出会いとは、いつも予測できないもの。――7
「なんですか?」
「モンスターとの戦闘なんだが、はじめのほうはあたしたちに任せてくれないか?」
「構いませんけど、大丈夫ですか? 退院した直後で本調子じゃないんですよね?」
「だからこそだよ」
焔村さんが、担いだ大剣で自分の肩をトントンする。
「本調子じゃないからこそ調子を取り戻したいんだ。それには実戦が最適だろ?」
焔村さんが口端を上げた。どこか肉食獣を連想させる笑み。
「心配すんな。Aランクダンジョンのモンスターごときに遅れはとらねぇよ。準備運動にちょうどいい」
「あははは……そうですか」
焔村さんの発言に、俺は頬をひくつかせた。
Aランクダンジョンのモンスターって十分強敵なんだけどなあ……『ごとき』って呼べる相手じゃないんだけどなあ……。
まあ、俺が心配する必要なんてないのかもしれないね。なにしろ彼女たちは、天原さんの仲間なんだし。
思い直し、俺は焔村さんに返答する。
「じゃあ、はじめのほうは任せますね」
「おう! 大船に乗ったつもりでいてくれ!」
焔村さんが太陽みたいに明るく笑った。
こんなにも安定感のある大船はそうそうないだろうね。頼もしいことこのうえないよ。
などと思いながら焔村さんに笑みを返していると、先行していた篠崎さんが静かに片手を上げた。
「(ボソボソ)」
「モンスターを見つけたみたいです」
「(コクコク)」
通訳を務める四条さんに頷き、篠崎さんが通路の先を指さす。そこにあったのは、右への曲がり角だ。
「(ボソボソ)」
「あの角を曲がって二〇メートル進んだところに、『マミージェネラル』がいるそうです」
「……そこまでわかるものなの?」
「(コクコク)……(ボソボソ)」
「風の流れと空気の振動でわかるらしいですよ」
「どこの達人だ……」
四条さんが代弁した篠崎さんの説明に、俺は驚きを通り越して呆れた。
見てもいないのにわかるとか、本当にどうなってるの? 篠崎さんはレーダーかなにかなの?
「うっし。じゃあ、行くか」
「久しぶりだから油断は禁物よぉ」
「もちろんです。皆さんには傷ひとつ負わせません」
「まあ、ケガしたところで美月さんがすぐに治してくれるでしょうけどねー」
「(コクコク)」
焔村さんがコキコキと首を鳴らし、渡会さんが人差し指を立てながら注意して、天原さんが凜とした表情で誓い、四条さんがあっけらかんと笑って、篠崎さんがナイフをギュッと握りながら頷いた。
これからヴァルキュリアの――Sランクパーティーの戦いを見物できるのか……。
俺のなかで期待と緊張が高まる。
ヴァルキュリアのメンバーについていくかたちで曲がり角へ向かい、曲がった先で俺は見た。
両手に斧を持ち、全身に包帯を巻いた、二メートルほどの人型モンスター『マミージェネラル』を。
マミージェネラルは曲がり角から二〇メートルほど先にいた。篠崎さんが言ったとおりだ。
「よし! 戦闘準備!」
焔村さんが号令を出し、ヴァルキュリアのメンバーがそれぞれの武器を構える。
「勝地くんはここにいてください。すぐに終わらせます」
「わかった。必要ないと思うけど、一応、気をつけて」
「ありがとうございます」
天原さんが俺に微笑みかけ、マミージェネラルを見据えた。
眉をキッと上げ、大盾を構え、マミージェネラルに接近しながら、天原さんがスキルを使用する。
「『タウント』」
モンスターのターゲットになる、盾役の必須スキルだ。
天原さんを中心とした揺らぎが発生。揺らぎに触れたマミージェネラルが、天原さんのほうを向いた。
『オオォォォォオオォォ!』
両手の斧を振りかぶり、マミージェネラルが天原さんに突進してくる。
焔村さんが声を張り上げた。
「行くぞ!」
「「「はい!」」」
ほかのメンバーが応じ(篠崎さんは頷き)、戦闘がはじまった。




