29.人の町での生活
ナツキに寄り添って人の町にやって来た僕たち兄弟。そして、その翌日には攫われた兄弟が見つかった。
兄弟を連れていたのは人間で
「ここではホワイトウルフは狩ってはいけないと知らなかった」
と言った。
この辺りの辺境は魔獣が多い。だからただの獣であるホワイトウルフは狩らない。むしろ、魔獣を狩るのだから人間に取ってはいて欲しい存在だ。
知能が高くて無闇に人を襲わないのもその理由。
それを毛皮が人気だからと狩りをした奴らが、僕の兄弟を攫った。それが原因でナツキを僕の両親が攫った。
ナツキが攫われたのは密猟をした奴のせいだ。だから兄弟を譲り受けた奴も同罪だ。
知らなかったでは済まないのだ。
しかし、何故か分からないが無かった事にされそうになった。兄弟は取り戻せない。そう思ったら許せなくてその人間に唸った。
『兄弟を返せ!』
『返せ!』
『まだ子供なんだ!』
みんなが唸る。
ナツキは
「その子たちは返して!ホワイトウルフはこの町の守護をしているんだ。彼らが協力してくれなければ、この町は魔獣に襲われるんだ」
と必死に言った。
「そうなのか。申し訳なかったな…」
ソイツはそう言って兄弟を閉じ込めていた檻を開けた。
「きゃう!」
「きゃうん!」
一目散にかけて来た。鼻で挨拶をして周りを回ってお尻の匂いを嗅ぐ。うん、間違いなく兄弟だ。体に戯れつく。
良かった…!口元を舐めてしっぽもブンブンだ。
ひとしきり戯れると眠くなった。すやぁ…
*****
目を覚ますともふもふに埋もれていた。最近はずっとこんなだったから違和感はなくて、むぎゅうと誰かに抱きついて目の前にあるしっぽを握った。安心する匂い…これは多分、イチだ。
僕のそばにいてくれる子。特別な子だ。
ん?いい匂いがする。兄弟の匂いをじゃなくて食べ物の匂いだ。久しぶりに嗅いだ。くぅとお腹が鳴った。
目を覚ます。周りの兄弟も顔を上げてしっぽを揺らす。あれ、ここは…?
「お目覚めですかな?お坊ちゃん」
セバス?ここは…と周りを見回す。あ、僕の部屋だ。そうか、確か人が来て契約したら一緒に暮らせるって言われたんだ!で、名前を付けた。
テッド、マーヤ、イチ、ルカ、リハ。僕の横で口元を舐めてるのがイチだ。首元を撫でるとパタパタとまだ短いしっぽが揺れた。あれ、増えてる…
あ、そうか。囚われていた兄弟を助け出したんだ。あの人は貴族。どこからかやって来て密猟車から兄弟を買った悪者だ。返してくれて良かった。イチが
『返せ!』
って叫んだから。知らない子が2頭。鼻を寄せてくる。
『ほら、あんたたちも名前を貰いな!』
マーヤが鼻でせっつく。
僕は前脚を握って額を合わせた。
「ナツ」
「フユ」
『名前ー』
『わーい』
こうして僕は家族と一緒に暮らせる事になった。
後で犬じゃなくてホワイトウルフだと知るんだけどな。言われたら頬がシュッとしてるか?子供たちはまだぽちゃぽちゃしてるから分からなかった。
「さあ、着替えて食事をとりましょう。しばらくはお部屋で」
セバスに言われて起き上がる。不思議な事に殆ど抜け毛が無い。助かる。
普通のシャツとズボンに着替える。
部屋のテーブルに座るとスープに柔らかなパン、ベーコンと卵焼きにサラダが載っていた。
えっとテッドたちは?と思ったら低い台の上に茹で野菜とお肉、果物が載せられた。
ベッドから降りて台の前に座った。あ、僕が主人だからか?
セバスをみれば頷いたので
「みんな、食べていいよ!」
バクバクガツガツ…
さて、僕も食べよう。
ふう、久しぶりの温かい食事。美味しかった。テッドやマーヤが取ってきてくれる木の実や果物も美味しかったけどね。
『美味いな…』
『えぇほんと!』
『うまうまー』
『パクパク』
『ん、ん…』
みんなも沢山食べて安心した。
ってか同室でいいんだ?てっきり馬小屋とかにいるんだと思ってたけど。
「ほっほ。テイマーの方が同室の方が良いと言われましてな。それに坊ちゃんがしっかりと握って離しませんでしたし。この子たちも坊ちゃんにしがみ付いてまして…」
うん、僕は多分テッドに抱き付いた記憶がある。で、イチのお尻に顔を埋めてしっぽを握った。
でもそれで同室になれるんなら良かった。
「旦那様がお会いしたいと。こちらに来られます」
セバスは食器を片付けて、部屋を出て行った。ちゃんと低いテーブルには水が入ったお皿を置いて。
ぺちゃぺちゃと水を飲む兄弟。すぐに無くなった。するとマーヤが水を前脚から出した。
なんだと!
使えるのか、魔法が。魔獣じゃ無いのに。
『当たり前さ!』
だって。マジか。狼に負けた。
いや待て、僕も魔法使ったんじゃ無いか?毒を散らしたし、ケガも治した。
自分の小さな手を見る。
「うわぁ!」
扉がノックされる。
「どうした?ミツキ」
父様が駆け込んで来た。あ、ヤベ。
「何でもないよ!」
そう答えると父様に走り寄る。抱き上げてくれるその腕は逞しくて僕は不覚にも涙が溢れた。死ぬかと思った…もう父様に会えないかと思った。うぐっ、ぐすっ…
大きな手が僕の頭を乱暴に撫でる。
「ミツキ、良く無事で…」
父様の声もしめってる。そのまま肩に頭を預ける。しばらく無言でいた。
肩を叩くと僕と目を合わせる。
「ミツキ、何があったか話してくれるか?」
僕は頷いて攫われてからの話をする。父様はとても驚いていた。契約する前から僕は守られていたから。
「そうか…」
父様はテッドたちを見る。緩くしっぽを揺らしている。
「守ってくれてありがと。そして、申し訳なかった…」
良かった。僕を攫った罪は不問だ。
父様は僕を見て
「ミツキ、彼らの事はお前次第だ。もし、きちんと制御出来ないと判断されたら…分かるな?」
もちろんだ!しっかりと頷いた。
その後は母様が
バァン
「ミツキ!」
それなりのボリュームでぎゅうぎゅう抱きしめられ、窒息しそうになった。助けてくれたのはテッドだ。
「わうわう!」
腕を緩めた母様はぐったりした僕を見て
「大変!」
母様の胸で窒息とか笑えない…勘弁してくれ。
僕はその日、母様と父様とイチと一緒に寝た。イチは僕から離れなかったから。でも母様も父様もイチを撫でて嬉しそうだった。
その翌日、僕はテイマーに会った。あの時、僕に契約をすれば一緒に暮らせると言ったSランクのテイマーだ。
「やぁ、会うのは初めてだな、ミツキ君。私はレイカだ。よろしくな」
「よろしく!」
「ミツキ、彼はお前の家庭教師だ。彼は伯爵家の3男で、礼儀作法も勉強も、剣術や魔法も一通りこなせる。彼にはテイマーとして必要なことも教わるといい」
凄いな、全部教えられるのか?それが冒険者でテイマーをしてるなんて不思議だ。
「兄2人が優秀でな…」
懐かしそうな顔からは仲が良さそうな雰囲気が伝わる。
そういえば兄様と姉様は元気かな?
「励むんだぞ!」
「はい!」
こうして僕に家庭教師が付いた。そして、さらにレイカ先生の推薦で僕に専属の従者が付いた。
白色の髪に水色の目の少年で名前はヒトハ。変わった名前だ。そしてもう1人は金色の髪に金色の目の少年で名前はハッチ。彼は僕の護衛も兼ねるとか。最後は黒い髪に黒い目の少年でアン。みんな名前が変わってる。
「よろしく!」
「よろしく、お願いします…」
「よろしく、です」
「…」
みんな静かに無表情で告げた。まつ毛が顔に影を落とす。みんな線の細い子たちだ。年は僕とさほど違わない。せいぜい1つ上か。
その後、僕はレイカ先生の元でぐんぐんのその素質を伸ばして行ったのだった。
*読んでくださる皆さんにお願いです*
面白い、続きが読みたいと思って貰えましたらいいね、やブックマーク、↓の☆から評価をよろしくお願いします♪
評価は任意ですが…もらえるととっても嬉しいです!
モチベーションになりますのでどうぞよろしくお願いします♪




