48.ティチンの戦い 2
「ふう……もう少しでポーレンを解放できるな」
「そうですね、バイエルン王国軍も押してると聞きますし、戦争が終わるのも時間の問題でしょう」
ウカイネ共和国軍第4義勇騎兵連隊連隊長は紅茶を飲みつつ、部下と談笑していた。
「しかしこの村はいい所だ、自然が美しい。小鳥の囀りも聞こえてくる」
「戦争が終わったら一度ゆっくりと訪れてみたいですね」
「そうだなぁ……さて、私は少しばかり眠らせて頂こうか」
「ずっと戦場でしたからね……ゆっくりとお休みください」
そうして師団長が眠りにつこうとした瞬間、爆発音が連続して鳴り響いた。
「な、何事だ!」
師団長は慌てて飛び起きて叫ぶ。
「お、おそらく戦車の爆発音です。村の東の方からでしょうか」
「敵襲かっ?」
「お、おそらく」
また爆発音が響く。
「総員戦闘態勢に入れっ!それに急いで東方に展開中の第5戦車連隊と現状の確認をっ!」
「はいっ、ええと……敵は1両のティーゲルです。現在戦車5両が戦闘不能状態にあり……こっちに向かってきていますっ!」
「ふん、驚かせやがって。どうせ奴は一両だ、村内の装甲戦力を用いて支給撃破せよ」
「あ、あとそれと……敵は戦車殺しのティーゲルです」
「な、なんだとっ!」
その瞬間司令部の至近距離で爆発が起き、連隊長は吹き飛ばされる。
数十秒後、やっとの思いで瓦礫から這い出た彼が目にしたのは、自分へ向かってくる一匹の虎だった。
「ふむ、予想以上に上手く事が運んだな」
「そうですね、もう10両以上の戦車、それにかなりの数の装甲車や砲を殺りましたし」
エルンストらは村中央部へと戦車を走らせていた。
「よし、村内の敵を掃討するぞ」
「そうですね……」
瞬間ティーゲルの側面で鈍い鋼の断裂音がする。
「何だ!」
「側面の建物の中に敵戦車がいる、急いで砲塔を回転させろ」
「了解っ!」
ティーゲルの化け物のような4ゾル砲が鈍い音をさせながら敵戦車の方向へ回転する。
「撃てっ!」
化け物の口から弾が放たれる。それは同盟軍の戦車の前面を貫き、乗員を砕きながら弾薬庫へ着弾する。そして爆発音が響いた。
「よし、撃破出来た……が履帯を切られてしまったな」
「さっさと放棄して師団の本隊に合流しましょう……修理中の戦車は使えませかね」
「取り敢えず向かうか、しかし敵と出会わない事を祈る」
「そこはかの戦車殺しの中隊長殿がいれば安心ですよ」
「アウレール、無茶を言わないでくれ。私だって長らく戦車にしか乗ってないのだから」
そう言いつつも、エルンストはニヤリと笑いながらティーゲルの機関銃を取り外し、担ぐのであった。
「結局敵に遭わなくて済んだな」
「そうですね……ってなんでちょっと落ち込んでるんですか」
「いや、まあ……歩兵の時を思い出してな」
「相変わらずですね……まあ幸い1両は修理も完了したそうですし、さっさと本隊に合流しましょう」
「そうだな、では行くか」
1両のティーゲルの中に15人が無理やり乗り込む。
「せ、狭い」
「我慢してください、中隊長」
満員のティーゲルは何とか動きだす。そして敵に遭遇しないよう大きく迂回しながら、本隊がいるジェシェフ市へと向かった。
3時間後、エルンストらが合流したダス・ライヒ師団はティチン村周辺へと進軍、迎撃態勢を整えていた共和国同盟軍との激しい戦闘に入る。
結果ドイチュラント側は3両程ティーゲルを損失するも、余りにも多大な損害の前に戦意を失った共和国同盟軍は陽が沈む頃には撤退を完了した。
しかし翌日、ウカイネ共和国第3艦隊による激しい空爆作戦がジェシェフ市及びその周辺で行われ、ダス・ライヒ師団を含めたドイチュラント軍も付近から撤退する事になったのであった。
この戦いでエルンストは合計27両もの戦車を撃破、1週間後には総統から直々に勲章を授与する為、彼に総統官邸への出頭命令が下った。
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