●スパッツの女神
「ああっ! な、なんてことを!」
目の前には無残にも引き裂かれた月刊スパッツと割られたDVDの姿が……
「今じゃオークションでも手に入らない超激レアグッズ……俺の家宝が……」
宙を舞いながら、床に落ちていく雑誌の残骸。
俺は這いつくばりながら、必死にかき集める。
しかし、リサの長い足が妨害をする。
「もうそんなものいらないじゃないですか」
「どういうことだよ?」
「わたしがいるじゃないですか!」
見上げると、少し不機嫌そうに頬を膨らませたリサの顔が見えた。
同時にこれ以上ない、絶好のローアングル。
「!」
夕焼けが差し込み、オレンジ色に照らされた放課後の歴史資料室。
そこにたたずむ、絶世のスパッツ美少女。
あまりの美しさに、これ以上直視できない。
「俺の心が囁いている。君がスパッツの女神だと……」
「どうですか? 納得しました?」
「スパッツを履いた君の言葉は、天からのお告げに等しい」
「それではこれは破棄します」
「……その役目は俺にやらせてくれ」
「あとで回収するつもりじゃ……」
「そんな無粋な真似はしないよ。手伝ってくれ」
二人で紙吹雪のように小さく小さくちぎる。
ちぎるたびにこれまでの思い出が走馬灯のように浮かび、目に熱いものが込み上げてくる。
窓を開け、一陣の風と共にかつての相棒を外へ放出する。
月刊スパッツは風になった。
俺が無意識にのうちにとっていたのは『敬礼』の姿であった……涙は流さなかったが、無言の男の詩があった……奇妙な友情があった。
さよならは言わないよ。ありがとう、月刊スパッツ。君のことは一生忘れない。
「後悔しませんか?」
「別れも愛の形の一つさ。その代り……」
「何でしょう?」
「責任とれよ! 明日から放課後は毎日、スパッツ履けよ!」
「はいはい、わかりましたよ」
笑みを浮かべ、スカートの端を持ち、お辞儀をする。
「グハッ!」
両膝をついて、心臓を押さえる。
「ちょっとやだ! 大丈夫ですか?」
「大丈夫。心臓の鼓動スピードが限界を超えただけだから」
「それ大丈夫じゃないですよね?」
「それにここから見上げるローアングルのスパッツも最高だよ」
「ああ、いつも通りの先輩で安心しました」
リサは意外と嫉妬深いようだ。
彼女の前で、お宝ファイルを見るのはやめておこう。
「先輩の鼓動も収まったようなので、生徒会室へ行きますか?」
「なぜ?」
「先輩……話すならスパッツではなく、わたしの目を見て下さい」
「これは失礼。あまりにも素晴らしいスパッツ姿だったからさ」
視線をリサの組んだ足から、上にズラす。
「とりあえず、生徒会を潰しましょう」




