↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忘れられる前に、最後の願いを。  作者: 寿 明結未(ことぶき・あゆみ)
付喪神ーお琴と清さんー

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/43

第18話 付喪神と歩く、夏の終わり

ブックマーク、評価、感想、誤字脱字報告ありがとうございます。

 それからしばらくして、夏休みも終わりが近づいていた。

 俺は必死になって宿題を終わらせながら、ふと考える。

 清さんはもう「家(・)族(・)」と呼んでもいいのかもしれない。


 清さんは、お琴に絵本を読んでくれていて、勉強もだいぶはかどっている。

 チリンチリン……と風鈴の音が響く季節も、そろそろ終わりだ。

 とはいえ九月はまだ暑い日が続くから、風鈴の出番も少しは残っていそうだけれど。


「宿題が終わったら、また骨董店にでもいってみようかな……」

『あそこは付喪神の宝庫ですからね』

「違いない」


 骨董店は、まさに付喪神だらけの世界だ。

 その中に本当に助けを求めている付喪神がいれば、また一緒に暮らすことになるかもしれない。

 ……できれば、もう居座られるのは避けたいけど、そればかりは運次第だ。


 俺の力――〝黄泉送り〟は、心(・)の(・)エ(・)ネ(・)ル(・)ギ(・)ー(・)を(・)か(・)な(・)り(・)消(・)耗(・)するようだ。

 頻繁に何度も使えるものではないということは、体でわかった。


(正直、もうあんな倒れ方は二度としたくない。でも――見捨てるのも性に合わないんだよな)


 ……この力が元に戻ったら、また骨董店に行こう。

 そう思っていたそのとき――。


『主の護衛は任せてくれ』

「無論ヒイラギに任せるよ。でも、鞄を買い直さないといけないなと思ってるんだ」

『鞄をか?』

「ああ、爺様とお琴はポケットに入るけど、清さんは入らないだろう? 手ごろなカバンを購入しようと思ってな。それに清さんを守るための眼鏡ケースも欲しいし」

『そこまでして頂いて、ありがとうございます』

『それなら、私もお菊の持っていた箱に入って守られるから良いのう』

「だろう? 勉強の合間にちょっと買ってくるよ」

『お供しよう』


 こうして、清さんとお琴には家で留守番をお願いし。

 俺はヒイラギと一緒に近くのショッピングセンターへ向かった。

 お琴のハーモニカを入れる箱や、清さんの依り代である眼鏡をしまうケースのことを考えると、それなりに大きめのカバンが良いだろうな。


 すると、肩にたすき掛けで使える、ちょうどいいサイズのカバンを見つけた。

 これなら、目立たずに持ち歩けそうだ。

 学校が始まったら持っていくわけにはいかないけど。


「ついでに清さん用の本でも買いに行こうか」

『家庭用の医学書が欲しいと言っていたぞ』

「なんとも……清さんらしいな」


 思わず微笑みながら本屋に入り、家庭用の医学書と、お琴用の絵本を一冊買って帰ることにした――が。


「あれ、榊原じゃん」

「おー。夏休み間、全然会わなかったな」

「森田に小林。二人とも色黒になったな」


 ショッピングモールでばったり会ったのは、同じクラスのクラスメイトたちだった。

 遊ぶ約束をするほどの仲ではないが、話す機会はある……。

 そんな距離感が、俺にはちょうど良かった。


「夏休みは熱を出して倒れたりで、あまり遊んでなかったんだ。今になって宿題に追われてる」

「そりゃ災難だったな」

「夏休み明け、学(・)校(・)の(・)旧(・)校(・)舎(・)で(・)肝(・)試(・)し(・)し(・)よ(・)う(・)ぜ(・)って話上がってたぜ?」

「学校の旧校舎で肝試し?」

「参加者まだ集まらないらしいけどな」

「俺はパスかな。あまり怖いのは嫌いだ」

「ビビりめ!」

「何とでもいえ」


 苦笑いしながら返事をしたが、心の中では「旧校舎で付喪神に遭遇したら大変だ」と思っていた。

 築百年の旧校舎は、もう建て替えが決まっている。

 老朽化も進んでいるし、仕方のないことだろう。


「まぁ、人数調整の為に榊原を誘うって言ってたから、断る理由でも見つけておけよ」

「うわぁ……面倒だけど断る理由は決めておくよ。ありがとな」

「暑いからあんまムリすんなよ」

「ありがとう」


 あの時はまだ、本当に〝冗談半分の企画〟だと思っていた。

 カバンと眼鏡ケースを購入して家路につく途中、ヒイラギが突然低く唸った。

 どうしたのかと尋ねると――。


『もう随分昔の事で今の人間たちは知らないだろうが、主たちの行っている学校は、元は遊郭(ゆうかく)なのだ』

「遊郭?」

『旧校舎はその遊郭を利用して作られているとも言われている』

「初めて知ったな。だからなのか? 旧校舎の前を通るときだけ、夏でも背筋がひやりとするんだよ」

『遊郭ゆえに、店が無くなった後は色々持ちだされて売り払われた筈だが、万が一でもナ(・)ニ(・)カ(・)残(・)っ(・)て(・)い(・)た(・)ら(・)と(・)思(・)う(・)と(・)心(・)配(・)だ(・)』


 心配そうなヒイラギを撫でながら、俺は言った。


「きっと何も起こらないさ。行くつもりもないし」


 ホッとした様子のヒイラギを見て、やっぱり行かない方がいいと改めて思った。

 そもそも、俺があんな場所に行ったら……絶対に何かが起こる気がする。


「お化けが出ると有名な旧校舎に行くなんて……自殺行為だろ」

『主のような人間は特にそうだな』

「だから、俺はビビりだからいかないってハッキリ言うさ」


 ――命が大事だ。

 バカにされても、ビビりだと言われても、行かない。絶対にだ。


「そもそも、幽霊が出ると言われている旧校舎で肝試しって……」

『人間とは怖いもの知らずだな』

「愚かとも言うんだよ」


 呆れたように呟きながら帰宅した。

 新しく買った鞄に、お琴のハーモニカを曾祖母さんの残した箱に入れてしまい、清さんの依り代である眼鏡は眼鏡ケースに入れて、どちらも鞄へ。

 懐中時計だけは、胸ポケットに入れることにした。


「よし、これで安全だな」

『これで私達も仲良く光一と出掛けられるという訳じゃな!』

「と言っても、皆の姿は他の人には見えないんだから、俺が合図するまでは口を開かないぞ」

『それは致し方ないですね。この前縁側で僕たちと話してたら、お爺様とお婆様に不思議がられてしまいましたからね』

「ああいうのが何度もあると、俺の家での信用問題に関わる……」


 思わずため息をつくと、清さんはくすくす笑いながら言った。


『話をする場合は部屋が一番安全ですね』


 ――まさにその通り。

 でも、たまに祖母が着替えを持って部屋に来るから、そのときは注意が必要だ。

 その後、学校で肝試しがあるという話を清さんにすると、彼も驚いたようだった。


『元が遊郭の旧校舎ですか。なんとも地域性を感じるというか時代背景を感じるというか』

『百年前ちょっと前の事だから、覚えている者も少ないだろうな』

『ゆゆゆ、遊郭で勉学に励むとは、けしからんことじゃぞ!』

「安心してくれ。俺は新校舎でしか勉強した事はないし、旧校舎は……なんか怖いんだ」


 言葉では説明できないけれど――妙な念を感じてしまう場所だ。

 君子危うきに近寄らず、というやつだ。

 行かないに限る……。


 家に帰ると、すっかり渡すのを忘れていた本を清さんとお琴に手渡した。

 二人ともとても喜んでくれた。


 ――そして。

 夏休みがあと数日で終わるというタイミングで、俺たちは骨董店へと向かった。

 まだまだ日差しの厳しい中、できれば早めに帰ってアイスでも食べたいと思いながら、うだるような暑さのなか、骨董店に到着した――。

楽しんでいただけていたらいいんですが……(;´Д`)


面白いと感じたり、応援したい! と思われたら

ポチッとお気持ちを押して頂けると嬉しいですm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。