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翌梨リサは欲深い  作者: 夏蹴礼
第一章 欲部會(よくぶかい)
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●敵は生徒会にあり

「……どんな過程を経て、そんな過激な結論に至ったのか教えて欲しい」

「今朝のスパッツ布教活動……あの鎮圧には、生徒会の力が大きく関わってきます」

「生徒会が?」


「先輩が行動を起こすや否や、教師への通報、混乱する生徒の避難誘導と安全確保。適切かつ素早い行動には敬意を評します。結果、実行犯の先輩はすぐに取り押さえられました」

「まぁ、俺の後任は優秀な奴らばかりだからな!」


「これからわたしが望む学校を創るためには、今の生徒会は邪魔です。生徒会を潰して、乗っ取りましょう。天に二つの太陽が昇らないように、学校に二人の王は必要ありません。わたしが生徒会長になります」

「なるほど」


「かつての仲間と敵対することに抵抗がありますか?」

「ああ、心が痛むよ」

「嘘ばっかり。何か言いたそうですね」

 リサに嘘は通用しない話は本当のようだ。


「翌梨は目的のためなら手段を選ばない暴君みたいだよ」

「素直でよろしい。後学のために教えておいてあげましょう。わたしが正しいことをするのではない。わたしのしたことこそ正しいのです。ゆえにわたしの前に道はない。わたしの後ろに道ができる。わたしが天に背こうとも、天がわたしに背くことは許されない」


 生徒会を潰す。

 現役役員を知っている俺からすると、かなり大変な戦いになりそうだ。

「副会長はもちろん先輩です。馬車馬の如く働いて下さいね!」

「物理的に翌梨の尻に敷かれたいとは思うけど、役員って柄じゃないよ俺は……」


「わたしなら、スパッツに関する校則を創ることができますよ。全校生徒のスパッツ姿を見てみたいと思いませんか?」

「よしやろう! すぐやろう!」

 躊躇のない返事はやる気の証として、とらえてもらいたい。

 俺が会社の社長なら、即採用する人材である。


「欲望に忠実な先輩、わたしは好きですよ。今日はもう資料室には戻ってこないので、荷物は持って出て下さいね」

 リサはコーヒーカップなどをカバンに仕舞って、部屋のドアに鍵をかけた。


 歴史資料室とは違い、特別棟の目立つ場所に生徒会室はある。

 ここへ来るのは久しぶりだ。

 少し感傷に浸る俺とは違い、リサは躊躇なくノックをする。


「はい」

 返事とともに、すぐにドアが開く。

 見慣れた長身の女子生徒が出てきた。

「た、大成?」

「お、おう。久しぶり」


 彼女は生徒会副会長の如月繭きさらぎまゆ

 身長百八十五センチ。ショートカットの凛とした顔立ち。

 わがままボディで、胸は校内ビックセブンの筆頭である。


 服の上から大きな二つの山がそびえ立つ。

 黒タイツを履いて、スカートは長め。

 バレー部のエースで、俺とは幼馴染である。


「お久しぶりです。如月副会長」

「えっと……翌梨リサさんだよね?」

「覚えていてくれたんですか?」

 リサが歓喜の声を上げる。


「う、うん」

「生徒会長にご相談したいことがあるのですが、大丈夫でしょうか?」

「今日なら大丈夫だよ。ちょっと待っててね」

 繭が生徒会室の中へ消えて行く。


「緊張してるんですか?」

「まぁ、少しな」

「どうぞ」

 すぐに繭が戻ってきた。


 通された部室は整理整頓がいきわたり、俺がいた時より清潔感に溢れていた。

 一般教室の半分くらいの広さで、本棚やパソコン、コピー機などが壁際に並べられている。

 数人の役員が仕事をしており、俺に気が付くと驚き、一礼する。


「ほらほら、仕事仕事!」

 繭が手を叩くと、役員は再び目の前の仕事に戻る。

 運営がうまくいっている証拠である。

「さぁ、こっちに来て。会長もお待ちかねだよ」

 奥の個室に連れて行かれた。


「久しぶりだね、ちゃんリサ!」

 個室に入ると、生徒会長の神居司かみいつかさが高そうな黒い革製の椅子に座りながら、ヒョコッと顔を出す。

 身長百四十センチ。


 つるぺた童顔も手伝って、小学生にも見える。

 腰まで長く伸びた髪をツーサイドアップさせ、白ニーソを履いている。

 胸には生徒会長の証であるバッジが眩しく、光り輝いていた。


「お久しぶりです、神居会長。本日はお忙しい所、ありがとうございます」

「そんなにかしこまらないでよ。立ってないで座るといい」

「よう、司!」

 ジロリッと厳しい視線が俺に向けられる。


「……いたんだ」

「おいおい、そんな怖い顔するなよ」

 緊張をほぐすために、明るい声を出す。


「一時的だとは言え、こんな男の下で働いていたと思うと我ながら情けなくなる」

 俺が一年で生徒会長に就任した時、他の役員に司と繭もいた。

 結局、俺は解任され、司が生徒会長、繭が副会長になったのだ。


 重い空気が部屋を覆う。

「あ、あぁっ! 今日は何か相談があったんだよね? ボクは席を外そうか?」

 耐え切れなくなった繭が大きな声を張り上げる。

 三人で生徒会を切り盛りしていた時も、我が強い俺や司の調整役として活躍してくれた。


「何か問題でもあった?」

 司は着飾らないフランクさがある。

 あだ名で呼ぶフレンドリーな距離感。

 それでいて、圧倒的無比な存在感を示す。


 生徒会とは、学校のためではなく、生徒のためにある。

『教師ではなく、生徒の味方』……それが司のスタンスだ。

 その公約通り、常に生徒のために活動してきた。


 時には学校側とトラブルもあったが、それでも自分の主張を曲げずに押し通してきた。

 それを面白がった生徒たちが、司を『女帝』と呼び始め、その名が定着した。

 今では学校新聞でも使われ、本人も承諾した公認の呼び名である。


 容姿をカバーする圧倒的なカリスマ性を司は持っていた。

 王者の風格と呼べばいいのか、特別なオーラを纏っている。

 当然、生徒からの人気は高い。


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