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HEΓP  作者: 天夢
-Chapter01-
7/22

全知纏:3

11月14日(木) 12:50 p.m.


 昼休み。

 あの後、椿姫さんに借りたシャーペンをブレザーのポケットに仕舞い、彼女に話しかけようと右を向く。

 が、私が午前の授業で使った教科書とノートをカバンに入れているうちに人が集まっていたようで、割り込んで話せる雰囲気ではなくなっていた。

 折角お昼を食べながら話すチャンスだったけれど、仕方が無い。頬を膨らませて不満を表しながら呼のところへいく。


「転校生っていう肩書きは素晴らしいね。今は女子が集まっているけれど、時期に男子が集まりはじめるんだよあれ。椿姫さんは美人だし」


 呼の机の左側にしゃがみ込み、顎を机に乗っけて口を尖らせて呼を見る。でも呼はこちらを見ていない。


「…何の用?」

「用? そうだね、今朝の話の続きを聞こうと思ってね」


 少し機嫌が悪いみたいだ。

 といっても、機嫌が良くても殆ど顔に出ない子だから確信はない。なんとなく、そんな風に見えるってだけだ。


「今朝の続きって?」

「フェンス落下事件だよ。呼の見解では、アレは老朽化が原因じゃないんだろう?」


カバンをゴソゴソと右手で漁っていた呼は目的のものをうまく取り出せなかったらしく、カバンを覗き込んでしまい、完全に私を視界からシャットアウトした。

 横目で椿姫さんの席の方を確認すると、私にしたように気だるそうにクラスメイトに対応しており、度々黒猫ちゃんに頭を叩かれている姿が人と人の合間から少しだけ見える。

 あの様子じゃ、誰が話しかけても打ち解けるのは難しいだろうね。

 少なくとも、今日の内に誰かと意気投合っていうのはなさそうだ。



「…多分ね。聞いた話だと、フェンスは練習中に落ちてきたって訳じゃないみたいだし、うちの屋上は常に立ち入り禁止ってわけじゃない。誰かが入って落としたってこともあるかも」


 取り出そうとしていたお弁当を机に置いた音とほぼ同じタイミングで返事が聞こえたので視線を戻す。頬杖をついた呼が、ようやくこちらを向いたところだった。

 なるほどありえないことではない。でもその場合一つの疑問が残る。

 あくまで意図的に落下させた場合だけれど、わざわざ屋上に行って、フェンスを落とす理由がわからない。

 そして故意ではなく事故だった場合、フェンスが発見されたのが今朝になってからだったというのが気になる。

落下した先が校舎の裏手側だったから発見が遅れたと言えばそれまでかもしれないが、ならフェンスはいつ落下したのだろう。

 私の下校時にはフェンスが落下した音なんて聞こえなかった。となると、フェンスの落下はそれ以降の時間帯の可能性が高い。

 そんな時間に下校もせず、屋上に登る理由は一体なんだろうか。

 仮に落下事件が起こったのが今朝だったとして、部活の朝練習よりも早く学校にきて、フェンスを落とさなければいけない理由は一体なんだろうか。


「うーん、呼。人為的に落とされたと考えるには証拠不十分だね。犯人がフェンスを落とした理由か、あるいは落下させてしまった原因がイマイチ推測の域をでないよ。何か理由があるのかい?」


 考えてみたけれど、この校舎自体築100年を超す古い物だという前提がある以上、老朽化による自然落下より説得力のある落下原因が見つからない。

 しゃがんだままお手上げのポーズをとって見せ、呼の返事を待つ。けれど、質問の答えはまた聞けなかった。


「ごめん。今から委員会だから、また今度」


 なるほど。お弁当を探していたのは移動するためだったのか。


「わかった。貴重な昼休みを邪魔して悪かったね。いってらっしゃい」


 呼は一度頷くと立ち上がり、まっすぐ教室から出て行ってしまった。

 ……また今度、か。

 私もそろそろお昼御飯を買いに行こう。昼休みが始まって少し時間も経っているし、購買部の賑わいも少しは収まっているだろう。

 ブレザーのシャーペンが入っているのとは逆のポケットに手を突っ込み、財布が入っていることをしっかり確認する。教室を出ようとドアを開けながらもう一度椿姫さんのいる席の方向を確認する。

 相変わらず彼女の昼食が購買部だった場合、食べ損ねてしまいそうな人気っぷりだ。

 群がる女子たちの隙間から見えた彼女は窓の外をボーッと眺めており、未だ退屈そうな表情を崩していなかったけど、まあなんとかなるんじゃないかな。

 思わずくすりと笑ってしまった口元を抑え、腹の虫の急かされないうちにと教室を後にして購買部へ向かった。

 哀愁とまでは言わないが、彼女がああやっている姿は、とても綺麗だった。

 少なくとも、私の目にはそう映った。

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