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翌梨リサは欲深い  作者: 夏蹴礼
第二章 生徒会を潰そう!
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●先生も人間だよね

「早速、鬼瓦先生に報告しますね」

 番号を聞いているのか、リサは先生に携帯電話で連絡を取る。

「先輩たちは隠れていて下さい」

 わずかばかりにへこんだスペースに、俺と岬を押し込める。


 男だとわかっていても、見た目は完全に女の子だ。

 野郎の肌がこんなにスベスベで、柔らかい訳がない。

 それにいい匂いまでしてきやがる!


「も、もう少し離れ……」

「どうなった!」

 激しい音と共に、ドアが開けられる。

 部室前でスタンバイしていたのではないかと疑う程、すぐに先生はやってきた。


 その音に驚いた岬がバランスを崩す。

 すぐさま、岬の背中に手を回して、隙間から出ないように強引にこちらに引き込む。

 結果、お互いの体は密着し合い、絡み合う。

 と、言うか、岬が積極的に密着して体を絡ませているように感じる。


「おかげさまで欲部會が正式な部として認め……」

「そっちじゃない!」

「ああ、先方は乗り気でしたよ。ご安心ください」

「そうか……うん……ゴホンッゴホンッ!」

 喉の調子を整える。


「他人と違うだけで、迫害を受けるなんて間違っている。本当の気持ちを我慢して、周りに合わせている不幸な生徒たちがどれだけいるか……そんな生徒たちが自分の素の姿をさらけ出せる居場所を創りたいと願った翌梨の気持ちに私は感銘を受けた」

「そうです。このご時世、短所を無理やり治すよりも、長所を伸ばす方がいいですよ!」


「うんうん、その通りだ」

「さすがは鬼瓦先生。生徒に歩み寄るなんて、教師の鏡ですよ」

「あ~、そうだな……」


「先生はわたしの考えに共感してくれた。決して餌に釣られたなんて思っていませんよ」

「もちろん、その通りだ……しかし、まぁ、お礼は受け取らないと相手に失礼だからな」

「わかっています」

「一応、確認しておきたいんだが……」


「相手はこの前話したわたしの知り合いのお医者様です。先生のことを話したら、大変興味を持たれまして……」

「うんうん、ついに私にも春がやってくるか」

「せっかく顧問になったのに、すぐに寿退社されてしまうのは、残念です」


「バッ、バカッ! 気が早すぎだ! そ、そんな……それもアリだな!」

 表情は見えないが、あの鬼瓦先生からは想像がつかないほど、ずいぶんと上機嫌である。

「それと、これは大和たちには絶対に秘密にするように!」

「任せておいてください。ありがとうございます、先生」


「ゴ、ゴホンッ! あぁ、翌梨。何か問題があった場合、すぐに私に連絡する。無茶なことはしない。お前のことだから大丈夫だとは思うが、その二点だけは必ず守るように!」

 先生が最後だけきちんと締めた。

「『何か』連絡することが決まったら、早急にするように」

『何か』を強調して、先生は出て行った。


「なるほど、先生に交際相手を紹介したのか」

 人が欲するものを与える意味がわかった。

 あの鬼瓦先生がいとも簡単に顧問を引き受けるとは……

 俺はまだ婚期が迫った女性の真の恐ろしさを知らなかったようだ。


「その通りです……って先輩、顔赤いですけど大丈夫ですか?」

「大丈夫だ、問題ない」

 後数分、先生が立ち去るのが遅ければ、どうなっていたかわからない。


「岬も顔赤いけど大丈夫?」

「だ、大丈夫だよぉ~」

 岬と目が合ったが、すぐに逸らされてしまう。


「体調管理には気を付けて下さいよ。せっかく楽しくなってきたのに!」

 リサの共感覚に気をつけながら、距離を置く。

「ああ、悪い悪い。少し窓でも開けようぜ」

 平静を保とうとしても、どうしても先ほどの感触が蘇ってしまう。


「あ~、涼しい!」

「本当に大丈夫ですか?」

 振り返ると、目の前にリサの顔がある。


「う、うわっ!」

「ビッ、ビックリした! 急に大きな声を上げないで下さいよ」

「そ、それはこっちのセリフだ。何しようとしたんだよ?」

「何って熱を測ろうとしただけですよ」


 焦る俺とは対照的に、リサは俺の額に手をつけた。

 柔らかい手のひらが、優しくおでこに触れる。

「う~ん……熱いですね。さっきよりも顔が赤い……」

「あ、あ~、今日はもう帰るよ」


「そうですね。岬もその方が良さそう。じゃあ、みんなで帰りましょ……」

「悪い、先に帰る!」

 後ろで何か聞こえたが、俺は聞こえない振りをして走り去った。


 スパッツ原理主義者として、最近俺はたるんでいるようだ。

 こんなことではスパッツ教を広めるなんて、夢のまた夢だ。

 気合いを入れ直すために、今日はスパッツお宝フォルダを解放しよう!


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