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14/19

14:妹と

「――わあ」

 声が出た。懐かしいわたしの部屋。出窓のぬいぐるみたち。フリルのカーテン。大きめのベッド。冒険譚の詰まってる本棚。――変わって無いのね。ちゃんと掃除をしてくれていたようで、キレイに整えられていた。

「入って。恥ずかしいけど」

 ルカスとキッポに勧めた。

「広いお部屋なんだね。ボクのウチぐらいありそう」

「さすが資産家の娘、ってところか?」

「広いとね? 逆に。寂しい時もあったわ。ここを出るまでは」

 パタリとドアを閉じて、息を付いた。続けて、

「人恋しいのは小さなころからだけど、師匠の元へ行って、旅に出て。独りでいるのにも慣れて来たわ。今は、ルカスとキッポがいてくれるけどね」

 ルカスが言った。

「人は。独りで産まれ、独りで消えて行く。その間に何を残せるか。そこが一番大切だとオレは思うぜ」

「ドルイドの教えにもあるよ。『葉は朽ちて土となり新たな生命を産み出す』って言うの。それまでにどれだけのことを成せるかが、大切なんだって」

 わたしはうつむきつつ微笑んだ。

「ありがとう。その通りね。わたしもどこかでふっ切らないといけないって。――分かってはいるんだけど。こうして自分の部屋に戻っても、まだうじうじしちゃう」

 でもことばの終わりには、ルカスとキッポの顔を、ちゃんと見られた。2人とも納得の表情を浮かべてる。

「あ、遅れちゃったわね。好きなところに座って」

 ルカスはテーブルの椅子に、キッポはベッドに腰かけた。わたしは机の椅子に座る。

「うわあ。柔らかいベッド。こんなの初めてだよ」

「本当は柔らかいのって、腰に良くないらしいんだけどね」

 一息ついたルカスが、

「さて。どうする? さっきの話だと、兄さんには会い辛そうらしいが」

「とりあえず、ミクの部屋まで行ってみるわ。紹介したいし」

 ノックが聞こえた。わたしはビクッとなる。そしてドア越しに、

「レンでございます。ミク様をお連れ致しました」

 わたしはそれを聞いて、思わず立ち上がってしまった。急いでドアに向かう。そーっと開けた。そこにいたのは、わたしよりずっと長い髪を浅葱色に染め、ツインテイルにしているミクだった! にこやかなレンさんは、お茶のセットを持って、わたしたちのことばを待っている。ミクは恥ずかしそうに、もじもじしているだけだ。

「姉さん……」

 細くつぶやく。わたしはまた、泣きそうになって来た。

「ミク! 会いたかったよお!」

 わたしの記憶に残っているミクの姿は、もうそこには無かった。背も伸びている。髪型は相変わらずだったけど、染めているなんて。でも、それが似合う年頃になったのね。

「帰って来てくれたの? 姉さん?」

 そのことばの後でレンさんが、

「ここでお話ししていると、誰かに見られてしまいますわ。リムノお嬢様。お部屋で話されたら……」

 レンさんの言う通りだ。わたしは2人を招き入れる。

「ミク。一緒に旅をしてる仲間。ルカスとキッポ」

 簡単に紹介したら、ミクは見る見るうちに明るい表情になった。

「フォクスリングさん、ですよね?」

「ボク? そうだよ。フォクスリングのドルイド、キッポって言います。宜しくね?」

「お会い出来て光栄です。お話の中だけでしか、知識がありませんでしたから。そちらの方も、姉と御一緒されているんですね?」

「ルカスと申します。数奇な縁から、姉上と旅を共にしております」

「姉に代わり、御礼申し上げます。ようこそいらっしゃいました」


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