50章 その名はケイト
世界が暗転した後、宙に浮いている華凛たちは新たな場面を見せられた。
アルウスは木の上で遠くにある御頭動物園を眺めていた。
「ふーん、ニンゲンたちはああやって動物たちを飼ってるのか…。動物たちは狭くは感じないのかな?でも、不自由そうにも見えないな…。」
アルウスは次々と木と木を飛び跳ねて象やキリン、ゴリラやライオンを見ていく。
「何だか動物を見ているニンゲンたちも楽しそうだな…。ボクたちはこういう場所も壊して採掘星に変えてしまうのか…。うーむ…。」
アルウスは腕を組んで大木の枝に座った。
「こんなに文明が発達した場所を滅ぼした事はなかったからなぁっ…。何だか勿体ない気がして来たよ…。」
「何だかこの時点でゴーストちゃんに迷いが見えるでしょうや。」
八雲が悩むアルウスを見て華凛たちに感想を述べた。
「確かに、この頃からボクは地球に興味津々だね。側から見ると何だか恥ずかしいや。」
「ううん、何も恥ずかしがる事なんてないよ。昔のゴーストも今のゴーストと変わらないんだって私は安心したな。」
「変わらない、か…。」
華凛の言葉を聞いたゴーストはどこか寂しそうに見えた。
「おっと…!いかんぞ、アルウス…!今更何をチキュウを採掘星に変える事を惜しんでいるんだ…!ボクはバドスン・アータスのハチゴウセンが一人だ、しっかりしろ…!」
アルウスはそう言って自分を戒め、立ち上がった。
「そろそろ道人とかいう奴らの下校時間が近いか…。よし…!」
アルウスはそう言うとまた木と木を飛び跳ねて動物園を後にした。
森林を抜け、建物が並ぶコンクリートジャングルを飛び跳ねていく。
「…? 何だ…?」
アルウスが飛び跳ねている最中、遠くで爆発があった。
アルウスは爆発があった場所まで跳ねると人間たちが逃げ回っていた。
「これは…?」
アルウスは急いで周りを確認する。
「そうだ!暴れろ、暴れろ!私のデュラハン、『ケイト』よ!」
「…? デュラハン?ケイト?」
アルウスが声が聞こえた方を見ると黒いマントを羽織った笑いの仮面男と首無しの白い鎧を纏った猫背のデュラハンが立っていた。
ケイトと呼ばれるデュラハンは胸の獣顔から火を吐いて辺りを燃やしていた。
「何だ、あいつ…?デストロイ・デュラハンか…?そんな話は…。」
「痛っ!?」
逃げていた女の子が転んだ後に立ち上がり、慌てて逃げて行った。
「ん…?」
アルウスは転んだ女の子が何かを落としたのが見えた。
「紙束を落として行ったぞ、あのニンゲン…。あのままじゃ、焼かれるぞ…。」
アルウスは急いで本が落ちている場所まで飛び跳ねた。
「むむっ…?」
「どうしたん、颯ちゃん?」
素子は前屈みになって颯を見た。
「いや…今、逃げてった女子の後ろ姿…何やら見覚えがあるような…?」
「そうなん?誰なん?」
「いや、わからん…。」
「じゃあ、気にしても無駄でしょ。」
ミストが素子と颯の会話に割ってはいる。
「うーむ…。しかし、何だかすごい身近な存在だった気が…?」
颯は自分の顎に右手を当てて考えていた。
ケイトと呼ばれるデュラハンの火炎放射が本に向かう。
「ちぃっ…!」
アルウスは地面に落ちた本に右手を伸ばし、何とか掴んで地面に転がった。
すぐに起き上がり、後ろを振り向いた。
「おい、落としたぞ! …って、もうとっくに逃げた後か…!」
アルウスは自分が手に取った本の表紙を見た。
「これは確か、英語…とかいう文字か?clo…?って、今はそんな場合じゃない…!」
アルウスは拾った本をとりあえず背中に仕舞い、ケイトと仮面の男の方を向いた。
「何だ、貴様は!?」
「それはこっちの台詞だ!オマエこそ、何者だっ!?」
「私はこの世界を変える革命者だ!」
「革命者…?」
アルウスと一緒に華凛たちも疑問符を浮かべた。
「私は目覚めたのだよ、才能に…!そして、造り上げた!私だけのデュラハンを!私は自分の才能を評価しなかった奴らに復讐している最中なのだよ!だから、邪魔をするなぁっ!」
「ちっ!」
アルウスはケイトが放って来た火炎放射に対し、赤・青・黄・緑の小さな炎の魔人を周りに出現させて炎を対消滅させた。
「アイテが悪いな、アンタ!炎使いのボクと遭遇するなんてね!」
アルウスはそう言うとケイトに向かって青と黄の火の魔人を飛ばした。
「その言葉、そっくりそのままお返ししよう!」
仮面の男がそう言うとアルウスの火はケイトの胸の顔に吸収されてしまった。
「…!? ボクの炎が!?」
ケイトの胸の獣の顔が楽しそうに何度もアルウスの炎を噛み砕いた。
「ほう、どうやらお前の炎は粘着性があるようだな…!ケイトがまるで納豆でも食べているようだわ!さぁっ、倍返しせよ、ケイト!」
仮面の男がそう言うとケイトは口から本来の炎に青と黄が混ざった火炎放射を発射した。
「相性が悪いのはボクの方だったってオチか…!ちっ…!」
アルウスは残った緑の火の魔人に向かって来る火炎放射を防がせ、ケイトから距離を取った。
「我が復讐を邪魔せし者に裁きの鉄槌をぉっ!」
ケイトは全身に炎を纏わせてアルウス目掛けて突進して来た。
「はっ!」
ケイトの横からフォンフェルが現れ、回し蹴りを喰らわせた。
ケイトは吹っ飛ぶが、空中で体勢を立て直して着地した。
「…!? また首無しが増えただと?」
「大丈夫、君?」
道人、愛歌、潤奈、大樹たちが走って来てアルウスの近くに立ち止まった。
「オマエ…?」
「何だか状況はわからないけど…あいつが街中で暴れていて、君はあいつと戦ってくれてたんだよね?」
「た、戦ってくれてたって…?ボクは別に…。」
アルウスは人気がなくなり、辺りに多くの炎が揺らめいている歩道を眺めた。
「…まぁ、この文明が栄えた星が悪戯に燃やされるのは良い気分しないかな、うん…?」
「ははっ、やっぱり君は何だか話が通じそうな気がする。」
「ぐぬっ…!?」
アルウスは道人の笑みを見た後、恥ずかしそうにした。
「か、勘違いするなよ!?ボクたち、バドスン・アータス以外の奴らがチキュウをどうこうしてるのが気に入らないだけだからな!」
「何だかテンプレ的なツンデレだぞい…。」
「…テンプレ?ツンデレ?」
大樹の突っ込みに対し、潤奈は大樹の言葉の意味がわからないようで?マークを浮かべていた。
アルウスもよくわかっていなかった。
「と、とにかく!ここは一時休戦してやる!アイツがこの街並みを汚してるのが何だか良い気分がしないのは今のボクの確かな気持ちだ!さっさと片付けるぞ!」
「うん、わかった!一緒に戦おう!」
アルウスは道人に対して頷いた後、フォンフェルと共に並び立った。




