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12/19

12:力を借りて

 もう一度、梅酒をちびりとやってから、

「とりあえず、実家の近くまで行ってみるわね。うまやばんさんと話が出来たら、何とか中に入れるかもしれないし」

 4杯目の『ハルサ桜』を飲んでるルカスが、

「それがいい。オレたちが邪魔なら、控えてる」

「ううん。一緒にいてくれた方がいい。両親はともかく、兄さんと妹にはちゃんと紹介したいもの」

 キッポのグラスの中で、氷がカランと音を立てた。キッポは、

「ボクでもいいの?」

「どうして?」

「だって、ボク、フォクスリングだよ? 悪い印象になっちゃって、リムノが困るんじゃないかなって」

「そんな差別をしたら、わたし絶対に許さない。兄さんや妹は、そんな偏見を持ってないけどね」

 少しだけ、ココロに穴が開いた。前も感じた疎外感。キッポも『人間』の中では、そんな寂しさを持っているのよね。

「そろそろ具体策を考えるとしよう。リムノ。どうしても両親には会いたくないのか?」

 改めて訊かれて、わたしの視線は下に。店内の通奏低音のようなざわめきの中、それでも少しずつ話した。

「――ここまで来ると。会わなきゃいけないかな、とも思うわ。だけど会ったら、ケンカになっちゃうかもしれない。正直に言って、それが……、一番怖いの。もう、後戻りが出来ないことになるから」

 ルカスもキッポも、黙って聞いてくれている。

「自分自身でもね? ここまでのわだかまりがあるのが、――何て言ったらいいかなあ。意固地になり過ぎてる? そんな感じには捉えられてるのよ。いくら嫌おうと憎もうと、わたしを産み育ててくれた、両親だもの。何となく分かってもらえる?」

 キッポが、

「大事な存在だからこそ、失いたくないんだね。分かるよ」

 ルカスも一気に飲み干すと、

「オレも、ここまで生きてるうちに多くのものを手にし、失った。リムノの気持ちは良く分かる。でも、縁起でも無いが、会えるのは生きているうちだぞ? 師匠の墓前に立ったリムノなら、言うまでも無いかもしれんがな。おーい! お代わり!」

 梅酒を舐めて、

「ルカスの言う通りね……。ルカスとキッポの力、貸して、もらえ、る?」

 最後は消え入るように、胸の奥から振り絞って言った。

「もちろん。いいよ」

「せっかくの帰郷なんだ。胸張って帰れよ、な?」

 わたしはこくりとした。

「ありがとう。ゴメンね」

「よし。そうと決まれば、行動に移そう。もう少し話して一晩泊まり、明日の朝、実家に行くことにしようぜ。いいか? リムノ?」

「――うん」

 少しだけ。少しだけだけど、ココロに空いていた隙間が、埋まった気がした。ルカス、キッポ、ありがとう。


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