25.育児は大変
俺は小さい子は同じ遊びをそれこそ何度も何度も続けることを忘れていた。
まだナツキが3歳ころ、河原で石を投げたら喜んで
「もう1回」
と言われた。得意になって投げた。
「もう1回」
それがその後永遠と…俺の腕が上がらなくなるまで続くなんて思わなかった。
飽きるという感覚が大人より遥かに少ない。
忘れていた。
そして、今も…カゲツの目がキラキラしている。
嫌な予感しかしないが、致し方ない。子育てとは我慢と忍耐と根気が必要なのだ。
家にあまり帰ってこない母親の代わりに、俺だってまだ小さかったけどさらに小さいナツキの面倒を見た。
懐かしい思い出だ。
ナツキにまた会えたら、たくさん構ってやろう。して欲しいこと、したいことは好きなだけでやらせてやりたい。
…疲れた。例え俺より小さなベビーだとしてもドラゴンだ。俺よりも遥かに体力がある。
しかもぽよんぽよん遊びが終わったら背中に張り付かれた。地味に重い。小さいのにみっちりなのか、重い。
ドラゴンの巣は緊張するとか、そんなことを言っている余裕すらなかった。
いいんだか悪いんだか。でも無邪気な子供は可愛い。
例え力が強く俺より重く体力もあったとしても。
ついに腹を上に向けて寝始めた。いいのか、生き物としてその姿は。でもまぁ安らげてるんならいいか。
上向きで寝ているのはいいとして、俺のかわいいしっぽを掴むのはやめてくれ。
というかお尻を抱きしめられている状態だ。
でもまぁ安らげてるんならいいか。小さな前脚でひしとしがみついているカゲツはすやすやと眠っていた。
とまぁそんな遊びたい盛りのカゲツは俺やルリハが見えなくなると、探す。ガビルやリッカが見えなくても平気なのに、俺やルリハがいないのは嫌がる。意味が分からない。
『パパは小さいし、魔力を感じ取れないから不安になる』
だそうだ。そらガビルたちの魔力圧たるや、顔を合わせただけで昇天する勢いだったからな。離れていても感じ取れるんだろう。それが原因か。
『ルリハ、魔力をたれ流して俺たちの居場所を知らせないと、カゲツは追いかけて来るぞ!』
『うーん、どうしたらいいんだ?』
『離れてても居場所が分かればいい』
『なら…居場所を知らせるような、何かを…』
それが問題なんだ。GPSみたいな感じだろうが、思いつかないな。
共鳴か、呼び合う…引き合うか。魔力同士が引き合えばいいんだな。
『なぁ魔力、カゲツが俺たちの魔力を纏えば分かるか?』
『その魔力じゃなくて、その魔力と俺たち自信の魔力が引き合わないとダメだろ』
『そっか…』
居場所が知りたいんだもんな。
遠隔で魔力を飛ばす。離れてると難しいか。瞬間移動したらいいのかな。あ、もしや
『ハルカ』
『リルハ』
『『魔力の転移だ!』』
それだ!
理屈が分かればルリハの出番だ。深い理解は俺よりルリハが得意だ。で、ルリハがまず自分の魔力を結晶化させた。いわゆる魔石だ。それを体内で作った。成長と共に体に出来るあの体の核となる魔石とは違う。
ただの魔力の結晶だ。それを3つ作った。当然のように俺に渡して来る。細かな作業は俺が得意だからだ。
で、ペンダントみたいなカットを施す。確かペアシェイプだ。
作り終えるとルリハが
『ペンダントトップにしろ!』
へいへい、人使いが荒いな。人じゃなくうさぎか。天辺に穴を開けてバチカンで固定。シンプルにしてもいいが、カゲツにとっては記念すべき初アクセサリーだからな。
バチカンの表に「華月」と漢字で掘った。一見すると模様に見える。裏には瑠璃波と。これはルリハの魔石だからな。
『出来たぞ!でもカゲツのどこに付けるんだ?』
『それは後で相談だな…。俺たちも付けるんだし』
だよな。
『で、後はこれとこれが…空間を…魔法で』
ブツブツ言ってるな。これはルリハのくせだから静かに待つ。どうせカゲツにお尻をホールドされてるからな…動けない。
『よし!ハルカ…巣穴10に飛べ!』
俺の前脚にルリハのカットされた魔石を載せる。よし、巣穴10だ。
シュン
前脚で挟んだ魔石を見る。おぉーぽわんと光った。確かに微弱だがルリハの魔力を感じる。微弱なのは込めた魔力が少ないからか?魔力の濃度を上げたら少しは変わるかな。
(ハルカ、聞こえるか?)
ルリハか…?耳を澄ます。近くにはいないよな。
(聞こえるぞ!)
(成功だな、念話だぞ)
あーそういや異世界の定番能力の1つだったか。確か鑑定、魔法、念話…。コンプリートしたな。
(それは凄いな!)
(あぁ、魔力は感じるか?)
(感じるぞ!戻っていいか?)
(パパ…)
カゲツが呼んでるな。
シュン
『パパ…』
ぎゅむっと抱き付くカゲツ。寝てたんじゃ無いのか?
『ハルカ、成功だな!』
『あぁ、ただ魔力が薄い?弱い??』
『ん、そうか…』
『こめた魔力が少ないとか』
『それなりに込めたぞ』
『なら密度?濃度か…』
カゲツにもルリハの魔石を渡してみる。
『弱い…』
やはりか。
『濃度か?』
カゲツは分からないと言う。
魔石を作るか…。後でカットするのも面倒だし、俺はマーキスカットの魔石を作ろう。魔力を込めて…ここで凝縮させて小さくまとめて…凝縮、凝縮…っと。
コロン
出来た。なかなか、だな。
『パパ!濃い魔力』
やはりか、ぎゅっと凝縮させたんだ。やはり濃度だな。魔石に始めから魔力を凝縮させればいい。
『ルリハ、とにかくぎゅっとだ!』
『ぎゅっと?』
『そうだ、魔力を小さな魔石にこれでもかとぎゅっと』
俺は説明が下手だ。感覚派なのでな。ルリハは理屈を考える。俺はとにかくズバっとしてドンだ!みたいな説明になる。
しかしさすがは付き合いの長いルリハ。俺の意図を汲んで何やらしている。
『出来たぞ!』
やっぱりまん丸な魔石だ。そこはカットまでしろよ!
『わぁ兄ちゃんのも濃くなった』
ドヤってるが、それをカットするのは俺だよな?当たり前みたいに渡された。
で、またペアシェイプにカットした。バチカンまでセットしてルリハに渡す。
ちなみに手が無いので、作業は魔法だ。魔法が手の代わりをして細かい作業をこなす。エアーハンドだ。
カゲツは目をキラキラさせている。しっぽの風圧は相変わらずだ。もちろん、結界でこちらに被害はないぞ。
『カゲツに渡すアクセサリーだ。どこに付ける?』
考えてから
『パパのは耳!兄ちゃんのは鱗の隙間』
耳?どうやって…だ。
『付け根付近に小さな穴があるんだ』
近くにカゲツが寄ってきたので前脚で抱える。耳の付け根…あ、これか。確かにある。
輪っかじゃなくてポストタイプでもいいのか?
『刺すタイプと輪っかとどっちがいい?』
『輪っか!』
悩まなかったな。
ルリハの分と俺のを輪っかの金具に付けて、耳と鱗の隙間に固定した。
ちなみにこの金具はアンたちが鉱山から持ち帰った鉱物だ。どうやら銀らしい。アンたちがカケラをたくさん持ってきてくれた。だから俺たちも転移してルリハは土魔法で、俺は風魔法で取りまくった。
いつの間にか亜空間は沢山ものが入るようになったからな。
他にもミスリルや金を持って来てくれる。有り難い。
こうして、カゲツに俺たちの魔石を渡したことで、そして念話が使えたことでやっと自分たちの巣穴に帰ることが出来た。魔石に魔力を転移させれば常に俺たちを感じられる。だから不安にならない筈。
そういや子育てに忙しくてアベルのことを放置してたな。まぁルリハが怒ったらもうダメだからな。様子見だな。
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