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忘れられる前に、最後の願いを。  作者: 寿 明結未(ことぶき・あゆみ)
簪の付喪神、桔梗さんと怨霊と鬼の正体

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第23話 桔梗の語る濁りと穢れ

ブックマーク、評価、感想、誤字脱字報告ありがとうございます。

「忌々しいな……。お前みたいな奴がいると、とってもやりにくい。そう言っていた」

『恐らくそれは、額の宝珠に関係しているだろう』

「俺もヒイラギの言葉に同意だ。それ以外、俺は一般人と大して変わりはないからな」

『額……の宝珠?』


 不思議そうに口にした桔梗さんに髪を上げて額を見せると、口元に手を置いて驚いている。

 無理もない、普通の人には見えない……千手観音様から頂いた宝珠だ。


「一日に一度だけ使える、千手観音様から頂いた力が使える宝珠なんだ」

『あんさんは……実に尊き御方でござりんす』

「どうだろうな。

 とりあえずしばらくは時間がある。

 桔梗さんには色々今後聞いていくと思うが、言いにくいこともあるだろう。

 それでも、大勢の人が怪我をしている。

 話をしてくれると助かる」


 そう言うと桔梗さんは少し悲しげにしていたが、小さく頷いてくれた。


『あちきにできることといえば……何があったか、何が起きなんしたかを語ることくらいでありんす』

「俺達が知りたいのは、そこだからな。鬼に関しても知っていることがあれば知りたい」


(これ以上被害を出さないためにも、知っておく情報は沢山ありそうな気がするな)


『あちきの心の準備も……ござりんすゆえ』

「そうだな。今は身体を直すことを優先してくれ」

『光一様……かたじけのう存じんす』


 こうして、花魁の姿をした桔梗という簪の付喪神が、我が家に加わったのだった。

 華やかな女性ではあったが……。

 その反面、儚そうな女性でもあった――。

 それと同時に……鬼はまだ学校にいる。

 なぜかわからないが、それだけは感じることができた。


 それからしばらく学校は休みだったため、桔梗さんの修理に時間を費やした。

 爺様の懐中時計とヒイラギの力のおかげで徐々に良くなっていった。

 三日間の休みの間に、心身ともに落ち着いたみたいだ。


「それで、学校であの日、何があったかそろそろ話せるか?」


 そう問いかけると、桔梗さんは小さく頷き、俺と向かい合った。


『……ええ、あちきには近寄ることすらできんしたが。確かに……あれは、鬼になりかけの〝濁り〟でありんす』


 ――思わず息をのむ。

 桔梗さんの言葉に、言いようのない不安が押し寄せた。


『濁りとは……鬼になる前の姿にてありんして……そして、穢(けが)れでもござりんす』

「穢れ……か……つまり、お鈴の時の黒い風みたいなものか?」


 清さんと同時に眉が寄った。

 あの黒い風が頭をよぎる。


「じゃあ……穢れが、人に乗り移ったってことか?」

『はい……本来は人に宿る性のものではありんせん。

 けれど……あの青年は、すんなりと濁りを受け入れてしまう身体をしていたようでありんして……』

「青年……。じゃあ、俺が見えた鬼の面は――」


 桔梗さんは強く頷いた。


(小(・)林(・)……お前なのか?)


 あの小林が?

 そんなまさか……。

 だが、まだ断定はできない。

 桔梗さんは、そこでそっと目を伏せた。


『今は……そこまでしかお伝えできんせん……』


 それ以上話すのは、桔梗さんにとって辛いのだろう。

 俺は無理に聞くのをやめて、小さく息を吐いた。


(……付喪神たちも見当たらなかった。隠れているだけならいいが……)


 不安ばかりが積み上がっていく。

 あの時小林に一瞬見えた鬼の面。

 参加もしていたのだから、ありえなくはない。

 だが、穢れはずっと小林についていたままなのだろうか……。


「しかし、鬼となると……なりかけならば救えるのか?」

『可能性はないとは言えないが、恐らく……度合いによるだろう』

「度合いか……。そういえば、ヒイラギに兄弟がいたなんて初めて知ったぞ?」

『なに!ヒイラギに弟がいるのか!?』


 思わずヒイラギの言葉に弟がいるというのを覚えていて問いかけると、お琴も興味津々に身を乗り出した。

 白いカラスで兄弟……一体何羽の兄弟がいるんだろうか。


『ヒイラギさんの御兄弟ですか……。皆さんきっと優秀でしょうね』

「へー……。皆神様の遣いなのか?」

『次男は別の神の遣いで、三男は祠を守っている。

 それよりも今もなお、鬼になりかけているナニカが、学校にいるという事が問題だ』


 確かにその通りだ。

 小林が学校から出たら楽になっているのならいいが……生憎連絡先を知らない。

 確認しようにも確認できないのが辛いところかもしれないな。


「明日から学校だが……もう一度よく観察してみる」

『我も結界を張って主に危害がないように気をつけるとしよう』

「ヒイラギ、苦労を掛けるな」

『これしきの事で苦労などと言っておっては、白きカラスの名に恥じる』

「それもそうか」


 そこがヒイラギらしいなと思い、翌日俺は用意を済ませてヒイラギと共に学校へと向かう。

 だが、学校は既に全体に瘴気が回っているかのように……。

 どんよりとした空気がまとわりついていた。


「これは……」

『鬼にはなっていない……まだ安心していいだろう』


(鬼になりかけでこれか……すさまじいな)


 ――本当の鬼に出くわしたら、この比じゃないということか。

 とにかく、気合を入れて学校に入った途端、鋭い視線が俺を貫く。

 瞬間どっと拳に汗が滲み出たが、周囲を見渡しても……。


「小林?」


 俺を見つめる小林が学校の廊下に立っていて――。

 その目は恐ろしく冷たく……赤(・)い(・)灯(・)が(・)灯(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)か(・)の(・)よ(・)う(・)に(・)見(・)え(・)た(・)。

楽しんでいただけていたらいいんですが……(;´Д`)


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