をした。
炎の壁を作ってアルウスとフォンフェルの接近を妨害する。
笑いの仮面男を逃走させるための炎の防御壁でもあるようだ。
「ボクに炎の壁とか無駄だよ、無駄!」
アルウスは赤い炎の魔人を出して周りの炎を吸収してもらい、炎の壁を消してケイトまでの道を作り出した。
「そのままボクの拳に宿らせて…!」
アルウスは炎の魔人を自分の右拳に纏わせて炎の拳を作り出した。
「殴るっ!」
アルウスは炎を吸収されないようにケイトの腹に炎の拳のアッパーを喰らわせ、上空に投げ飛ばした。
潤奈はカードを実体化させてデバイスに読み込ませた。
「…ヘッドチェンジ、タンバ!」
『あなたはどんな荒波にも立ち向かえますか?』
「…うん!」
『承忍。』
フォンフェルに青く透き通ったマフラーが巻かれた忍び頭巾のような頭が装着され、青い胸当てと肩パーツが装着され、タンバフォンフェルとなった。
タンバフォンフェルが姿を変えた後に不透飛び蹴りを喰らわしてケイトを壁に激突させた。
「…フォンフェル、周りの火を!」
「御意!」
タンバフォンフェルは青く透き通ったマフラーを右腕に巻き、伸ばし始めた。
十分に伸び切ったマフラーを振り回す。
水が含まれたマフラーが物を通過すると瞬時に消火する事ができた。
「そ、そんなヘッドを持ってたのか…。」
「いえ、あなた対策に新たに用意したヘッドです。」
「用意がよろしい事で!」
タンバフォンフェルの嫌味を聞いた後、アルウスは青と緑の火の魔人を出現させ、壁に激突したケイトに対して追い討ちを駆ける。
「くっ!逃げろ、ケイトォッ!」
隠れられたので姿は見えないが、笑いの仮面がもうその仮面に似合わない程の焦りに満ちた声を上げるとケイトはそれに応えるように全身に炎を纏わせ、突撃した。
「行って、ハーライム!」
道人はスマホから光の玉を出し、デュエル・デュラハンのハーライムを実体化させた。
「…? あれって…?」
華凛は道人のスマホに付いているストラップに注目した。
颯と素子が持っている十糸姫の糸と同じもののようだった。
颯と素子もスマホを取り出して見ていた。
「はぁっ!」
ハーライムは両刃の斧を振り回し、ケイトに斬り掛かった。
ケイトは両手の爪を交差してハーライムの両刃の斧を弾いてみせた。
「くっ、二対一になったかと思いきや三対一になっただと…!?おのれ、私の復讐を邪魔しおってぇっ…!?ケイトォッ!」
ケイトは笑いの仮面の叫びに応えて自分の身体の炎を更に燃やし、ハーライムを退けて飛び跳ねる。
「待て、逃げる気かっ!?」
タンバフォンフェルは水のマフラーを伸ばし、ケイトを捕まえようとする。
「ケイト、近くの車に突っ込めぇっ!」
笑いの仮面の叫びが聞こえるとケイトは両手の燃えた両爪を車のボンネットに突き刺した。
瞬時に車を炎で包み、車は大爆発を起こした。
「くっ…!?何て事を…!?」
「ふっはっはっはっ、私の復讐はこんなところで終わらない…!終わってなるものかぁっ…!」
爆風が道人たちに襲い掛かる。
アルウスが四体の火の魔人で爆風を防ぎ、タンバフォンフェルが水のマフラーを振り回す。
爆風が収まるとケイトの姿はもうなかった。
「くっ、しまった…!?逃がしたか…!」
道人は慌てて周りを確認する。
「大丈夫よ、道人!司令たちに連絡は取ったから!すぐに追跡を始めるって!」
愛歌がデバイスを左手に持ち、右手でサムズアップした。
「あんな危険人物、放置はできないからな…!えっと、君は…。」
道人はアルウスに話し掛けた。
「安心しろ、今日は別にオマエたちを襲いに来た訳じゃない…。今日はオマエたちと話をしようと思っただけだ。」
「話…?それじゃあ…。」
道人はアルウスを見て微笑みを浮かべる。
「聞くだけ!聞くだけだから!それに今はアイツを捜すのが最優先!だろ?」
「うん、その通りだ!あいつら、放ってはおけない…!」
道人がそう言うと周りの背景は暗転し、その後に夕方に変わった。
「あれ?場面転換?」
「うん。あの後は結局あの仮面とケイトってデュラハンは見つからなかった…。今思えば、意地でもあいつらを見つけ出すべきだった…!」
「ゴースト…?」
ゴーストが憤って両手の拳を震わせていた。
華凛は心配そうにゴーストを見る。
「結局見つからなかったな、あいつら…。」
ゴーストが言った後に道人が似た言葉を口に出した。
道人は愛歌と潤奈、アルウスと一緒に丘に立って夕日を見ていた。
「…大丈夫だよ、道人。博士たちの捜査網ならきっとすぐに見つけ出せるよ。」
「そうそう!あたしたちはさ、あたしたちにできる事をやろうよ!」
「潤奈、愛歌…。うん、そうだね!よぉ〜し!」
道人はブーメランを取り出し、夕日に向かって思いっきり投げてみせた。
「…? 何、今の?武器?」
アルウスは道人が投げた物に興味を示した。
ブーメランは力強く飛んで進み、道人の手元に戻って来た。
「あ、戻って来た。」
「ブーメランって言うんだ。」
「ブーメラン?」
「うん。君も投げてみる?」
アルウスは道人が差し出したブーメランを一回警戒した後、ゆっくりと受け取って見つめた。
「え、えいっ!」
アルウスは道人の真似をしてブーメランを投げてみたが飛ばずに落っこちた。
「お、落ちた…。意外と難しいな…。よし、もう一回!」
アルウスはブーメランを回収してまた投げたが、また飛ばずに落ちてしまった。
「駄目だぁっ、キミみたいにうまく投げられないや…。」
「「あっはっはっはっ…!」」
アルウスの姿を見て道人と愛歌は笑い出した。潤奈もクスクスと笑っていた。
「な、何だよ?そんなにこれをうまく投げられないボクの事がおかしい?」
「違うよ、何か昔の僕みたいでさ…。父さんのようにうまく投げられないや、ってさ。」
「キミのお父さん?」
アルウスは右手に持ったブーメランを見た。
「そうそう!道人ってば、あたしがちっちゃい頃でもブーメラン投げまくってさ。」
「…うん、豪もよくブーメランを投げてた道人の話を楽しそうにしてたな…。」
アルウスは楽しそうにしている愛歌と潤奈を不思議そうに見る。
「その…ごう、って人がキミのお父さん?」
「そうだよ。僕の父さん、宇宙飛行士でさ…。ブーメランは投げたら必ず返って来る縁起がいいものだ、ってよく僕に教えてくれたんだ…。僕も父さんもブーメランが大好きなんだ…。」
「…ブーメラン…。この投げ物にそんな意味が込められているなんて…。」
アルウスは道人の言葉を聞いてブーメランを色んな角度から見た。
「やっぱり興味深いな、チキュウって…。色んな物に見た目じゃわからない意味が込められてるんだ…。あ、そうだ。ボクが拾ったこの本。これにも何か意味があるのかな?落とし主に結局渡せなかったけど…。」
アルウスはケイトと戦う前に拾った本を道人たちに見せた。
「これ、何て書いてあるの?ボク、バドスン・アータスの技術でチキュウの言葉は翻訳できるけど、文字はまだわからなくて…。」
「何々…?『Solve the case』って本のタイトルだね…。」
「な、何?さ、さうぶ、ざ、けぇす?」
「事件を解決する、って意味ね。探偵ものの本みたい。」
愛歌がスマホで検索し、画面を見せて来た。
「華凛ちゃんの決め台詞やん…。」
「思い出した、あの本の持ち主の後ろ姿!ずばりお主だ、華凛!」
「わ、私?」
颯は華凛を指差し、華凛も自分を指差した。
「もう四年も華凛の背中を見てきた私が言うんだ。間違いない。」
「そうなんでしょうや?それが本当だとしたら、何という運命の巡り合わせでしょうや…。」
「えっと、この世界の華凛も探偵ものに興味があったって事?」
ミストは八雲に尋ねた。
「いや、結局ボクはあの本の落とし主に会う事はなかった…。でも、本当に?あれが華凛だったの…?だとしたら、驚くよ…。ボクと華凛にそんな繋がりがあったなんて…。」
「ゴースト…。」
華凛はゴーストと静かに見つめ合った。
Solve the caseという言葉は華凛が肝試し大会でゴーストと初めて会った時に聞いて感銘を受けた言葉だ。
ゴーストは出会い頭に華凛の運命を変えたかもしれない可能性が出て来た。
「よし、決めた!さぁぶ、ざ、けぇすってのがわかるのとボクがブーメランをうまく投げられるまで、キミに付き合ってあげる!」
「えっ?本当に?」
「か、勘違いするなよ?ボクは地球の文明に興味があるだけだ!バドスン・アータスは惑星を採掘星に変える前に調査をする必要があるからな!その一環なんだからなっ!そこんとこ、勘違いするなよ?」
アルウスは照れながら道人を指差した。
「…ツンデレ?」
「そ、ツンデレツンデレ。」
潤奈の疑問に愛歌が腕を組んで頷いた。
「とにかく、君と戦わなくて済んで嬉しいよ!改めてよろしくね、アルウス!」
「う、うん…。よろしく、道人…。」
夕日が沈む中、道人とアルウスは互いに握手した。




