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ピザの配達員はドアを閉めながら、
「またのご注文をお待ちしてます!」
ドアが完全に閉まりました。モヒカンの男は振り返ると、ピザの容器を持ってパタパタと廊下を歩きます。そして引き戸を開け、部屋の中に入りました。
部屋の中には、元町工場の中ではモヒカンの男と一緒にいたリーゼントの男と首謀者の老松かよがいました。モヒカンの男は老松かよにピザの容器を差し出し、
「姐さん、ピザが届きましたよ!」
「よこしな!」
老松かよはピザの容器を奪うように取ると、がさつにふたを開けました。そして中のピザの1片を取ると、
「あ~ん!」
と丸かじり。それを唖然として見ているモヒカンの男とリーゼントの男。老松かよはその視線に気づき、2人をギロっとにらみました。
「なんだよ!? 文句あんのかよ、ええーっ!?」
2人は慌てます。
「い、いいえ、なんでもありませんよ・・・」
老松かよは、
「ふん!」
と言うと、再びピザにかぶりつきました。しばらくして老松かよはため息。
「は~ しかし、気分が悪いねぇ・・・ 誰だい、警察にチクッたヤツは!?」
2人の男はそれを聞いて苦笑。そして思いました。
「そりゃあ、姐さん、あれだけたくさんの兵隊に招集をかけたら、情報が漏れて当然ですよ・・・」
ま、実際通報したのはテレストリアルガード作戦部門の隊長。日向隊員の正夢を元に通報したのですが。
と、老松かよはふと何かを思い出しました。
「うん? そういや、啓一はいつになったら帰ってくるんだ?」
リーゼントの男も頭を傾け、
「おぼっちゃんですか? そう言えば帰ってきませんねぇ・・・」
どうやら啓一とは、町工場の中で老松かよにボコボコに殴られていた彼女の息子のようです。
老松かよは思い出します。
「う~ん・・・」
これは30分くらい前の出来事。場所は同じ部屋。啓一の顔面を思いっきり殴る老松かよ。
「うぎょーっ!」
床に転がる啓一。啓一は涙声で、
「か、母ちゃん、もう殴んないでくれよ~!」
吐き捨てる老松かよ。
「うるせーっ!」
老松かよは啓一の腹を蹴ります。悲鳴を上げる啓一。
「ぐふぉーっ!」
モヒカンの男とリーゼントの男はびびりまくり。
「ひ~・・・」
老松かよは啓一の前にデーンと立ち、
「悔しかったらあの女を殺してきな! そうしたら許してやるよ! お前はまだ13歳なんだ。何人殺してもすぐに娑婆に出てこられるだよ! 安心して殺してこい!」
啓一は悔しさいっぱい。涙がにじみ出てます。と、啓一はよろよろと立ち上がりました。そのまま引き戸に向かっていきます。モヒカンの男とリーゼントの男はそれを見て、
「ぼ、ぼっちゃん・・・」
啓一は引き戸を開け、部屋を出ていきました。一方老松かよは缶チューハイをブシューッと開け、それを一気呑みしました。
「くふぁーっ!
け、どうせ小心者のあいつじゃ、人を殺すなんて夢のまた夢だろうよ!」
モヒカンの男とリーゼントの男は唖然としたまま。
現在の老松かよ。
「あいつ、帰って来る気ないのか?」
結局啓一は帰ってきませんでした。
人が1人もいない中学校の校庭。それをネット越しに見ている人影があります。2人の少女です。2人はこの中学校に通う中学生ですが、今は普段着を着てます。この2人、娘Aと娘Bと呼ぶことにしましょう。
2人はフェンス沿いに歩き始めました。歩道です。娘Aはぽつり。
「あ~あ、この学校、どうなっちゃうんだろ?」
「はぁ・・・ 先生も生徒もこんなに逮捕されちゃ、休校になって当然だよ・・・」
「私たちの名前も顔写真もさ、日本中に出回ちゃってるんだってさ・・・」
「誰だよ、名簿流出させたやつは?」




