表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/19

10:帰郷して

 馬車から降りた。揺れがキツかったせいか、ちょっとくらくらする。でも、陰っていた雲が晴れて、オヒサマが顔を覗かせた。少し肌寒いけど、もう秋も終わりに近いんだもんね。当然かなあ。

「大きな街だねえ。人間がたくさんだ」

 キッポが感心してる。そうね。改めて帰ってみると、わたしでさえ大きいって思う。自分が生まれ育った街なのにね。

「何か、やたらとポスターが貼られてるな」

 商店の壁や建物の塀に、ルカスの言う通りポスターが貼られている。そっか。

「ちょうど議会の選挙が近いのね。それで貼られているんだと思うわ」

 わたしの故郷、ハルサでは、議会制の政治が行われていて、任期は3年。秋の終わりには選挙戦で、大騒ぎになる。街の中央部へ進んで行ったら、立候補者が大声で演説していた。聞きたくも無いけど。

「ルカス、リムノ。ボク、おなか減った」

「そうだな。遅い昼メシだけど、食ってからにするか。いいか? リムノ?」

「ん? うん」

 歯切れの悪いわたし。だって……。

「どうした?」

 わたしは1枚のポスターをゆっくり指差した。

「――あれ。わたしの兄さんなの」

 信じられない。いくらなんでも、立候補させられていたとは。わたしは、両親に限り無い嫌悪感を抱いた。恥をかかせるのもいい加減にして欲しい。立候補するなら、父がすればいいのに。それを、こともあろうに兄さんを使うなんて……。

「『差別を撤廃し、新たな風を吹かせます』、か。キャッチはいいな。カッコいい顔立ちに似合ってる」

「わたし……。かわいそうよ、兄さんが」

「リムノ。それでも会いたいんでしょ? お兄さんと妹さんに」

「――うん、うん」

 キッポの言う通り。どんなであれ、帰郷したんだもの。会いたい気持ちは計り知れないほどにある。

「とりあえず。食ってからにしようぜ? その方がワンクッションあって、気持ちの整理も出来るだろ」

「ありがとう。そうね……。そうしましょっか。キッポも、おなかすいてるみたいだしね。行きつけだったお店があるの。そこでもいい?」

 わたしは、ちょっとだけ細い声で訊いた。

「任せた」

 簡潔なルカスの返事。ありがとう。気遣ってくれてるのね。

 わたしたちは人混みの中、さらに街の中央部へ向かった。でも……。目指した店はシャッターが下りていた。

「閉店しちゃったんだ……」

 その事実が、長い間故郷を離れていたわたしを打ちのめした。

「ここのパスタ、美味しかったんだけど」

「そうなんだ。食べてみたかったなあ」

 こんな時、気軽なキッポのことばが身に沁みる。ルカスも、

「じゃあ、オススメの店が他にもあれば教えてくれ。どこでも構わないぜ?」

落ち込みかけてるわたしの気持ちを察したように、明るく言ってくれた。ホントに仲間の存在がありがたい。

「じゃあね? ちょっと早いけど居酒屋でもいい? 兄さんによく、連れて行ってもらったお店なんだけど」

「酒があるなら、オレは大賛成だ」

「おなか減ってるから、どこでも大丈夫だよ」

「ありがとう。そこにしましょうか。安くて美味しいの」

 ショックは大きいけど、ルカスとキッポがいてくれる。わたし。それだけでも幸せだって思わなきゃね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ