12:力を借りて
もう一度、梅酒をちびりとやってから、
「とりあえず、実家の近くまで行ってみるわね。うまやばんさんと話が出来たら、何とか中に入れるかもしれないし」
4杯目の『ハルサ桜』を飲んでるルカスが、
「それがいい。オレたちが邪魔なら、控えてる」
「ううん。一緒にいてくれた方がいい。両親はともかく、兄さんと妹にはちゃんと紹介したいもの」
キッポのグラスの中で、氷がカランと音を立てた。キッポは、
「ボクでもいいの?」
「どうして?」
「だって、ボク、フォクスリングだよ? 悪い印象になっちゃって、リムノが困るんじゃないかなって」
「そんな差別をしたら、わたし絶対に許さない。兄さんや妹は、そんな偏見を持ってないけどね」
少しだけ、ココロに穴が開いた。前も感じた疎外感。キッポも『人間』の中では、そんな寂しさを持っているのよね。
「そろそろ具体策を考えるとしよう。リムノ。どうしても両親には会いたくないのか?」
改めて訊かれて、わたしの視線は下に。店内の通奏低音のようなざわめきの中、それでも少しずつ話した。
「――ここまで来ると。会わなきゃいけないかな、とも思うわ。だけど会ったら、ケンカになっちゃうかもしれない。正直に言って、それが……、一番怖いの。もう、後戻りが出来ないことになるから」
ルカスもキッポも、黙って聞いてくれている。
「自分自身でもね? ここまでのわだかまりがあるのが、――何て言ったらいいかなあ。意固地になり過ぎてる? そんな感じには捉えられてるのよ。いくら嫌おうと憎もうと、わたしを産み育ててくれた、両親だもの。何となく分かってもらえる?」
キッポが、
「大事な存在だからこそ、失いたくないんだね。分かるよ」
ルカスも一気に飲み干すと、
「オレも、ここまで生きてるうちに多くのものを手にし、失った。リムノの気持ちは良く分かる。でも、縁起でも無いが、会えるのは生きているうちだぞ? 師匠の墓前に立ったリムノなら、言うまでも無いかもしれんがな。おーい! お代わり!」
梅酒を舐めて、
「ルカスの言う通りね……。ルカスとキッポの力、貸して、もらえ、る?」
最後は消え入るように、胸の奥から振り絞って言った。
「もちろん。いいよ」
「せっかくの帰郷なんだ。胸張って帰れよ、な?」
わたしはこくりとした。
「ありがとう。ゴメンね」
「よし。そうと決まれば、行動に移そう。もう少し話して一晩泊まり、明日の朝、実家に行くことにしようぜ。いいか? リムノ?」
「――うん」
少しだけ。少しだけだけど、ココロに空いていた隙間が、埋まった気がした。ルカス、キッポ、ありがとう。




