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49章 アルウスとダーバラ

「一体何だったんだ、アイツ…?」


 アルウスは日が暮れる中、深い森の中にある木の上で夕日を眺めながらさっき会った道人の事をぶつぶつと話していた。

 華凛たちはそんなアルウスの様子を宙に浮かびながら眺めている。


「アイツらの中でもう死人が出てるんなら、もう和解なんて手遅れでボクらとは雌雄を決するしか道はないじゃないか…。少なくとも、今まで採掘星にして来た星の連中はそうだった…。それを…全く…。」


 アルウスは道人の態度が気になっているようでさっきからずっと自問自答をしている。


「ねぇ、ゴースト。さっき空野君も言ってたけど、バドスン・アータスって組織は人間たちを地球から根絶やしにしてデュラハン・ハートの採掘星に変える事なんだよね?デュラハン・ハートってこれの事でしょ?」


 華凛は試練を受ける前にMr.シルバーに渡されたデュラハン・ハートを見せた。

 颯と素子もスマホのストラップについたデュラハン・ハートを見る。


「そう、ボクらはそれを大量に得るために次々と惑星を採掘星に変えて来た…。」

「一体何のために?」

「それがヴァエンペラの意思だからだよ。」

「…? そのヴァエンペラはそんなにたくさんデュラハン・ハートを集めて一体何をするつもりなの?」

「それはボクにもわからないんだよね…。」


 華凛たちはゴーストの言葉を聞いて思わずきょとんとなった。


「どういうこっちゃっ?ゴーストたちハチゴウセンは訳もわからずにデュラハン・ハートを集めさせられているのか?」

「うーん…強いてあげるなら母星の暮らしを豊かにするためだったり、戦力の強化のためかな?ヴァエンペラはバドスン・アータスの頭領ではあるけれど、姿を見た事がある人は一握り…。ダジーラクとマーシャルくらいで他のメンバーは知らないんじゃないかな?」

「頭領なのに見た事がない…?」

「そんな会った事もない奴の言う事を聞いているのか?」


 華凛と颯はゴーストから聞いた話に対して疑問に思った。


「他のハチゴウセンはどうだかわかんないけど、少なくともボクはそういうものだと認識してたかな。」

「つまり、ヴァエンペラというのはゴーストちゃんたちにとっては崇拝対象のようなもので、私たちで言うところの神様みたいな扱いなんでしょうや?」

「まぁ、そんなところかな。」

「なるほど、神様の言う事なんだから疑わずに素直に従うって感じなのか…。」


 華凛は八雲の例えのおかげで地球とバドスン・アータス間の文化や価値観の違いを理解した。


「まぁ、古株のディアスはダジーラクが以前と変わった事を疑問視してたけどね。」

「ダジーラクが変わった…?」

「うん、ダジーラクは武闘派な闘士ではあったものの、卑劣な手段は取る人じゃなかったってよくディアスは言ってたな。」

「…駄目だ、覚えないといけない人物や事柄が多くて、現状だと聞いてもよくわからないや…。」


 華凛は自分の額に右手を当てて冷や汗を掻いた。?マークも浮かべる。


「ごめんね、ボク自身も失われた未来に関しては全てを把握できている訳ではないからね…。このMr.シルバーが追体験させてる場面もボクの視点や記憶によるものみたいだし…。」

「いいんだよ、ゴースト。ありがとね、教えてくれて。」

「何かお困り事さね、アルウス?」


 華凛たちが話をしていると、現在見せられている場面に進展があった。


「何だ、ダーバラか…。」

「何だとは何さね?せっかく心配して見に来てやったのに。」


 バドスン・アータスのハチゴウセンの一人、ダーバラがアルウスの左側に腕を組んで浮いていた。


「心配?冗談を…。ハチゴウセンは横の繋がりがそんなに厚くはないだろう?」

「そうかい?あたいとあんたは割と仲が良い方じゃないかい?」

「どうだか。大方、キミの目当てはボクの能力だろう?」


 アルウスは右手から青い炎を出した。

 さっきジークヴァルとフォンフェルとの戦いで見せた能力だ。


「この能力が欲しいがためのボクへの点数稼ぎってところかな?それと暇潰しの一環ね。」

「何だい、お見通しかい。しかし、いつ見ても良い能力だねぇ〜っ…!是非あたいの美を上げるためにその能力は欲しいところだよ。相手に纏わりつく、ねっとりとした炎というところが良い…!」


 ダーバラは目をキラキラさせながらアルウスの炎を見てきた。

 アルウスはそんなダーバラを鬱陶しがって炎を消した。


「何だい、もう消しちまうのかい。つれないねぇ〜っ…!」

「そんなにボクのこの能力が欲しいの?もう今まで何回ねだって来たか思い出せないけどさ…。」

「是非ともあたいのヘッドの一つにしたいのさ。そうだねぇっ、あたいに合わせて『紫炎』ってのはどうだい?あたいの持ち前のカラーである赤に紫を加える!大きな鳥になって、紫炎を辺りに撒き散らして飛ぶのさ!さぞかし、美しいだろうねぇ〜っ…!」

「やれやれ、その下りも何回も聞いた…。」


 アルウスは両手を後頭部に当てて木の表面に背中をつけた。


「しかし、チキュウの木ってのもなかなか悪くはない…。何だかバドスン・アータスの艦内にある柱に寄っ掛かるよりも感触がいいや…。」


 アルウスはそう言いながら夕日を眺めた。


「何だい、ジジ臭い事を言ってからに。そんなんじゃレイドルクみたいになっちまうよ?」

「失礼な、ボクはああはならない。…ねぇっ、ダーバラはこのチキュウの事どう思う?」


 アルウスはダーバラに対して地球に関する意見を求め始めた。


「何だい、急に?」

「いや、今までボクたちは色んな惑星を採掘星に変えて来たけどさ。ここまで文明のレベルが高い惑星は初めて見たかもしれない。」

「文明力が高い?そうさね?」


 ダーバラはそう言いながら周りを見渡した。


「そうだよ。何だか暮らしている人たちも幸せそうだったしさ…。自然と機械とのバランスよく合わさっていてさ。どこか調和が見て取れる。スランが地球の海を見て気に入るのが少しわかるな…。」


 アルウスは落ちて来た葉っぱを手に取り、くるくると回してみせた。


「アルウス、あんた…。」

「わかってる。ボクたちはそんな惑星を採掘星に変えるために来たんだ。それにディアスも言ってた。地球の自然を豊かにしているのが人間ならば、逆に汚してるのもまた人間だってね。ボクはまだ地球の汚い部分を見てなくて知らない…。」

「ま、あんたの言いたい事もわかるさね。あんまり認めたくないけどねぇっ、愛歌とトワマリー…。奴らの戦い方にはあたいも思わず美しさを感じまったもんさね。あたいも負けていられない、って対抗意識を燃やす程にねぇっ!」


 ダーバラは右手で握り拳を作って震わせた。


「珍しいよね、ダーバラがそこまで誰かに対して関心を持つなんてさ。」

「何言ってんだい、アルウス?あんたの目は節穴かい?あたいはいつだって熱い視線を向けてるじゃないのさ、愛しのダジーラクにねぇ〜っ…!」


 そう言うとダーバラは両手を絡めて自分の周りをキラキラさせ始めた。


「ダジーラク本人には全然伝わってないように思えるけど…。」

「何か言ったかい?」


 ダーバラが急に殺意を向けて鉄扇を向けて来た。

 華凛たちもその殺気に思わず青ざめ、ミストもナイフを構えた。

 何故かゴーストもダーバラを見て引き()っていた。


「いえ、何も!」

「とにかく、さっさと与えられた任務をこなして艦に帰って来なさいな。じゃないと、シユーザーが嫌味を言って来るよ?」

「それはごめん(こうむ)るね…。」


 ダーバラはそう言うとこの場から飛び去って行った。


「ライガにダーバラ、ラクベスにレイドルク…。みんな、形は違えど、あの道人とかいう連中に何かしら惹かれるところがあるみたいだ…。話、ね…。ま、聞くだけならただ、か…。明日、また会ってみるか…。」


 アルウスはそのまま眠りにつき、華凛たちの周りの背景も暗くなった。

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