第16話
タケル君視点です。
その人に初めて出会った時、僕はその人から目が離れなかった。
とても綺麗で、胸のドキドキが止まらなかった。
兄ちゃんや父ちゃん母ちゃんを治してくれた時は、凄く嬉しかった。
法術を使う術士様は、不思議な光に包まれてもっと綺麗で、村の皆を簡単には治してしまった。
皆を助けてくれた法術士様の為に少しでも力になりたいと考えていたとき、家の裏で法術士様があの山に行くと言っていたのが聞こえ、僕は不安になった。
前にお侍様があの山に入っていって帰ってこなかった。もしかしたら法術士様も帰ってこないかもしれない、そう思ってしまった。
なんとか頼み込んで法術士様と共に山に向かえる事になった僕は、法術士様の不思議な馬に乗せてもらえる事になった。
しかも法術士様の前に座らせてもらい、馬の手綱を握られた時には後ろから抱き締められるような姿勢で凄くドキドキした。
途中馬があまりに速すぎて何も覚えていなかったけど、馬が止まって声を掛けられた時に法術士様の顔が凄く近くて慌ててしまった。
急いで降りようとして馬から落ちてしまい、膝を擦りむいてしまったけど、法術士様に治して頂き、微笑まれたお顔がとても美しく僕はドキドキして下を向いてしまった。
法術士様が山に入られる前に、僕には山の入り口で待っているように仰られた。
山に入っていく後ろ姿を見ていると、お侍様と重なり不安を感じた。
法術士様が山に入られてからどのくらい時間が経ったろうか。日が大きく傾いてないのは影を見て理解できた。
そんなに時間が経ってないはずなのに、僕には途方もなく長く感じた。
不安はだんだん強くなっていき、僕は約束を破る形で山に入って行った。
山に入って山道を進んでいくと道端に朽ちた亡骸が有ったため、何かが起こっているのだと感じた。
僕は足早に山道を進むと、やがて拓けた場所へとやってこれた。
そこで見たのは、法術士様が吹き飛ばされる姿だった。
法術士様が血を吐き出し、倒れていたお侍様からは黒い煙が噴き出し、巨大な怪物へと変貌した。
その状況を見て僕はいてもたってもいられなくなり、姿を晒してしまった。
法術士様は僕の姿を見たとたんに僕のもとまで走って来られ、光の空間を作り出した。
その後すぐに怪物が持っていた刃物で光の空間を切りつけ始め、必死な表情の法術士様に怒られた。
この時僕は、この方の足手まといとなってしまったのだと理解できた。
法術士様の力になりたいと思っていたのに、寧ろ邪魔をしてしまうなんて・・・。
そんな後悔をしていた僕に、法術士様は言った。
僕が従者となり、この方を護る存在となることを。
僕は迷いはしなかった。
今度こそ法術士様、溝口 纏様の力となる契約を受け入れた。
次回は4日後です。




