14:妹と
「――わあ」
声が出た。懐かしいわたしの部屋。出窓のぬいぐるみたち。フリルのカーテン。大きめのベッド。冒険譚の詰まってる本棚。――変わって無いのね。ちゃんと掃除をしてくれていたようで、キレイに整えられていた。
「入って。恥ずかしいけど」
ルカスとキッポに勧めた。
「広いお部屋なんだね。ボクのウチぐらいありそう」
「さすが資産家の娘、ってところか?」
「広いとね? 逆に。寂しい時もあったわ。ここを出るまでは」
パタリとドアを閉じて、息を付いた。続けて、
「人恋しいのは小さなころからだけど、師匠の元へ行って、旅に出て。独りでいるのにも慣れて来たわ。今は、ルカスとキッポがいてくれるけどね」
ルカスが言った。
「人は。独りで産まれ、独りで消えて行く。その間に何を残せるか。そこが一番大切だとオレは思うぜ」
「ドルイドの教えにもあるよ。『葉は朽ちて土となり新たな生命を産み出す』って言うの。それまでにどれだけのことを成せるかが、大切なんだって」
わたしはうつむきつつ微笑んだ。
「ありがとう。その通りね。わたしもどこかでふっ切らないといけないって。――分かってはいるんだけど。こうして自分の部屋に戻っても、まだうじうじしちゃう」
でもことばの終わりには、ルカスとキッポの顔を、ちゃんと見られた。2人とも納得の表情を浮かべてる。
「あ、遅れちゃったわね。好きなところに座って」
ルカスはテーブルの椅子に、キッポはベッドに腰かけた。わたしは机の椅子に座る。
「うわあ。柔らかいベッド。こんなの初めてだよ」
「本当は柔らかいのって、腰に良くないらしいんだけどね」
一息ついたルカスが、
「さて。どうする? さっきの話だと、兄さんには会い辛そうらしいが」
「とりあえず、ミクの部屋まで行ってみるわ。紹介したいし」
ノックが聞こえた。わたしはビクッとなる。そしてドア越しに、
「レンでございます。ミク様をお連れ致しました」
わたしはそれを聞いて、思わず立ち上がってしまった。急いでドアに向かう。そーっと開けた。そこにいたのは、わたしよりずっと長い髪を浅葱色に染め、ツインテイルにしているミクだった! にこやかなレンさんは、お茶のセットを持って、わたしたちのことばを待っている。ミクは恥ずかしそうに、もじもじしているだけだ。
「姉さん……」
細くつぶやく。わたしはまた、泣きそうになって来た。
「ミク! 会いたかったよお!」
わたしの記憶に残っているミクの姿は、もうそこには無かった。背も伸びている。髪型は相変わらずだったけど、染めているなんて。でも、それが似合う年頃になったのね。
「帰って来てくれたの? 姉さん?」
そのことばの後でレンさんが、
「ここでお話ししていると、誰かに見られてしまいますわ。リムノお嬢様。お部屋で話されたら……」
レンさんの言う通りだ。わたしは2人を招き入れる。
「ミク。一緒に旅をしてる仲間。ルカスとキッポ」
簡単に紹介したら、ミクは見る見るうちに明るい表情になった。
「フォクスリングさん、ですよね?」
「ボク? そうだよ。フォクスリングのドルイド、キッポって言います。宜しくね?」
「お会い出来て光栄です。お話の中だけでしか、知識がありませんでしたから。そちらの方も、姉と御一緒されているんですね?」
「ルカスと申します。数奇な縁から、姉上と旅を共にしております」
「姉に代わり、御礼申し上げます。ようこそいらっしゃいました」




