8.アベルの話とこの世界の事
アベルが喜んでくれてよかった。気を取り直して、この世界の事について教えてもらおう。
『アベルこの世界のことを教えてくれないか?』
『もちろんだよ。何が聞きたい?』
『何が聞きたいかもわからないんだ』
『そうかなら、この大陸の事、この国の事情と後は種族とか魔法とか生活とか、そんなことを全般的に話そう』
アベルはそう言うと話し始めた。
まずこの大陸は、ドゥーベラルト大陸と言って、そこには大小様々な国がある。
この森がある国は、ペラリルト国。この森は、そのペラリルト国の東の端にあるルクレツィアの森と言う。
この湖がある場所は、そのルクレツィアの森の中でもかなり深い場所になっていて、普段人が立ち入ることがほとんどないそうだ。
ごくたまに冒険者と呼ばれる人たちが入ることがあるらしい。と言うのも、この辺は強い魔獣が生息しているので、弱い冒険者たちは入ってこないのだそうだ。
この世界の種族には、人、動物、魔獣、妖精や精霊などの聖なるものが住んでいる。ちなみに人魚族は聖なるものに含まれるらしい。
魔法は、基本属性の水、火、風、土と準属性となる雷、氷、空間、治癒の魔法がある。
人の場合は、基本属性は1つの人が多くて、稀に複数属性を持っている人もいる。賢者や勇者と呼ばれる職業の人は、全属性だ。
魔獣は基本全属性が使える。同じく聖なるものも。
ただし、魔獣や聖なるものも魔法の属性について理解する知能がなければ、全て使うことはできない。
その基本特性とは別で、鑑定などのスキルというものが存在する。
魔法も、スキルも、レベルが存在していて、レベルが上がれば上がるほど、魔法は効威力広範囲に使えて、スキルは、熟練度が上がっていくそうだ。
鑑定だとレベルが低いうちは、情報の量も少ない。相手の方がレベルが高いと見れる情報が限られてしまう。俺たちがアベルの情報をほとんど見れなかったのはそういう理由だ。
この国の身分は、王族、貴族、平民に分かれていて、大多数が平民だ。平民の職業の中には、先ほど出てきた冒険者と言うものがあって、彼らは魔獣を狩ったり、ダンジョンに潜ったり、護衛や採取などの様々な仕事をする。
冒険者にもレベルがあって、レベルが高くなるとより強い魔獣の素材を求めて奥深い森に入ってくることがあるから注意が必要だと言う。
『他に知りたいことあるかなぁ?』
俺は考えて
『そうだなぁ。お金の事について知りたいたい』
と伝える。アベルは頷いて話し始めた。
まず、この大陸共通の通貨があって、ゼリルと言う。平民の平均的な月の稼ぎが100,000ゼリルで朝食が200ゼリル昼食が400ゼリル夕食が600ゼリルほど、それが平均的な金額だ。
食料は魚は海や湖から、肉は獣や魔獣の肉、野菜は育てている。塩は海塩と岩塩があって、味付けはほぼ塩のみでとてもシンプルだそうだ。
うさぎとネズミにお金を使う機会は無いだろうが、いつかナツキを見つけたとき、ナツキが人間だったら知識として知っているのは必要なことだろう。
『他にまだ聞きたいことがある?』
俺はルリハを顔合わせる。大丈夫そうだな。
『今はこれぐらいで大丈夫だ。助かった』
『なら、今度は君たちのことを教えて!』
アベルは目を輝かせて言う。
『何を知りたい?』
アベルは少し考えてから
『そうだなぁ。まず君たちはその世界で、やっぱりうさぎとネズミだったの?』
まぁ気になるよな。
『いや、違う。俺たちは人間だった』
アベルはとっても驚いて、手をあげたり下げたりしながら
『それはまた大変だったね…』
気遣うようにそう言った。
『アベルってぼっちかもしれないけど、いいやつなんじゃないか?』
ルリハが呟く。おい、聞こえるぞ。
『初めは何が起きたのか、理解できなくて。急に何か獲物認定されて追いかけられたからさぁ』
『それはまた、逃げ切れてよかったよ』
『ほんとにな。転生したとわかって、即死ぬところだった』
『だから、君たちはそんなに知能が高かったんだね』
アベルは水を水筒に入れて斜めがけカバンを作っているのを見て、なんで知能の高い子なんだろうと。それで気になってここに招待したんだそうだ。
確かにただの獣だったらそんなことを思いつきもしないだろうしなぁ。ちょっとだけ納得してしまった。もっとももう少し穏便な招待の仕方があったんじゃないのかな?なんて思ったりするが。
『君たちのいた世界に魔法はあるの?僕たちみたいな聖なるものは存在してた?』
この問いにはルリハが
『魔法もないし、聖なる者も存在してなかったよ。代わりに、すごく科学の発達した世界だった』
『科学?』
『そう、科学。離れてるところでも連絡が取れたり、世界中の情報を検索できたり、すごく早い乗り物があったり、たくさんの人を運ぶ空を飛ぶ乗り物があったり』
アベルは目を丸くして驚いている。
『すごい!この世界の魔法に近いことを魔法じゃなくてやってるんだ』
そう言われたらそうかもしれない。火魔法を使えば火を使えるけど、あちらではその役割がライターとかそういったものになって。
水魔法は無いけど、蛇口から水が出るし、土魔法は無いけど、パワーショベルで土掘れるし、風魔法は無いけど、風車があるし、エアコンだってある。
そう考えたら、科学と魔法で結果同じようなことができるのかもしれない。いや、空間魔法は、あちらにはなかったから、もしかすると、この世界の方が魔法ありきで、考えたら進んでるのかもしれない。
『科学はすごく発達していたし便利だったとは思うけど、娯楽もたくさんあったし。その分なくしてしまったものもたくさんあるから。この世界はまだ。そんなに発達してないかもしれないけど、便利さは魔法で補えても、俺たちがなくしてしまった大切なものがまだ残ってるのだとしたら、楽園なのかもしれない』
ポツリとルリハがそう言った。
『君たちの世界には差別とかあった?』
もちろんあった。人種差別だ。
『あったさ。いろいろな人種がいたからな』
俺たちは差別される側だったが。
人種以外にも明確な差別があった。そう。俺たちみたいに、親のいない子供は、あからさまな差別の対象だった。きっとこの国でもそれは同じなんだろう。
『そうか。科学が発達したからと言って、人の心まで成熟するとは限らないんだね』
俺は逆じゃないかと思った。成熟したからこその差別、結局人と言うのは、自分よりも劣るものを見つけて、優越感に浸りたい種族なのかもしれない。
今の俺はどうだろう?うさぎである俺はネズミであるルリハをは矮小なものだと思うのだろうか?
うん、思わない可愛いだけだ。なぜかネズミのルリハを撫でたくなって、その頭をさわさわした。
ルリハはきょとんとした顔で俺を見上げる。うん、なんか急にな…?
『どうしてこの世界に来たの?』
『むしろこっちが知りたい』
アベルは考え込んで、しばらくしてから
『何かを強く願ったかい?』
俺を見てルリハを見てそう聞く。願った、ナツキのそばで見守らせてくれ、と。ルリハは俺のことを思ってくれた。
俺もルリハも頷いて
『願ったよ!ハルカにまた会わせてくれって』
『俺も弟の側にいたいと願った』
『この世界なのか、あちらの世界なのかわからないけど、君たちの思いに応えて、この世界に飛ばされたのかもしれない。君たちは、ここで出会えた。だとすると、君が弟のそばにいたいと願った。その弟がこの世界に転生したのかもしれないね』
やっぱりそうなのか。なつきのそばにいたいと願った。俺がこの世界にいるなつきの元に飛ばされ転生した。そしてこの世界で転生した俺を追いかけるようにルリハがこの世界に転生した。
確かにそれならば辻褄が合う。だとしても、なんで俺たちはウサギとネズミなんだ?
『なぁ理由はそれだったとして、なんでハルカはうさぎで俺はネズミなんだ?ハルカの弟がウサギとか』
アベルはまた考え込んだ。
しばらくして、顔を上げる。
『可能性の1つだけど、君たちは魔獣だけど、すごく知能が高いよね?君たちがその弟くんの何かしら力になるような、そういう理由でウサギやネズミになったのだとしたら…弟君は普通に人間に転生したのかもしれないね』
どういう意味だ?少なくとも人間の役に立つウサギやネズミが想像できない。
『でも、所詮はウサギとネズミだぜ?人の役に立つって想像できないぞ?』
ルリハが疑問を口にする。
アベルは、ルリハを見て
『うさぎとかネズミである事はあまり関係がないんだよ。魔獣としてのレベルが上がれば人型になれるからね』
…レベルが上がれば人型になれる?
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