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転生したらもふもふだった まるんな前脚で頑張る!  作者: 綾瀬 律


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28.カズハの転生

『なぁ、ハルカ…』

『なんだ?』

『カズハ、どうしてるかな?』

『そうだな、あっちで幸せになっていたらいいな』

『ナツキとカズハが知り合えたらいいのにな…』

 そうだな、カズハは俺たちと違って誰から見ても爽やかイケメンだ。

 だからもしカズハなら、ナツキと仲良くなれる気がする。


『俺さ、きっとキューピットなんだよ』

 …飛躍しすぎだろ?まぁ言いたいことは分かる。

 きっと俺の葬式で2人は会ってるよなといいたいんだろう。

 ルリハの葬式に顔を出しそうなのは施設で世話になった人くらいだ。

 そして葬式をするとしたらそれはカズハだ。


 ナツキがもしルリハの存在に気が付いていて、同じ場所で死んだと分かればきっと葬式に行くと思う。

 カズハがナツキの力になってくれいたらいいな、とそう思った。


 しかし、もうなのかこれからなのか不明だがナツキもこの世界に転生するのなら…

 今度こそカズハは独りぼっちになってしまう。


『カズハも来てるんじゃないか?』

 それは俺も考えた。虫の報せとでもいうのか…なんとなく感じるんだ。

 口に出さなかったが、きっとルリハも感じている筈。


『会えるかな?』

『会えるさ、きっと』

 それは断言できる。だって俺とルリハが出会えたんだぞ?ならカズハだってきっと。


『だよな!』

 俺はルリハを抱き寄せた。もふい俺の胸気に埋もれた。

 ふかふかなルリハを抱きしめる。冬毛になってよりみっちりと毛が詰まったルリハ。


 ふかふかともふもふだ。でもな、できればカズハは人間であってほしい。

 もう最弱はいらないからな!


『なぁ、カズハは人間だといいな』

『それな!』


 2人の願い空しく、カズハは転生していた。

 人間ではなく獣に…。ただ、最弱ではなかったのが唯一の救いだろうか。



 *****



 俺は目を覚ました。なんだか柔らかいものに包まれてる。

 なんでだ?確かナツキをかばって死んだ筈。命が流れ出すのが分かったからな。

 ナツキを守れただろうか?朧げに俺の名を叫ぶナツキの声が聞こえた気がする。守れたのならいいさ。


 きっとハルカにあったら、バカだなって言いながらありがとうって照れ臭そうに言うんだろう。

 ハルカはそういう奴だ。人一倍強い想いをもっているのにそれを表に出さない。


 でも俺もルリハももちろん知っているさ、ハルカは誰よりも情に厚いって。だからかな、ナツキも凄くいい子だった。

 目を輝かせてハルカとルリハの話を聞いてくれた。それはナツキにとってだけじゃなく俺にとっても救いだったんだ。


 ナツキを一人残してしまったのは心残りだが、伝えたいことはだいたい伝えられただろう。

 俺はゆっくりとあの世を楽しもう。あちらでハルカとルリハにあったら酒盛りでもするかな。


 …にしてもここはどこなんだ?

 柔らかくて暖かくて安心できる匂いがする。ふかふかだ。


 …ん?匂い?なんだそれ。体を動かしてみる。わさっ…

「わうわう…」

 ……?わう?

 そっと目を開ける。白いな…。体を起こす。

 なんだこれ?


 俺は白いもふ塊の中にいた。手を見る。もふい。はぁぁ?

 よし、深呼吸だ。落ち着け、俺。

 回りには俺のほかに6頭の白いもふもふ。大きさが違うから大人と子供か。


 俺は明らかに小さい。もしや…子供、しかも獣に転生したのか!?

 俺が動いたからか、となりのチビもふが脚を蹴った。短い脚はもふい。四つ足で立ち上がると体をぷるぷるする。

 …?勝手に体が動いた。これは習性か。背中を見る。しっぽが見えた。ふさふさだ。


 …まさかの転生したら獣だったよ!

 そういやルリハが言ってたか。転生は当たり外れが大きいと。人ならまだよし、最悪は獣だ。しかも魔獣なんて人に狩られるために存在してると。

「でもよぉ、そうそうないぞ!」



 …あったぞ?ルリハ。ドンピシャで。

 どうするんだよ、これ。まだ猿とかなら人に近い。でも俺は四つ足だ。手は無い。あるのは前脚で…マジか。

 ウロウロしてると母がしっぽでさわりと顔を撫でた。落ち着く匂いだ…。


 ふう、なんだか眠い。きっと俺はまだ赤ちゃんなんだ。ふかふかのお腹にダイブして目を瞑った。ヤバい、気持ちいいぞ…。


 次に目を開けたのは腹が減ったから。兄弟もわちゃわちゃしながら母親に縋る。俺も並んで母親が横たわるとおっぱいにしゃぶりついた。

 人としての感覚があるから微妙だが死ぬわけにはいかない。ちゅぱっ…あったかい。

 母乳が体に行き渡る感覚。ゴクゴク飲んでゲップをした。ふわぁ…眠い。兄弟にしがみ付いて寝た。


 完全に四つ足をものにしたぞ!走り回って戯れて走ったておっぱいを吸ってまた寝る。3食昼寝付きどころか7食昼寝付きだ。うん、悪く無い。


 そんな平穏な生活が一変した。親がいない時、兄弟が攫われたのだ。大変だ。いや、実は俺も捕獲された。危険を察知して兄弟を逃したんだ。でも俺と兄弟2頭は捕まった。しかし、俺には知恵がある。だから奴らの股に噛みついた。


 そこで、奴らが悶絶してる間に逃げた。巣穴にかけ戻る。危なかった。

 心臓がバクバクする。


 戻って来た両親は唸って匂いを追った。しかし、兄弟は見つからなかった。両親は時々、人里に向かい戻ってくる。兄弟の匂いを追ってるんだ。

 ある時、また町に出てそして戻って来た時には子供を咥えていた。


 人の子だ。なんで…?しかもこの子の匂いは…。

 親がその子を傷付けようとしている。待って、ダメだ!

 俺はその子に乗っかった。

「ぐるわぁ(離れなさい)」

「きゃう!(嫌だ)」


 諦めたのは両親だ。俺以外の兄弟も匂いを嗅いで寄り添ったから。わちゃわちゃと固まって寝る。良かった。この子は傷つけちゃダメだ。


 そんな風にして過ごしていたら、兄弟を攫った奴がまた来た。そして両親は傷付いた。お腹から血が流れている。吹き飛ばされている。なんで?ただ普通に暮らしてるだけで、なんでこんな目に? 

 でも俺は弱いから、何も出来ない。悔しい…悔しくて仕方ない。俺に力があれば!


 しかも、巣にしていた洞窟に毒を撒かれた。大変だ!今度こそあの世か?そう思ったら小さな人の子がその毒を消した。

 さらに、両親のケガまで治した。どうやったのか知らないが、ありがとう!良かった。また1人になるのは嫌だ。


 それから両親は人の子を、自分たちの子供として寄り添った。俺たちはもう木の実とか果物を食べてたから、お裾分けだ。そんな穏やかな日が数日続き、また人の気配がした。


 両親が俺たちを背に庇い、俺は人の子を背に庇う。すると、

「私は敵じゃ無い」

 と聞こえた。そして遠吠え。これは同族の声だ。やがて大きな狼が見えた。両親より大きい。そして尻を向けた。そのまま近づく。敵意はないという意思表示だ。しっぽが揺れる。


 そして、その奥にいるであろう人が声をかけて来た。人の子と契約すれば、共に暮らせると。両親は人の子と契約した。そしてもちろん俺も。人の子の魔力と繋がったのが分かる。


 やっぱりか…。

 そして名前をもらった。ルカにリハ、そしてイチ。俺の名はイチだ!だからつい

『ナツキ!』

 声を掛けた。


 そう、この人の子からはナツキの匂いがした。俺の嗅覚は鋭いから間違いない!そしてナツキも何かを感じている。だから俺にイチと名付けた。ルカはきっとハルカから、リハはルリハから、そしてイチは一葉カズハからだ。


 ナツキといれば攫われた兄弟も探せるかもしれない!こうして俺たちは巣を離れてナツキと共に人の町に足を踏み入れた。宝物の木の実やお気に入りの木の枝は持っていったぞ!





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