第12話
茂みから飛び出してきた怪物が私の胸部を爪で切り裂いた。もちろん装備の強さとチート効果があり、私は後ろに突き飛ばされる程度の衝撃に終わった。
天照の冠が私の受けたダメージを反射し、怪物へと返すと、先程の勢いとは変わりよろよろとふらつき始めたので私は杖を出して横一線に薙ぎ払った。いや殴りつけた方が正しいか。
『グァアァアア───!』
怪物が苦しみながら体から煙を上げていく。いくら攻撃力が低くても倒すことは出来たようだ。
倒れた怪物を見て、私はホッとしていた。
そして先程の胸の高鳴りとは違う鼓動が、私の胸を痛めつけていた。
先程の緊張か興奮か分からないものではない。これは恐怖から来るものだと私にはわかった。
いくら身体能力が高く強力な装備を着けていたとしても、ここはゲームではなく現実だ。
襲われた時の衝撃が、私の心に死という恐怖を思い知らせた。
気付けば呼吸が荒くなっており、膝がガクガクと震えていた。
私は自分を落ち着けるために、地面も気にせず座り込んだ。そして強引に深呼吸を繰り返し、徐々に自分の心に落ち着きを取り戻させた。
そして冷静になった頭で考えてしまう。もし襲われたのが生まれ変わる前の溝口纏だったら、もし身体能力や装備がレベル1だったら。ゾクリとした感覚が背筋を走り、強く拳を握りしめた。
「・・・ふ、ははは・・・情けないな、あんな大口を叩いといてこんなざまだ・・・」
パンッ!
私は自分の両頬を思いっきり叩いていた。
「怖いけど・・・・逃げるわけにはいかない!」
自分の中に恐れがある。しかし、成すべき事がある。
私は己を奮い立たせるために喝を入れると、勢いよく立ち上がった。
「よしっ! ・・・・ん?」
いざ呪いの根元へと歩もうとしたとき、ふと先程の怪物の死骸が目に入った。
確認をしてみると、私は目を疑った。
なぜなら、そこにあったのは襲ってきた異形の怪物なのではなく、人間の亡骸だったからだ。
「もしかして呪いの影響なのか? 」
「じゃあこいつが山に入った侍・・・ではないな」
その亡骸は妖怪を狩っているなどと言われるような格好もしておらす、最初の村で見たような農民の格好をしていたからだ。
私は、事態がややこしい方へ進んでいると感じた。
あれから特に襲われる事もなく順調に進むことが出来た。
山の中腹辺りだろうか、だいぶ拓けた場所に出ると、私はこの場所の瘴気に一番の濃さを感じた。
ここが目的地だなと確信すると、私は辺りを見回した。先程から漂う瘴気に紛れて、妙な気配と寒気がしているのだ。
ザッ、ザッ、ザッ・・・・
警戒していた私の耳に足音が聞こえてきた。
足音の方向に目を向けると、瘴気の中から人影が浮かび上がってきた。
「あれは・・・」
そこに現れたのは刀を持った軽装の武者だった。
「あの人がタケル君が言っていた侍かな?」
その姿は先程の怪物とは違い、異形に変化していたり朽ちた様子は見られない。寧ろ生気を感じる。さしずめさっきのはゾンビだな。
だが完全に正気な様子は見られず、若干ふらふらした様子がみられる。
侍は「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛━━━━━━ッ!」と声高らかに叫ぶと、森の奥からゆっくりと先程のゾンビが一体、二体と森の奥から姿を現してきた。
どうやら侍はゾンビを操れるようだ。
私は杖を構えると、先程の恐怖を払拭するかのように相手を睨み付けた。
「あなたたちを、浄化させていただきます」
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