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翌梨リサは欲深い  作者: 夏蹴礼
第三章 闘球祭(とうきゅうさい)
26/54

●天下分け目の戦い

「よくここまで残ったね」

「えぇ、運に恵まれました。朝九時開始で、今は午後三時。如月先輩は関ケ原の戦いが何時間で終わったか知っていますか?」

「確か六時間ぐらいだったはず……今のボクらと同じだね」


「約束、覚えていますか?」

「もちろんさ。そっちこそ忘れていないよね」

「大丈夫ですよ」


「お互い正々堂々、勝負しよう」

「それは約束いたしかねますね」

 多少の操作はあったかもしれないが、本当に決勝戦で戦うことになるとは想像しなかった。


「いや~、どうよ今年の闘球祭は?」

「面白いことになってきたな。新聞部も気合いの入り方が違うよ」

「どっちが勝つと思う?」

「頭一つ飛びぬけているのは、二年の如月繭。あの長身から投げるボールから逃れるのは、男子でも難しい」


「じゃあ、順当に二年が優勝か?」

「いやいや、話はそう単純じゃない。一年……チーム・ザ・スパッツ。開会式でのパフォーマンスで生徒たちを一気に味方につけた。会場中の生徒たちが彼女たちの勝利を期待している。実力の方もリーダーの翌梨リサを中心に高いよ」


「おいおい、結局はどっちが勝つかわからないってことかよ」

「ああ。だけど、すんなり終わる戦いだとは思わないぜ」

 好き勝手に盛り上がる生徒たち。

 想像以上に混んでおり、俺もようやく場所を確保できた。


「ヘヘヘッ、これなら俺が紛れ込んでもバレはしない」

「バレバレだよ。盗撮魔君」

「つ、司? いつの間に? まさか俺を再び追放するつもりか!」

 俺のすぐ横に司がいた。


「こんな舞台でそんな無粋な真似はしないよ。せいぜい見つからないように気をつけな」

 周りも選手たちに注目していて、誰も俺や司に気づいていない。

「いよいよ始まる。大和はもちろん、ちゃんリサを応援するんだろ」


「そうなるのかな?」

「ハッキリしないな!」

「う~ん、どちらも応援したい感じだからな」

 そんなことを話していると、両チームがコートに入ってきた。


 ここで銚吠高校闘球祭のドッヂボールのルールを説明しよう。

 人数は一チーム七人で、最初にコート内に内野を四人、コート外に外野を三人置く。

 試合時間は五分間。延長戦は三分間。


 外野の復活ルールはなく、アウトになるとコートへ戻ることができない。

 ジャンプボールで最初のボールの所有権を決める。

 お互いの準備が整うと、勝負スタート!

 ワンバウンドしたボールに当たったり、顔面に当たったりした場合はセーフ。


 アウトになった内野は外野へ向かう。内野が残り一人になった時点で、最初の外野が内野に入る。

 簡略化するため、その他の細かいルールは決められていない。

 そのため露骨な時間稼ぎや無意味なパス回しなど、審判が臨機応変に対応する。


 選手たちが白線内に入る。

「さぁて、巨人退治でも始めますか!」

「「!!」」

「……巨人って誰の事?」


「あれっ? 如月先輩、もしかしてまた身長伸びました? 羨ましいな~」

 繭の体からどす黒いオーラが放出される。空気が張り詰めて、緊張感が高まる。

「周りは翌梨たちの勝利を希望のようだけど、ボクは空気を読むのが苦手なんだ……」

 繭から発せられる圧迫感、まとう威圧感が急激に増した。


「真っ先に潰してあげるよ!」

 それに一歩もひるまず、繭の敵意を真っ向から受け止めるリサ。

「確かにこのままじゃ、すぐにやられちゃいますね」

 両手の黒いリストバンドを外し、観客の方へ投げる。

 次に靴を脱いで、それも投げ捨て、裸足になる。


「おい、これなんだよ!」

「なんだなんだ?」

「このリストバンド重いぞ!」

「こ、こっちの靴だって!」

「い、一体何キロあるんだよ!」

 ざわめき出す観衆。


「つ、つまり翌梨リサは、これまでこんなハンデを背負って勝負していたってことなのか!」

「ウ、ウソだろっ!」

 格闘漫画にありがちな重りを外す演出。これが受けないはずがない。


「さぁ~て、体が軽くなりました」

 その場で軽くジャンプをする。もちろん、今までの試合は普通のリストバンドに靴を使用して、決勝戦直前に付け替えただけだ。


「さぁ、最高のショーをお見せしましょう!」

 観客に向かって挨拶をする。

 完全に空間を支配したリサ。ヒール化した繭。

 対極する二人の勝負が今、始まろうとしていた。


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