決戦ダイダロ 前編
前回の96話が読みづらくなっていましたので、訂正しておきました。
すみませんでした。
おれは刀を抜いて、のんきに高みの見物をしている2人を斬りかかった。
カキンッ と甲高い音と共に攻撃が弾かれる。
ダイダロとおれの刀の間には宙に浮いた盾が現れたが、驚いてる暇はない。
ダイダロが腰のあたりに構えている銃の口がこちらを向いていた。
飛びかかっていたおれは、防具に付与していたスキルのおかげで、空中で体を捻り回避する。
「今の動きと反応速度。生物としておかしい次元だな」
口元が隠れるマフラーをしている、ダイダロの隣の男が呟いた。
おれは距離を取ってアステリオを召喚して、獣神の神器で融合する。
リクドウを斧モードに変えて再び斬りかかるが、今度は魔力も乗せて全力で振るう。
さすがに大振り過ぎて避けられてしまったが、2人が立っていた大きな岩は木っ端微塵に砕かれた。
「こいつ規格外すぎじゃないか?まだ赤ちゃんだろ」
「一応魔王だからね」
マフラー男の疑問にダイダロが答えると、ダイダロの方を向いて目を丸くした。
「転生者が魔王になった…か。それは誤算だな。転移転生者は必ず人族の中から新しい道を選ぶと思ってたからな」
2人の会話に耳を傾けながら、作戦を練っていると、この荒野のど真ん中で急に植物がおれの周りに生えてきて、拘束されそうになる。斧を振り回して断ち切り、強引にやり過ごしたが、ダイダロの射撃が飛んできて斧で防いだ。
銃弾を防いで武器を構えた時には、マフラー男が消えていた。
魔神の神器に付与していた緊急回避が発動してバク宙した時、地面から円錐上に鋭く硬いものが生えていたのを視認した。
しかしそれもつかの間で、着地地点で空から複数の鋭い槍の雨が降り注ぐ。
慌てて避けるが一部攻撃を受けてしまう。丈夫なからだとアステリオの強靭な肉体で、致命傷にはならなかったからすぐに回復液で傷を治す。
「加勢しようか?」
爆炎のお姉さん、アロンソンが加勢に来てくれた。
烏合の衆はバインフーとクテクで処理できそうな程度まで減っていた。
「アロンソンさぁ、なんでそっち側にいるのか不思議なんだけど」
「推し活だよ」
アロンソンは迷わず即答した。
ダイダロは疑問を持ちながら、納得しようとする。
「もしかして、あナ兄弟もかなぁ?」
ナサニエルはそれに近い気がするが、あきおは魔族に殺されて、どちらかと言うと恨みすらありそうだ。
イルコスによって魔族として復活させられた、という表現が正しい。
「人族を導く、我々69の再編が必要だね。火と雷の席を補填するのは無属性と比べて大変だから、戻ってくれる方が楽なんだけどね」
「よく喋るやつだな!」
ダイダロの長話に飽きてきて、斧で切りかかったが、避けられて地面が割れた。
おれはリクドウを双剣に変えて、手数を増やし近接戦闘に持ち込む。
もう1人のマフラー男の姿は見えないが、ダイダロとこの距離感でいれば迂闊に魔法は飛んでこないだろう。
ダイダロ自身は片手に収まるほど小さなハンマーと、奇妙な宙に浮く盾で、おれの猛攻を防いでいる。
防戦一方だと思われた戦いも、一瞬で状況は変わる。
ダイダロが盾をおれの体に押し当て、動きを防いだ隙に、盾ごとおれをハンマーで殴った。
さっきまでは片手で握っていたハンマーも、盾もろともおれを殴るときは、ダイダロの背丈と同じほどに大きくなっていた。
盾は破壊され、おれは吹き飛ばされる。
そこをマフラー男は見逃さない。
蔓が地面からおれの動きを封じ、空から大きな岩がおれを潰そうとしていた。
しかし、岩はおれよりも上空で爆音と共に破裂した。
岩の破片が勢いよく飛んできていたが、急に目の前に壁が現れてそれらを防いだ。
「人族に遅れをとっては魔王失格だな。『じゆうなれ』」
おれの近くに来た青年は、呟いた後、おれに銃を向け、5発全弾を着弾させた。
おれは急な発砲に驚いたが、着弾直後体が勝手に動いて、蔓の拘束から解放された。
立ち上がるとその青年は雅斗だった。
「これはおれの魔法。次の弾を当てるまで、効果を発揮して、着弾割合に応じて、効果発動時の効力が変わる。だから『しぬな』」
今度はおれの腹部に銃口を突き付け、3発発砲する。
頭上の影も消えて、辺りに散らばる瓦礫が防がれていたのが分かる。
アロンソンの方にもう1人青年が立っているのが見えた。こちらは朔斗だ。
「英雄もそちら側… 世界がおかしな方へ進んでいるね」
マフラー男が空からダイダロの横へ降ってきた。
空中には何も無いが逆光で姿を視認できてなかったようだ。
「そろそろ終わらせて、他の手助けに行く必要がありそうだね」
マフラー男は口元を隠しながらダイダロに話しかける。
ダイダロはハンマーで地面を叩きつけ、一瞬で塔を作り上げた。
塔には小窓が複数付いており、全ての小窓に銃が設置されている。
アロンソンが早々に強そうな炎魔法で攻撃したが、ビクともしなかった。
「『こわれろ』 魔王、おれを塔まで護衛してくれ。射程圏内に入れば破壊できる。」
どこの小窓から攻撃が来るか分からない上に、おれの戦闘スタイルは護衛向きではない。
しかし、息子がやれるって言うんだ。
こんな姿でも父親として守ってやるのが、親の責任だ。転生してきて、子ども達の成長を見てやれなかったけど、今からは一緒にいれる。
「お父さんって読んでもいいんだぞ」
おれの言葉に雅斗は無視して前を見ていた。
おれはため息をつきながら、アステリオとの融合を解いて、ジェミニの力を使う。
これが複眼、高速移動、飛行とトンボのいいとこ取りみたいな力を使用可能だ。
後ろにいる朔斗とアロンソンの援護を信じて、おれ達は塔への接近を試みる。
(おれもパトラのことをちゃんと父親として、呼んだことなかったな…)




