file03 “no name”
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“名無し“
あの日、この施設に収容されていた男が1人逃亡した。
その男も少年と同じ、最__を作り出すプロジェクトで産まれた歪んだ生命だった。
男は捕まった瞬間こう叫んだという。
『人間が人間らしい生活を求めて何が悪い!』と、
確かにここでは少なくとも平和な国に住んでいたらまず体験することのないことばかりしている。
人殺しなんてそもそも誰も体験したくないだろう。
ナナシ曰く、男は処刑されるらしい。
この施設では逃亡は何よりも重い罪なのだ。
このプロジェクトは国家も知らないらしい。じゃあ、予算はどこから出てるんだという話になるがそれは彼女も知らないらしい。
おまけに、男が逃亡をはたらいたお陰で警備が厳重になったらしい。
ぼくと彼女が会っているのがバレたら勿論、タダでは済まない。
2人とも男と同じ末路を辿るだろう。
そして、ぼくは少しだけ彼女の顔に翳りがさしていることに気づいた。
少し辛そうな顔をして覚悟を決めたのかゆっくりとぼくに一つ、提案した。
それはぼくにとっては死ねと言ってるほどひどいものだった。
『もう、会わない方がいいかもしれない』
これを聞いた時、ぼくは一瞬彼女を襲いそうになった。
ギリギリ踏みとどまれたけど、一瞬でも理性が無くなった様子が表に出ていたらしく彼女の顔は少し怯えていた。
そこからぼくは何も考えられなくなった。
目の前には苦渋の決断――後に英断となるのだが――を下した、非常に辛そうな顔をしている彼女がいる。
もう、2度と会えない。
いや、会わない。
ぼくにとっては死ぬほど辛いことだった。
きっと彼女もそうだったんだろう。
でもそれはぼくらがあの男のように処刑されないようにするためには絶対に必要なこと。
ぼくは、ぼく達は認めざるを得なかった。
ここで、2人は分かたれた。
でも、ぼくはこのとき気づくべきだった。
男は処刑が決まったがまだ執行されてないこと。
彼女がそう簡単に諦めることがないこと。
この施設の被検体は皆、超人だということ。
その全てに気づいていたら...と思うが、過去のことなんてもうどうしようもない。
変えれるのは未来だけ、これも彼女の言葉。
過去を変えてしまったら変えようとした人物がいた“今”を壊してしまう。
未来をより良いものにするために過去を変えた結果そもそもかつて生きていた“今”が無くなりかねない、という考えだという。
そして、もう一つ事件は起きた。
これは最初に最後の虐殺。
ぼくと彼女を永遠に切り離した、一つの事件である。




