第3話:これが人間の魂だ!手描き無双でネット中が大熱狂
月収70万円の不労所得がもたらした恩恵は、朝の美味しいコーヒーだけではなかった。
画材屋に足を運び、値段を一切気にすることなく、最高級の絵の具と筆、そして大きなキャンバスを買い揃えることができるのだ。
「さあ、本当の『絵』というものを見せてやる」
俺は、裏アカウントでのインチキ暴きとは別に、自分自身の「表のアカウント」で新しい絵を公開することに決めた。
誰にも急かされることなく、何日もかけてじっくりとキャンバスに向き合う。
題材は、長年の配達業で見てきた「夕暮れの街並みと、家路につく人々の温かい笑顔」だ。
重い荷物を運んで腰を痛めた日、雨の中でずぶ濡れになりながら見た景色。50年生きてきた俺の人生のすべて、そして手描きならではの血の通った温もりを、一筆一筆に込めていく。
「機械のインチキなんかには、絶対に描けない『人間の魂』だ……!」
ついに完成した渾身の作品を、俺はネットのイラスト掲示板に投稿した。
ボタン一つで数秒で作られた、薄っぺらいコンピューターの絵が氾濫する今のネットの海に、真っ向から「手描き100パーセント」の絵を投下したのだ。
すると、数時間後。
俺のパソコンの通知音が、壊れたかと思うほどの勢いで鳴り止まなくなった。
『な、なんだこの心に響く絵は……!』
『最近はコンピューターの冷たい不自然な絵ばかり見せられて疲れていたけど、この絵を見て自然と涙がこぼれました!』
『色使いに描いた人の人生の深みを感じる。機械には絶対に真似できない、圧倒的な人間の凄みだ!』
老若男女問わず、ネット中から大絶賛の嵐が巻き起こっていた。俺の絵はまたたく間に拡散され、何百万人もの人々の目に留まる「手描き無双」の状態となったのだ。
さらに、奇跡はそれだけでは終わらなかった。
俺のアカウントに、一通の特別なダイレクトメッセージが届いたのだ。
『初めまして。私、国民的飲料メーカー「大日本ビバレッジ」の社長を務めております者です。
ネットであなたの手描きの絵を拝見し、感動で体が震えました。機械の絵にはない、圧倒的な温もり……。
ぜひ、あなたの絵を我が社の新商品の『全国ポスター』として採用させていただけないでしょうか!契約金として、まずは【1000万円】をご用意いたします!』
い、いっせんまん!?
ただ趣味で絵を描いていた底辺配達員だった俺が、一夜にして日本中が注目する大スターに成り上がってしまったのだ。
「……見たか、インチキ野郎ども。これが人間の手描きの力だ」
月収70万円の余裕に加え、1000万円の報酬と圧倒的な名声。
俺は、自分の手から生み出した絵が世界に認められた喜びに、熱い涙を流すのだった。




