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転生したらもふもふだった まるんな前脚で頑張る!  作者: 綾瀬 律


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32.スカイ

 転生したと自覚したのは6才。その後数日は森に近寄らなかった。

 そしてある夜、寝ていると

『…』

 何か声が聞こえてた。目を覚ます。何だ?耳を澄ませても音は聞こえない。また目を瞑る。


『…で。小さな…子…ば』

 ガバッと起き上がった。急いで部屋を出る。森に、森に行かなきゃ。屋敷の裏口から外に出る。真夜中の屋敷は使用人も寝た後で静かだった。


 裸足のまま走って森の境界の手前に白が見えた。白に赤。なんで赤が…?横たわっているのは例の白い狼。

 近付いて行くと血の匂いがした。まさか!?

 屈むと腹から血を流している。こんな大けが、僕じゃ治せない。


 僕を見る。何か伝えようとしているのか…?でもまずケガを治さなきゃ。傷口に手を翳す。治れ…治れ。もう誰も見送りたく無い。ハルカもルリハもカズハも、そしてナツキも。失いたく無いんだ。だから治れ!治れ!!


 どれくらいそうしていたか。

『助かった…』

 ペロリと顔を舐められた。えっ?目を開ける。狼は起き上がって座っていた。


『俺の前脚を持って額を合わせろ!そして俺に名前を付けるんだ』

 僕は泣きながら言われた通りにする。真っ青な目がきれいな白い狼。


「スカイ…」

『俺はスカイ…』

 僕はスカイに抱き付いた。良かった。その白い毛はふわふわで、でも血の匂いがする。きれいにしたいな、そう思ったら血の跡が消えた。ツヤツヤの毛。そうか、強い思いか。


 こうして僕はテイマーとして生きることになった。スカイは魔獣では無い。無いが、長く行きた個体は霊獣となる。スカイはまさにそれだった。

 どうりで契約の仕方も知ってる訳だ。


 ルクレツィアの森に隣接する領地では、テイマーは重宝される。僕にも出来る事があった。

 ちなみに、転生してからは運が悪く無い。悪く無いが、鈍臭いのは相変わらずだ。


 だから転んでもケガをしないための空間魔法とか、そういうアイディアを出して姉さんが形にして、商会で売っていた。どうやら繁盛している。


 僕はお金には困らないようになっているみたいだ。

 ハルカたちも転生したのかな?もしそうなら、会いたいものだ。



 5才の時に貰うギフト。僕は生き物使いだった。聞いた事がないと神父さんにも言われた。

 テイマー系のギフトであることは間違いない。


 テイマーは生き物全般、魔獣使いは魔獣専門。とは言え、一般的には魔獣使いの方が立場が上だ。テイマーは強い生き物とは契約できないから。


 生き物使いはどういう立ち位置なのか、分からなかったがそれはスカイによって教えられた。テイマーと魔獣使いの上位互換となるギフトだそうだ。


 だからスカイは僕に興味を持って、僕たちは契約したのだろう。ただ明らかにスカイの力が上回るから、命令しても意味がない。本来なら契約できる相手では無いのだ。


 その後は巣から落ちたオオワシのヒナを保護して契約した。契約というよりは親に近い存在だ。

 例え契約しなくても、何と無く言ってることは分かる。それが生き物使いというギフトの力なんだろう。


 それから7年経って僕は13才になっていた。

 森に入るのは日常で、大きな魔獣の動きが無いかを確認する毎日だ。


 ある時、雪うさぎを見つけた。まだ小さい。巣穴から顔を出した時に遠目に見たのだ。小さくてふわふわで可愛いかった。


 それから気にして見ていると、どうやら冬籠りの準備を始めた。木の実や枯れ枝なんかを巣穴に運ぶ姿を何度も見かけたから。


 春先に目にするようになってからだから数ヶ月経っていた。そろそろ冬の使者が訪れる、そんな折り…雪うさぎの姿が見えなくなった。巣穴に近寄るとイタチがいた。まさか!?


 仕方ないとは言え、気にして見ていた雪うさぎ。なんだか悲しくて、その夜はスカイに抱き付いて眠った。

『自然の摂理だ』

 わかっていても、やっぱり複雑だ。契約していたら助けられたかもしれない。そう思ったから。


 そして冬の使者が訪れ、雪が積もった。冬の間は森には入れない。が、魔獣の活動も鈍るので、問題ない。僕はただ冬が過ぎるのを待った。


 雪が溶けて春が来た。

 ようやく森に入れる。スカイと空をナイトが飛ぶ。

 中程まで進んだ。雪うさぎの巣穴があった辺りだ。

『待て…』

 スカイが脚を止める。


 スカイの鼻が指す方向を見ると、巣穴から白い耳が飛び出していた。白い耳?

 やがて頭、そして背中…全身が出て来た。

 僕が知っている姿より大きくなった雪うさぎだ。まさか?生きてたのか!



 カサッ



 こちらを見た。ここは巣穴からだいぶ遠い。まさかな、うさぎは視力が悪い。しかも匂いを止める魔法を使っているから、匂いもわからない筈だ。それでも耳をヒクヒク鼻をもんもんしている。



 タン



 巣穴に消えた。

 驚いた…分かったのか?


 翌日も近くに行ったがうさぎは出て来なかった。その翌日も。だからさらに遠くから、オオワシの目を通して空から見ることにした。


 すると巣穴から出て来た。続いて別のうさぎも!番か?と思ったら最後にネズミが出て来た。みんな真っ白だ。

 そこへ空からナイトとは違うワシが急降下して来た。危ない!


 しかし、ワシは何かに絡め取られて暴れている。もちろんうさぎもネズミも無事だ。

 木の上から蜘蛛が降りて来た。さらに体を絡め取られワシ。そこにハチがやって来た。首の後ろに針を刺す。やがてワシの力が抜けた。


 地面に降ろされたワシにアリがたかる。毛を剥ぎ、皮を切って。蜘蛛も手伝ってあっという間に解体された。それらはパーツに切り分けられると消えた。

 僕はその光景をナイトの目を通してつぶさに見ていた。


『これはまた…凄いな』

 スカイが笑った。どうやらとんでもない事が起きている。違う種族が協力するなんて。


 さらに翌日、僕は巣穴に近寄った。やっぱり出て来ない。警戒されてるんだろう。

「やぁ、君たち。僕は生き物使いだよ!少し話をしないか?」



 シーン



 反応はないが、聞こえてると思う。

「君たちは仲間なんだよな?僕の仲間にならないか?そうすれば狩られる心配は無くなる。僕が守るよ」

 反応がない。どうしよう?



 *****



 ヒトハから人間が来たと連絡があった。俺とルリハは急いで地下通路をかけてヒトハの巣穴に向かった。


「君たちは仲間なんだよな?僕の仲間にならないか?そうすれば狩られる心配は無くなる。僕が守るよ」


 人間の声が聞こえた。何を言ってるんだ?まだ子供みたいな声だ。なら明らかに俺たちの方が強い。一番弱いアンですらレベル23だ。人間に換算したら92、Aランク相当だぞ?


 ヒトハはじっと耳を傾ける。


「雪うさぎ、冬を越す前までここにいたよな?冬を前に見なくなって、心配してたんだ。契約していたら守れたのにって…」

 なるほど。ヒトハがここに戻りたかったのはこの人間の事もあるのか?


『見守られてるのは知ってた…』

 そうか、だからか。

『ヒトハの好きにしたらいい。例え契約しても、俺たちの方が強い。俺らを売るようなことは命令されても従わなければいい』


 ヒトハは

『恩に感じてるのはハルカとルリハだけだ。ただ、お前たちの願いには人間の協力が必要だ。だから、な』

 どうやら俺たちの為に契約しようとしているみたいだ。ならば、俺が見極めてやる。ルリハも同じ事を考えたようだ。


 ヒトハに付いて巣穴を出た。

 そこにいたのはまだ少年。そして、なぜか懐かしい匂いがした。




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