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翌梨リサは欲深い  作者: 夏蹴礼
第五章 変わりゆく世界
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●結果発表

「学校側に何の相談も報告せず、自分たちだけで危険かつ派手な演出を行った。校則に従えば、懲罰すべき問題だ」

他の生徒たちが投票している間、俺たち四人は鬼瓦先生と生徒指導室にいた。


「先生が代表して怒るんですか? 何か雑用係みたいですね」

いつものように睨まれてしまう。

「ここでお前たちに何の処罰も与えなければ、それこそ学校は何でもアリの無法地帯になってしまう」


「大人って体面を気にしないといけないから大変ですよね」

「いい加減、その饒舌な舌を引っこ抜いてもいいか?」

「あんまりおいしくないと思いますよ」

「誰が食べるかっ! まったく、調子が狂う……」


鬼瓦先生がポケットから煙草を取り出して、再びポケットにしまった。

「あれからすぐに臨時の職員会議が行われた」

もちろん議題は俺たちのことだ。


「本来、懲罰すべき問題だが、学校中から得た圧倒的な支持を無視することは、自由を謳ううちの高校の教育方針に背く。よって、教師陣で討議した結果……今回は何もなしだ」

「ってことは?」

「解散だ。各自、自分の教室へ帰れ! 私はお前たちに厳重注意をした。わかったな」


「口裏合わせだなんて……先生、お主も悪よのぉ」

 「いえいえ、大和様ほどでは……って、帰れっ! さっさと帰れっ!」

 意外と先生はノリがいい。

現代における越後屋と悪代官とのやり取りである。


「先生」

「翌梨、お前まで何か言う気か?」

「わたし……立候補を取り下げます」

「ちょ、ちょっと、ちゃんリサ、どういうことだよ!」


「すみません、神居先輩。やっぱり、わたしに生徒会長は荷が重すぎます」

「ボ、ボクはそうは思わないけど……」

繭の言う通りで、リサなら立派な生徒会長になれる。


「逃げるのか?」

「ええ、そうです」

司の挑発に全く乗る素振りを見せない。


「ふざけるなよ。お前の覚悟はその程度のものだったのか!」

司が怒る理由もわかる。司は司なりにリサを評価していた。好敵手、ライバルと認めていたのだ。その相手が理由も述べないで、負けを認める。こんな不戦勝、司は望まない。


「翌梨を応援してくれた生徒には何て説明する? 理由次第では、簡単に認める訳にはいかないだろ」

鬼瓦先生も神妙な面持ちで、リサを見る。

「ちゃんと理由を話せ。その責任がお前にはある」


「そうですね……ふぅ……どこから話せばいいのか……」

リサはポツリポツリと話し始めた。


佐久間勇気が自分の父であること。

父親が創った仕組みを壊すことが、自分にできる父親への精一杯の反抗であったこと。


「大和先輩に言われたこと……全部当たっているんですよね」

「共同の学校改革ショーだなんて、おかしいと思ったんだ。やっぱり大和が裏で糸を引いていたか」

先生はリサの父親が佐久間勇気だと知っていたが、司と繭は驚いていた。


「黙っていて、すみませんでいた」

「言いたくないことなんて、人にはいくらでもある。だけど、ちゃんリサがそんな不純な理由で生徒会長を目指していたなんて残念だ」


「それは本当に申し訳ありません。勝負はわたしの負けです。約束通り……」

「不戦勝なんだから、約束もない。それに不純な動機しかない奴を生徒会に入れる訳にはいかない! そうだろ、繭っち……いや、如月副会長!」


「そうだね……ええっ! ボ、ボクが副会長? 司を裏切ったのに?」

「不満か?」

「そ、そんなことはないよ。ただ、外されると思ってたからさ……」


「繭っちはあたしにとって最高の相棒だ。そんな相棒を小さな私情で手放すようなことをあたしがすると思うか? あたしはしない!」

司がリサを見る。

「あたしは繭っちと共に、佐久間勇気を超えるような生徒会を創る」


「わたしは……」

「牙の失ったちゃんリサに、何の脅威を覚えない。せめて、あたしに興味を湧かせるくらいは頑張って欲しいね」

「神居先輩……」


「もう会長だけどね! さぁ、繭っち行くぞ! 厳しい戦いになる。相手はあの天才、佐久間勇気だ。覚悟して、あたしの横を一緒に歩け!」

「後ろじゃなくて、横でいいの?」

「不満か?」


「嬉しいよ! ボク頑張るから任せてよ!」

司も繭も今回の役員選挙で大きく成長した。

「大成はどうするの?」


「えっ?」

不意に繭から声をかけられた。

「ダイダイが良ければ、ポディションは空けておく」

「いや~、俺なんかダメだろ」


「謙遜は日本人の美徳だが、あたしは嫌いだ。ハッキリ言おう。ダイダイ、あたしはお前が欲しい。是非、あたしたちと共に新しい生徒会を創ろう」

「ボクも大成と一緒に生徒会を創りたい」

「人間、頼られる内が華だぞ」

鬼瓦先生が面白そうに笑っている。


「すげ~、嬉しいよ。一時期はスクールカースト最底辺にいたのがウソみたいだ」

「そんなこと気にするな。他の役員や生徒にはあたしからちゃんと説明する。ダイダイは埋もれていていい生徒じゃない」

「ボクもそう思う!」


「嬉しいお誘いだけど、今回は止めておくよ」

「なんでだ?」

「いや、ほら、俺って永遠の旅人、風来坊じゃん? 役職や肩書とは無縁なんだよ。でも、俺がこう言えるのは、お前たちなら安心して生徒会を任せられると思っているからだぜ」


「当たり前だろ。べ、別にダイダイがいなくても、問題はない。寂しくなんてない!」

「何かあったら、相談してくれよ。力になるからさ」

「そんな事態に陥ることはない! もう帰るぞ、繭っち!」

「ま、待ってよ司~」

この朗報はすぐに校内放送され、あっという間に新生徒会役員が決まった。


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