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娘Aは歩きながらぼやきます。
「あ~あ、私たち、有名人になっちゃったよ。悪い意味で・・・」
娘Bもぼやくようにそれに応えます。
「私たち、どうなっちゃうんだろ、これから?」
ここで一瞬の静寂。と、再び娘Aがぽつり。
「なんでチクッたんだろ、あの女?」
「あの女って、明石悠?」
「うん・・・」
「黙っていればいいのにさ」
「1億円以上も恐喝されてたんじゃ、いつかはバレるって・・・」
「あいつがいけないんだよなあ・・・」
「あいつって、日向愛?」
「うん・・・ あいつ、誰かに殺されないかなあ?」
「あは、ムリだって。あの娘、なんか特別な訓練を受けてるらしいよ」
「ええ?」
「ほら、近くにテレストリアルガードの基地があるでしょ。そこで物心ついたときから、特別な訓練を受けてるんだって」
「ええ~!? け、けど、特別な訓練て、何?」
「ほら、ちょっと前にメガヒューマノイドて話題になったでしょ?」
「女の人が装甲をまとって空を飛ぶっていうやつ?」
「そうそう、それそれ! メガヒューマノイドて実際何人いるのかわからないんだけど、中には小学生の女の子もいるんだって」
「それ、聞いたことがある・・・ もしかして、日向愛!?」
「うん。メガヒューマノイドになるために、幼いときからあの基地の中で特別な訓練を受けてるんだって。あくまでも噂だけどね」
どうやら世間では、日向愛=メガヒューマノイドだと気づかれ始めてるようです。ま、12歳の少女が4人組の不良を瞬殺してしまえば、気づかれて当然ですよね。ただ、噂の中には、明らかな間違いが多々あるようです。
ここで歩いてる2人の少女の耳が何かを捉えました。ギターの音と歌声です。はっとする2人。
「な、何、これ? 歌?」
「行ってみよーよ!」
「うん!」
2人は小走りになりました。歩道の角を曲がると数人の人だかりがありました。2人がさらに近づくと、その中心にはギターを弾く少女とそれにあわせて歌う少女の姿が。中学校の校門の前です。娘Aは唖然とします。
「な、なんなのよ、これ!?・・・」
ギタリストを見ると日向隊員、歌ってるのは明石悠でした。2人とも普段着。娘Bはそれを見て、
「日向愛と明石悠?・・・」
娘Aは途端に気分を害しました。
「よくもこんなときに歌えるわねぇ! 校門の前でしょ!? あなたたちのせいでこの中学校は今、休校中になってるんのよ!」
娘Bも語気を荒げ、
「見てるやつらもどうにかしてるわ! どうしてみんな、こんなやつの曲を聴いてんのよ!?」
するとオーディエンスたちが2人をにらみました。さらに日向隊員からちょっと離れているところに立っていた2人の警官も、娘Aと娘Bをにらみました。
「君たち・・・」
2人の警官は娘Aと娘Bに向かって歩き始めました。娘Aと娘Bはそれに気づき、びびります。
「う!?」
娘Aは娘Bを見て、
「行こ!」
「うん!」
2人は慌てるようにその場を立ち去りました。それを見て2人の警官はニヤッと笑いました。その顔を見ると、なんと橋本隊員と倉見隊員でした。
橋本隊員と倉見隊員は、日向隊員から見て左手側にいました。実は右手側にはもう1人、警官に化けたテレストリアルガードの隊員がいました。寒川隊員です。寒川隊員は明石悠の歌声を聴いてます。その顔は笑顔。
「ふふ、日向、まさかあの娘(明石悠)にこの曲を歌わすなんてな・・・」
実は今明石悠が歌ってる曲は、尾崎豊の僕が僕であるために なのです。これは寒川隊員の人生を変えた曲。日向隊員にギターを教えるとき、真っ先に教えた曲でもあります。
「日向が教えたんだな、この曲を。ふふ・・・」
寒川隊員の笑みは止まりません。




