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日向隊員は横目で明石悠をにらみました。
「ええ~ そんなこと言うの、いきなり、ここで!?」
真土灯里はぽつり。
「よかった」
日向隊員はそれを聞いてびっくり。
「ええ!?」
「私の正体がバレたから。
私、八幡このみて名前使うの、嫌だったんだ。だって私、真土灯里て立派な名前があるんだよ! なんでこんな名前使わなくっちゃいけないの? ずーっと不思議に思ってたんだ。
これからは真土灯里て名前を使うよ。だってこれ、お父さんからもらった大事な名前なんだもん!」
それを聞いて日向隊員は不思議な感覚になりました。私にも金目ひなたという父からもらった大切な名前がある。できれば私も金目ひなたて名乗ってみたい・・・ 今度隊長に相談してみよっかなあ?・・・
「オラ、どけよーっ!」
と、ここで警官隊を跳ね除け、2人の男が3人の前に現れました。先日ここで悪態をついてたAとBです。Aは真土灯里を指差し、
「おい、お前、うそつきやがったな! やっぱお前、真土勝之の娘じゃねーかよ!」
B。
「けっ! 父親は平気で他人の作品を盗作した大ウソつきだったが、娘も大ウソツキかよ!」
その罵声に日向隊員はかなりカチンと来ました。Aはさらに罵声を強めます。
「報復してやんからな! 絶対ここでコンサートさせないからな! お前たちが歌を歌えないように、騒いで騒いで騒いでやんからな、ここで!」
するとAの背後にいた複数のネット民が肯定的に反応しました。
「そうだ! そうだ!」
「みんなで騒いで絶対阻止してやんからな、ライヴを!」
その発言を聞いて日向隊員はピーンときました。
「じゃ、ライヴやめよっか、今日は!」
その日向隊員の発言に明石悠はびっくり。
「ええ~?」
真土灯里は日向隊員を見て、
「いいの?・・・」
日向隊員は応えます。
「だってライヴやらせてくれないんだよ。ここでライヴしても意味がないじゃん!」
日向隊員が望むストリートライヴは、ここで最初に行ったような、ほんとうに歌を聴いてくれる人のためのライヴ。こんなクソみたいなネット民には聴かせたくないのが本音。やつらの脅迫は渡りに舟なのです。
「じゃ、帰ろっか!」
と言うと、日向隊員はきびすを返し、少し速いスピードで歩き始めました。明石悠は慌ててあとを追います。
「ちょ、ちょっと待って!」
真土灯里も日向隊員を追います。AとBはそれを見て、またもや激怒。
「なんなんだよ、おい!」
「おい、無視すんなよ!」
Aは拳を振り上げ、3人に突進。
「ふざけんな! ぶっ殺してやるーっ!」
そのAを数人の警官が手荒に取り押さえます。アスファルトに這いつくばるA。
「くそーっ、何しやがるんだーっ!」
Aを抑え込んでる警官。
「それ以上暴れたら、逮捕すんからな!」
Aは思わず叫びます。
「ふざけんなよーっ! こんなの、言論の自由じゃねーか!」
Aは去る3人を見て、
「覚えてろよ、こんにゃろーっ!」
大量の人ごみをあとに急発進する隊長のクルマ。それを見たマスコミの1人が、
「おい! クルマだ! クルマを出せーっ!
すると彼の隣りにいる彼の部下が、
「先輩、ムリっすよ!」
部下は道路の反対側にあるコインパーキングを見ました。その出入り口にはパイロンとパイロンバーが設置されており、さらにその前には、1人の警官が仁王立ちしてました。
そのせいか、コインパーキングの中は空っぽ。1台もクルマが駐まってません。
「昨日から閉鎖されてるんですよ、前の駐車場。路駐しようにも、警官の眼が怖いし・・・」
先輩と呼ばれた男は顔面蒼白。
「ま、まじかよ・・・」




