●無差別スパッツテロ
連行された先で、激しい尋問が俺を待っていた。
しかし、夢のためにも、ここで屈するわけにはいかない。
「この学校に『スパッツを履かせてはならない』なんて校則はない! 校則とは学校の法律です。教師とは校則を司る聖職者です。その教師が校則を順守しないなんて言語道断ですよ!」
何度も読み込んだ生徒手帳を見せつける。
「複数の女子生徒に無理やりスパッツを履かせた。それはどう説明する?」
数学兼生活指導部を担当する教師、鬼瓦雫。
美人なのだが、氷のように冷たい表情や言動で生徒たちから恐れられていた。
「あれはスパッツ布教活動の一環です!」
「無理やりスパッツを履かせることがお前のやり方なのか?」
「履けば必ずスパッツの素晴らしさがわかる。論より証拠です。そのためには無理やりだとしてもスパッツを履いてもらわなくてはならなかった!」
「革命には犠牲は必要とは、テロリストの常套句だな」
「違います! 俺はただ……」
「そんなセクハラ生徒の言い訳なぞ、聞く耳持たぬわ!」
後に語り継がれる無差別スパッツテロ。
俺からすればスパッツ布教活動であるから、テロリスト扱いは心外である。
あの後、俺は可能性を指し示すため、白昼堂堂、すれ違う女子生徒に次々とスパッツを履かせた。
その動きは光よりも早く、女子生徒たちはしばらくの間、自分がスパッツを履かされたことに気づかないほどの鮮やかさ。
禁断の秘術『タキオン・スパッツ・フュージョン』。
習得難易度は非常に高く、血反吐を吐きながら、毎日毎日、必死に特訓し続けた。
人体力学、行動心理学、マジックなど様々な学問を学び、人間の身体と心の動きを学ぶ。
自己鍛錬も怠ることなく、必要最低限の動きで最高のパフォーマンスを生み出す身体操作を会得する。
『彼を知り己を知れば百戦殆からず』。
常に自分と相手の動き、そしてスパッツのことを考え続けた。
手には無数のスパッツタコができ、スパッツマメが潰れる。
それに比例して、洗礼される思考と動き。
そして、ついに俺は人間の限界を超えた、禁断の秘術『タキオン・スパッツ・フュージョン』を会得した。
この力があれば、相手が誰であろうとスパッツを履かせることが可能である。
大いなる力には大いなる責任が伴う。
この技は禁術として、俺が生み出し、後世に残すつもりはない。
無理やり履かせるのは、俺のポリシーに反するため、今日まで日の目を見なかった。
使っていいのは、『信念を貫く時』、『大切な人を守る時』だけである。
今回は『信念を貫く時』に当たる。




