13:実家へ
表に面した木々の塀が、美しく色付いていた。今日も晴天。森の中ほどじゃ無いけど、朝の空気は気持ちいい。大きく深呼吸した。うん、わたし大丈夫。
「すごいな。大邸宅かよ」
「ここ、全部リムノのおうちなの?」
ルカスとキッポが驚いてる。わたしにとっては、懐かしい見慣れた景色だけど。そうよね。確かにお金だけはある家だから。
「うん。正面玄関は道を曲がった先にあるんだけど。裏門から入るわ。うまやばんさんか、せんたくむすめさんと会えるかもしれないから」
わたしは先導した。目立たないけど、垣根に四角い縁取りがある。裏門をそーっと開けた。生い茂る木々で視界は悪いけど、誰もいないみたいね。
「ここ。ちょっと狭いから、ルカスは長剣に気を付けて」
「ああ」
木々のトンネルをくぐる。裏庭に出た。あ! 洗濯物を干してる! せんたくむすめのレンさんだ! 小声で呼んでみた。
「まあ! リムノお嬢様! お帰りになったんですか!?」
ぱたぱたと、こちらに来てくれた。
「――正確には違うんだけど。ちょっと寄りました。兄さんや妹は元気かしら?」
「ええ。カイト様もミク様もお元気でいらっしゃいますよ。今は選挙のために、忙しくしてらっしゃいますけど……。本当にお懐かしい。お客様もご一緒なのですね? ご主人様にお知らせしないと。でも、どうして裏門からいらしたんですか?」
「それがちょっと、ね。あ! 父には伝えないでください。――レンさんを見込んで、頼みたいことがあるんだけど」
「はい。何でございましょう?」
「出来るだけ両親には会いたくないの。事情はあとで話すわ。こっそり、わたしの部屋まで入れないかしら?」
レンさんはエプロンの裾をうにうにしながら、小首をかしげた。
「それは、出来ますけど……。お客様に失礼でないかと」
「我々のことはお気になさらず。リムノさんの願いを聞いてあげてください」
ルカスが力強く言ってくれた。
「承りました。ご主人様は奥様と共に、応接室にいらっしゃいます。選挙が近いので、取材の方々がここのところ、大変多くなっておりまして。なので裏廊下からお部屋まで、誰にも見られること無く、お入りになれると思います」
わたしは息を付いた。
「ありがとう。本当に助かったわ。裏庭でレンさんに会えたおかげね」
「わたくしのような者が、お役に立てるのであれば。いくらでもおっしゃってくださいませ」
にっこり笑ってくれた。幼い時からなついてたレンさんだから、その笑顔が嬉しい。
「勝手口から入れるかしら?」
「大丈夫です。見られることはありませんよ」
「可能なら……。兄さんと妹に会いたいんだけど」
レンさんは、ちょっと困った顔になった。
「今、本当にお忙しくしてらっしゃいますので。ミク様でしたら、可能かと思いますけど……」
「兄さんはムリなのね?」
「申し訳ありません。ご主人様が、付きっ切りになってらっしゃいますので」
「そんな、謝らないで。わたしのワガママなんだから。じゃあ、裏廊下から部屋に入るわね」
「そうなさってください。お客様方。失礼を致します」
ルカスとキッポは会釈をした。レンさんは、洗濯物干しに戻る。
「じゃあ、一緒に来てくれる? 裏廊下だから、少し狭いけど」
「ああ」
「いいよ。大丈夫」
窓から見られないように、建物に張り付くようにして勝手口まで来た。誰もいない。でもわたしは急いで、裏廊下への階段を上った。2階で階段から裏廊下に入り、薄暗い中、ドアを数える。突き当たりの8つ目。鍵はかかっていなかった。懐かしい期待にちょっと震えながら、ドアを開ける。




