11:故郷の味
居酒屋の一角を陣取り、わたしたちはメニューを広げた。
「驚くほど酒の種類が多いな。オレはとりあえず、この『ハルサ桜』にしてみる」
「それ、兄さんのお気に入りだったわ。本当に『桜のお酒』なんだって。今は季節が違うから、どのくらい美味しいか分からないけど。わたしは梅酒にするわ。はい、キッポ」
メニューを手渡す。
「ボクはね……。うん。リムノと一緒で梅酒がいい」
「よし。食うのはどうする? キッポ、好きなの選べ」
「じゃあ、『ニンニク丸揚げ』にする」
相変わらずね、キッポ。キワモノを選ぶ目は、どこでも発揮されてる。
「すごく臭いわよ? いいの?」
「うん。臭いの美味しいもん。リムノ、食べる? ボク、食べたい」
「いりません」
またもやいつものやり取り。――それがココロ暖まるほどに、わたしにとっては嬉しいことだ。
「キッポ。オレにもくれ」
受け取ったルカスは、
「妥当な線で行くか。『フライドポテト大盛り』で、テキトーに食おうぜ」
「わたしも頼みたい」
メニューを改めて目の前に広げる。そうねえ。美味しくってみんなで食べられるもの、か……。じゃあ、小さいころから好きだったのにしよう。
「わたし、『カリカリピザトースト』にする。美味しいのよ、これ。小さい角パンがピザみたいになってて、出来立てがたまらないの」
キッポの耳が縦にぴくぴく。待っててね。故郷の料理をたっぷり召し上がれ。
次々と運ばれて来る、お料理とお酒。どれもわたしにとっては、泣きたいくらいに懐かしい味。前にルカスがちらっと言ってた、『おふくろの味』って、こんなことを言うのかもしれない。飲んだり食べたりしながら、そんなことをふと思い出した。
「ねえ、リムノ?」
キッポが『アスパラベーコン巻』を頬張りながら訊いて来た。
「うん?」
わたしは梅酒をちびり。
「お兄さんとは、わりと早く会えるんじゃないかなあ」
「どうして?」
「だって、うーん……。あんまりよく知らないんだけど。選挙っていろんな場所でお話しして、選んでもらうんでしょ? そこに行けば、家まで行かなくても会えるんじゃないかなあって。ちょっと思った」
なるほど。キッポらしい。
「そうね……。街頭演説で会える可能性もあるけど。出来ることなら、静かな場所で、ちゃんと会いたい。叶わない願いかもしれないけど」
耳まで紅く染めたルカスが、
「ここまで来たんだ。実家に寄ってみるのが、一番だとオレは思うぜ?」
真剣に言ってくれた。
「それはそうなんだけど。――うーん。やっぱりそれしか手が無いかなあ。『瞬間移動』の魔道が使えれば、簡単に中に入ることが出来るんだけどね」
いまのわたしには使えない、高度な白魔道。魔道の額冠がリミッターカットされれば、もしかしたら使えるかもしれないけど、どうやらこの額冠は、本当に危機にさらされた時じゃないと、秘めている力を引き出すことが出来ないみたいなんだもん。ゾンビーたちと戦った時は、本当の危機と判断されなかったのかしら? わたしにとっては、かなりの危機だったんですけど。




