第13話 お鈴を助ける為に出来ること
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お琴の一言に、その場にいた全員がはっとしたように黙りこんだ。
本当に、そんなことが……あるのか?
『怨霊は自分が死んだことに気がつかぬ者が多いと爺様から聞いたことがある』
「死んだことに……気づいてない?」
『そして仲間欲しさに人を誑かすのじゃと申しておった』
思いがけない言葉に、俺はお鈴の言葉を思い出した。
――お兄ちゃんを奪い去った。
――お兄ちゃんは私のお兄ちゃんなのに。
――私だけが家に入れない。
――家に入れてほしい。
それはまるで、生きていたときのお鈴の気持ちのままだ。
清さんが話していた姿とぴったり重なる。
そうか――お鈴は、自分がもう死んでしまったことに気づいていないんだ。
あの手毬で家のまわりをぐるぐると回っているのも、兄に会えない寂しさからだったのかもしれない。
「兄というのが……清さんか」
『恐らく……眼鏡のことでしょうね』
「共に供養できたらいいのに……」
『供養……それじゃ光一!』
お琴が声を上げて、俺は驚いて顔を向けた。
彼女はぎゅっと拳を握って力強く言った。
『供養してやれば、悪霊じゃなくなるかもしれない!!』
――お琴の提案に、俺は頭を振った。
それが真実ならどれほど良かったか――胸が痛んだ。
暁様や宵様が言っていた。
怨霊になってしまったら、もう地獄に落とすしか方法はないって……。
だけど……千手観音様は言ってくれた。
「助けてやれ」と。
『千手観音様にお会いしたのか? 光一が?』
「ああ。このおでこを見てくれ」
『それは!』
「俺にもよく分からないんだ。これを千手観音様に頂いたが、使い方が……ヒイラギには分かるか?」
俺の問いかけに、ヒイラギは少し黙ってから、こくんと頷いた。
どうやら、力の使い方を知っているらしい。
俺が教えてほしいと言うと、ヒイラギはまたしばらく黙った後、口を開いた。
『主の頂きし力は千手観音様と同等の力を一日に一度だけ使える宝珠。主の良心に従い発動すると……思われる』
「使い方は?」
『相手の前で両手を合わせ……目を細く開けて蝋燭を消すようにフッと息を吐いて目を閉じる……。そして心でお声掛けすればいい。相手のことを心より想っていれば使える筈だ』
『そんな簡単なことでよいのか?』
お琴の問いかけに、ヒイラギはまた少しの間考えてから、ゆっくりと口を開いた。
『簡単なことかもしれない……が、力を使った後、主は一気に体力もろとも……消耗するだろう。一日に一回という制限がある千手観音様のお力は、全ての者を救済する力。並大抵の身体ではすぐに壊してしまう』
『そんな……』
口を塞ぎそれ以上の言葉が見つからない清さん。
だが、それでも俺は――俺にできることはひとつしかなかった。
「でも、それでお鈴が助かるのなら、清さんも、持ち主だった宗司さんも助かるというのなら……それに越したことはない」
『注意点としては、お鈴が主に向かってくる事。その時がチャンスだろう……。だがとても危険だ』
「だからこそ、ヒイラギだろう?」
『主……』
「俺の命……ヒイラギに預けるぞ」
俺が微笑むと、ヒイラギは涙を浮かべて、深く頭を下げた。
『その言葉、しかと承った』
『けれど……あまりにも危険です!!』
――清さんだけは納得していなかった。
『命をそんなに簡単に使おうとしないでほしい……っ!』
――そう言って、真剣な顔で俺を見つめた。
清さんの声は震えていた。
まるで、もう二度と大切な人を失いたくないと訴えているように。
だが、俺にも譲れないことはある。
俺にしかできないことならば、やり遂げねばならない。
「お鈴だってもう恨むことを辞めたいはずなんだ。宗司さんに甘えたいんだよ。でも、そのためには……怨霊でなくなることが第一条件なんだ」
『ですが……あそこまで穢れてしまっては……』
「穢れたからなんだっていうんだ……。そうさせてしまったのは、他でもない俺たちだ」
『っ!』
「元に戻してやろう。元の宗司さんのことが大好きだったお鈴に戻してやろう。それができるなら……俺はこの力の意味を使いたい」
――本音を言えば、俺だって怖い。
膝がほんの少しだけ震えていた。
でも、それ以上にお鈴さんは、今きっと……もっと怖いんだ。
……兄に突き放されたこと。
……理由も分からず虐待されたこと。
そして、ひとりぼっちで――死んでしまったこと。
(――要するに、この力で〝怨霊になったお鈴〟を、もう一度、人だった頃に戻してやれるかもしれない)
この世を恨むなっていう方が、無理な話だ。
それでも宗司さんの眼鏡のそばから離れたがらなかったのは……。
きっと、ただそばにいたかっただけなんだ。
「清さん。俺もお琴がいるから分かるんだ。あんな小さい子をあのままにはしておけない」
『……僕は何ひとつお手伝いも出来ず……っ! せめて、せめて僕を使ってください! お鈴を呼び出すのなら、俺が一番適切でしょう!?』
「ヒイラギではふたりも守れない……。お琴が飛び出さないように、どうかお琴を守ってほしい」
『私は……私は信じるぞ! 何があっても私の光一はヒイラギとふたりでやり遂げると、私は信じるぞ! でも……ひとりで信じるのはこわいのじゃ……。清……傍におってくれ、たのむ……』
『お琴……わかった。一緒に見守ろう』
――こうして、話は決まった。
決戦は夜に行うことになった。
怨霊は、夜になると活発に動き出す。
きっと、ヒイラギの力も夜中まではもたないだろう。
「今夜こそ、ケリをつける」
必ずお鈴さんを――怨霊から解き放ってみせる!
そう皆で心をひとつにした。
決戦前に、少しだけでも体を休めておこうと横になった俺は……夢を見た。
――見た夢は、悲しくて、寂しくて、愛に飢えた……そんな夢だった。
第一章の盛り上がりに突入!
楽しんでいただけていたらいいんですが……(;´Д`)
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