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翌梨リサは欲深い  作者: 夏蹴礼
第一章 欲部會(よくぶかい)
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●大和先輩引き取ります

「女子生徒からの被害届と直談判か?」

「ちょっと先生、怖いこと言わないで下さいよ。はい、開いてますよ、どうぞ!」

「お前が返事をするな!」


「失礼します」

 ドアが開くと、翼の無い天使……翌梨リサが立っていた。

「大和先輩を引き取りに来ました」


 時刻は一時限目が終わった頃だ。

「大和、どうやら年貢の納め時のようだな」

「先生、合掌しないで下さいよ」


「勘違いしないで下さい」

 リサが机に置いてある反省文を取ると、豪快に破り捨てた。

「な、何をする!」

 これにはさすがの先生も驚いた。


「反省なんて無意味です。大和先輩をわたしに一任させていただけませんか?」

「なんだと?」

「このままでは、堂々巡り。先輩は何度も今回のような過ちを繰り返します。その内、本当に犯罪に手を染めるかもしれない……それほどに、先輩のスパッツへの愛情は深い」


「確かにその通りだ」

「いやいや、俺だってさすがにそこまでは……しないと思いますよ」

「そこは断言して欲しい所だ。しかし、翌梨……お前に大和を改心させることができるのか?」

 俺を無視して、二人は話を進める。


「わたしにはできる……いえ、わたしにしかできません!」

 ツリ上がった目に、強い意志が宿る。

「よし、大和は翌梨に任せる!」

「大岡越前も驚く名裁き。ありがとうございます」


「ええっ! いいんですか?」

「翌梨が言うのだから、間違いはないだろう」

 何たる絶大な信頼感。

 これまた後で知る情報になるが、リサの成績は学年で単独首位。


 入学式では、新入生代表の挨拶も務めた。

 運動神経も抜群でありとあらゆるスポーツ、武道に精通している。

 そのため、運動部からの勧誘が後を絶たない。


 それでいて奢ることなく、誰にでも隔たりなく接する。

 一見クールに見えるが、熱い一面も持つ明るい性格。

 男子はもちろん、女子からの人気も高い。

 さらにはクラス委員長も務め、生徒だけではなく、教員からの信頼も厚かった。


 容姿端麗、頭脳明晰、運動神経抜群、性格良しと非の打ちどころのない完璧超人である。

 もちろん彼女の一番の魅力は、スパッツが似合うことであることを強調しておきたい。

 そんな訳で、俺の千の言葉よりも、リサの一言の方が効果抜群なのだ。


「よし!」

 パンッと先生が大きく手を鳴らすと同時に、二時限目の予鈴が鳴り響く。

「これにて解決! 二人とも学生の本業である勉学に励め!」

 先生は満足そうにパイプ椅子に座ると、三本目の煙草に火をつけた。


「ほらほら、早く行かないと授業に間に合わないぞ!」

 俺は無事に生徒指導室から生還することができた。

「いや~、助かったよ。ありが……」


「放課後、歴史資料室に来て下さい。詳しいことはそこで話します」

 俺の言葉を遮り、彼女は足早に去って行った。

 その後、俺の校内における立場が、前以上に落ちたことは語るまでもない。


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