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「もう1回行くよ!」
と言うと、日向隊員はギターを弾く体勢に。明石悠はそれを見て、
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
が、日向隊員は委細構わずギターをかき鳴らし始めました。明石悠はそれを大声で止めます。
「ちょっと待ってってーっ!」
日向隊員ははっとして掌で6つの弦を押さえました。明石悠はその日向隊員に、
「今度ははい!て言わなくていいから! 私の判断で歌うから!」
日向隊員は一瞬フリーズしましたが、にこっと笑って、
「ふふ、OK!」
日向隊員は再びギターをかき鳴らしました。今回は掛け声はなし。けど、明石悠はちゃんと歌い出しました。
明石悠は今度は無意識で歌うことを心掛けました。日向隊員はその歌声に感心してます。
「そうそう、その調子、その調子」
明石悠は歌い終えました。1つ前は自信があったのに日向隊員に否定されたので、今度は恐る恐る日向隊員に質問しました。
「ど、どうだった?」
日向隊員は笑顔で、
「今度はよかったよ!」
明石悠の顔はぱっと明るくなりました。
「あは」
ま、実のところ、日向隊員の判定では黒部すみれの半分にも満たない歌唱力でしたが、それでも日向隊員を満足させるものでした。
「今度は尾崎豊の曲を歌おっか」
と言うと、日向隊員はパソコンのマウスをクリック。プリンタが作動。1枚の紙が出てきました。日向隊員はその紙を持つと、明石悠にそれを渡しました。
「はい」
「これは?」
「僕が僕であるために、て曲の歌詞」
「尾崎なんとかて人の曲?」
「うん!」
「へ~・・・」
明石悠はその歌詞を読みました。日向隊員はギターを構え、
「たぶん聴いたことないと思うから、とりあえず私が歌ってみるね!」
日向隊員はギターを弾き始めました。アルペジオ(コードを1音1音分解して弾く奏法)?・・・ いや、違います。イントロのメロディとコードを同時に弾いてるのです。まるで2本のギターを同時に弾いてるよう。それを聴いて明石悠はびっくり。
「ええ~?・・・」
ちなみに、この奏法、日向隊員にギターを教えた寒川隊員にはできません。
日向隊員は歌い始めました。頭には黒部すみれを思い浮かべてます。彼女の歌い方を極力まねようと思ってるのです。それでもそのヴォーカルは日向隊員を自己満足させるものではありませんでした。
けど、明石悠は感動してました。
「すごい・・・」
曲が終わりました。日向隊員は質問。
「どう?」
明石悠は歓喜します。
「すごいよ! なんか2人でギターを弾いてるみたいだった!」
それを聞いて日向隊員は呆れました。
「あは、注目するのはそこじゃないだろって・・・」
次にきっちりと発言。
「あなたにも歌ってもらうからね、次は!」
「ええ~?・・・」
と言っても、明石悠の知らない曲。日向隊員は1つ1つメロディを教えました。
日向隊員はギターを爪弾きながら、
「ぼく~はぼくで・・・」
明石悠はそれに合わせ、
「ぼく~はぼくで・・・」
「そうそう、その調子、その調子!」
レクチャーが終わりました。日向隊員。
「じゃ、歌おっか。さっきみたいに何も考えないで、魂を込めて歌ってね」
「はい!」
日向隊員はギターを爪弾き始めました。歌いだす明石悠。そのヴォーカルを聴いて日向隊員は思いました。
「ふふ、十分籠ってるよ、魂が。あは、そっかーっ! あいみのひまわりよりこっちの曲の方が魂を込めやすいんだ!」
明石悠は歌い終えました。日向隊員はその明石悠を笑顔で見て、
「OK、最高のヴォーカルだったよ!」
明石悠も途端に笑顔に。
「あは」
が、
「明日街に出て歌ってみよっか?」
この日向隊員の提案に唖然。
「ええ?・・・」




