願い
トラリアと一緒にペッシュが待っているおれの店に着いた。
「おーー!やっと来た。久しぶり~」
最初に目が合って声かけてきたのはペッシュではなく、ノンカールズのタクシーンだった。
「なにしてんの?」
「おれ達戦闘力皆無だから、避難してる。」
隣にいたマヤーネの答えに納得する。
街の中で、ペッシュとアカリがいるここ以上に安全な場所などおれは思いつかない。
「つかさ」
ペッシュに名前を呼ばれ手招きされ、店の奥にいるペッシュのところまで行く。
「人族の進行は大丈夫か?助けが必要なら加勢するぞ」
過剰戦力過ぎて、丁重に断った。
実際大きな問題は解決済みで、後は従魔達が看病しているはずの、意識が無い人族から話を聞くぐらいだ。
「今回はシャティロンの復興状況を確認しに来たのと、つかさ。これをおまえが持っておけ。」
ペッシュは七神刀をおれに差し出してきた。
「現状でこれを使えるのは、おまえしかいないからな」
おれがペッシュから刀を受け取ると、真っ白の世界に来た。
目の前には6人の神様と、精霊王となったジェミニがいる。
「つかさぁ。いよいよだな。」
鬼神の言葉にキョトンとしていた。
「犠牲は多かったが、69を瓦解して、残るは異界の神の討伐と、それを崇拝している人族の処理だ。」
魔神の言葉に、景色だけじゃなく、頭の中まで真っ白になった。
「少し前に倒した69のダイダロ。あいつと一緒にいたのが、おまえ達の世界の神だ。原因はあいつにある。」
人神からの衝撃の事実を伝えられる。
ダイダロと一緒にいた、ねこ獣人がおれを転生させた神で、最終目標だったらしい。
「つかさ様。願いを、おっしゃってください。」
ジェミニから唐突にふられた。
七神刀のどんな願いも叶えるということから、内容は決まっていたはずなのに、いざとなると本当にこれでいいのか、と考えてしまう。
それでも…
「おれはパトラの復活を求める」
「そうですね。ここまできて失敗するのも困りますけど、彼は消滅してしまいましたからね。つかさ君のところにいるイルコスの能力で、召喚できるようにしましょう。ただ、固有スキルは違うものになります」
おれの願いに神王が答える。
できる限りのことをしてくれるそうだが、イルコスが召喚できるというのは少し謎だった。
「それじゃあ頼むぞ。油断すると死ぬぞ」
獣神から重みのある言葉を頂いた。
そしておれは、神達に見送られながら元の場所に戻った。
おれは目の前のペッシュに七神刀を返す。
「もう終わったよ」
「呆気ないもんだよね」
おれの行動に状況を察したアカリが言う。
刀を授かって、鬼神にあったことがある鬼族なら理解も早い。
「じゃあちょっと行ってくる」
ペッシュ達を置いて、おれは街の入り口に戻った。
まだ目を覚まさない3人の人族と一緒にいる従魔達が背筋を伸ばした。
「イルコス!召喚を頼む。」
「準備をします。少し魔方陣に血液を垂らしてもらうので準備をしておいてください。」
イルコスは罪滅ぼしかのように手際よく動く。
書き上げた大きな魔方陣を前に呪文を唱え始めた。
魔方陣が光始めたところでイルコスから指示が入り、おれはリクドウで少し指を切って血を垂らす。
(リクドウとの契約の時は、ビビったのと丈夫な体が相まって上手くいかなかったのが懐かしいな)
そんな昔のことを思い出しながら、パトラとの記憶を思い出す。
「あらあらまあまあ、なんか楽しそうなことしてますね。」
トラリアが来て血を垂らした。
「仲間外れは無しだろ」
プチもおれからリクドウを取り上げて、腕に刀を入れ血を流した。
「あなただけのお父様のつもり?」
アモーラも指を切って血を垂らす。
状況を理解して来たペッシュとアカリとノンカールズ達も血を垂らす。
「こんなに必要なのか?」
おれは1人疑問に思ったが、これがパトラの人望ということだろう。
「血は記録。いろんな人の記録が集まれば、より元の姿に近くなります。行きますよ」
「待って!」
イルコスが魔法を発動させようとしたとき、雅斗達が走ってきた。
「すごい光が見えたから急いできたよ」
朔斗と桃花も急いで魔方陣の近くにきて、血を垂らす。
「皮肉だけど、最後を見たのは私達だしね」
どういう気持ちで殺人犯が対象の復活に力を貸すのだろうか。
転生前の家族ながら、そこは不思議に思った。
魔方陣の光が強くなり、まもなく魔法が発動しそうだという時に、大きな鳥の影が現れた。
上空からトモンとマモン、メリアスとアイラが降りてきて、みんな血を垂らす。
最初から大きな魔方陣ではあったが、みんなで魔方陣を囲むようになるとは想像していなかった。
空まで伸びる光が眩しいが、目を背けず魔法が成功するのを見守る。
光は地面から晴れていき、そこに角を生やした大男が立っていた。
「親父!!」
おれは涙を堪え、大男に近づき小突いた。
「悪かったな」
男の第一声を聞き、堪えきれなくなった涙が溢れる。
おれはその場に膝から崩れ落ち、柄にもなく泣き叫んだ。




