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47.ティチンの戦い 1

「今日からは貴様も戦車長だな、ヴォル曹長」

「中隊長と離れ離れになるのは寂しいですが……頑張りますよ」

「女々しい事を言うんじゃない……というか同じ小隊なのだからそこまで離れないじゃないか」

「そうなんですけどね……戦車長の経験なんて殆ど無いので正直不安です」

「仕方ない、上の命令なのだから。それに私を見ていたから何とかなるだろう」

「まあ……やりますよ」



共通暦942年7月、東方軍集団へと送られたエルンストら第2装甲連隊は部隊の再編が行われ、アウレール・ヴォル曹長は戦車長となった。激しい戦闘によって兵や戦車の損耗が激しく、養成課程を受けていないアウレールさえも戦車長とならざるを得なかったのだ。


しかしアウレールが戦車長になってからも変わらず、エルンスト率いる精鋭の第2中隊は南方での戦闘と変わらず共和国同盟軍を恐怖の底へと落としていたのであった。

そんな中、丁度アウレールが戦車長になって2週間後、第2中隊第1小隊はジェシュフ市近郊の村ティチンの外れで休息を取っていた。



「ふぅ……今では代用コーヒーさえも貴重品だからな、味わって飲まなければ」

「そうですね……しかし僕の戦車、早く直りませんかね」

「自走してここまで来れたのだからまだマシさ、第2中隊でも何両放棄車両が出たか……」

エルンストはティーゲルの上で支給された煙草をふかしつつ不味いコーヒーを啜る。

「第1小隊の戦車ももうティーゲル3両しか残っていませんしね……まあまだ戦車が残っているだけマシですよ。南方の戦車大隊の中では戦車猟兵に編成し直した隊もあるらしいですよ」

「そうだな……SPRSS師団はまだ恵まれているからな、感謝だ」

「しかし戦車の修理の為とはいえこんなに休息を取れるとは、いつぶりですかね……」

「そうだなぁ……そうだ、お前も一本どうだ?」

「いいんですか、貴重なのに」

「どうせ死んだら吸えないんだ、ちまちま貯めるよりも一気に吸った方がいいからな」

「じゃあ有難く頂きます」


戦場の中でのんびりとした時間が流れる。紫煙は複雑な模様を描きながら青い空へと消えていった。



「……んっ?何か音がするな……」

「これは……エンジン音でしょうかね。この辺りで部隊の移動の予定はありましたっけ?」

「私は聞いていないがな……村の中心の方からだろう、少し見てくる」

エルンストはそう言うと、中心部へと向かった。



「あの戦車は……同盟軍かっ!」

エルンストは廃屋の陰から双眼鏡を覗いていた。

「奴らは何故ここに……まさか本隊がいる市内を回り込むためか?」

彼にはそれ以外の理由が考えられなかった。

「不味いな……と奴ら停止したな。……これは好機だな」

エルンストはニヤリと笑みを浮かべ、戦車へと急いで戻った。


「アウレール、音は同盟軍だっ!奴ら、ジェシェフ市を迂回するつもりだ、幸い奴らは村の中心で停止した。仕掛けるぞっ!」

「と言っても僕の戦車はまだ修理終わってませんよ……もう1両も修理中だし」

「仕方ない、私のティーゲルだけで仕掛ける」

「ふふっ……面白そうですね」

「折角だしアウレール、君が砲手をやるか?」

「えぇ……是非とも」

「君と組むのも久しぶりだな……楽しみだ」

「私もです」

エルンストのティーゲルは唸りを上げて前進を始める。

その姿はまさに虎であった。



1分ほどで完全に停止ししている共和国同盟軍が彼らの視界に入る。

「あそこまで警戒なく休息を取るとは……奴ら、完全に勝った気でいますね」

「そうだな……よし、では奴らに教育してやるか」

その瞬間、ティーゲルの4ゾル砲は放たれた。


ティチンの戦いの始まりである。


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