23.ドラゴンベビー
『名付けを頼もう』
…無理だろ?俺の名付けセンスは終わってる。自分でも分かるんだ。なんせ蜂にハッチ、蜘蛛にスパ、アリにアンだぞ?ひねりも何も無い。ルリハにすらジト目で見られたんだ。
『難しく考えるな!大切な名前でも良いぞ』
一番大切なのはもちろんナツキだ。でもな、ナツキ以外にその名前は付けたくない。
ふと昔のことを思い出した。
まだ施設に入る前、ナツキが言った。
「兄ちゃん、いもーととおとーとが欲しい」
どこで覚えたんだ?それ。
「んとねー、ちーちゃんとりょーくんがいもーととかおとーとがいて、可愛いって」
余計なことを。離婚した母親には無理だろ。
「でねー、いもーとにはミツキ、おとーとにはカゲツって付けるんだー!」
「そうか、楽しみだな!」
「うん!兄ちゃんと2人もいいけど…」
そんなことをふくふくと笑いながら小さな手で俺の手を握って言っていたナツキの事を思い出した。
だからか、ポツリと
『カゲツ…』
呟いた。
『ピッ、僕の名前はカゲツー!パパありがとう』
『ぐはっ…』
『パパ?』
「カゲツのパパはそこの立派なドラゴンだ!』
今は小さいけどな。ちなみにベビーは俺よりもまだ小さい。
『父上はもちろん、分かるよ!でも名前をくれたから、パパだよーピッ』
マジか?生後4ヶ月で子持ち…。嫁の来てが無くなる。ま、それも運命か。
『ドラゴンの子はしばらく巣穴で暮らした後、郷を離れるんだ。修行の為ににな』
『へー!』
ルリハの食いつきが半端ない。まぁ異世界オタクからすれば憧れなドラゴンだ。
しかも死なないで済んだ。むしろ、ガゼルはいい奴だった。安全が保障されてるからルリハの興味が赤ちゃんに向いたんだろ。
『それをお主たちに託そう』
『やりい!頑張るぞー』
ルリハが楽しそうならいいか。
ドンッ
『あら、生まれたのねぇ』
『母上ー!』
ぴょんぴょんするベビー改め、カゲツ。
『カゲツと名付けてもらったぞ!』
『まぁ素敵。ありがとうね、うさぎさん』
『ハルカだぞ』
『俺はルリハだ』
『まぁまぁ丁寧にありがとう。リッカよ』
『よろしくだ!』
『ふふっ、冬が過ぎたらこの子は旅立つわ。頼んだわね!』
『任せろ!』
ルリハがノリノリで答えた。
おい、そんな簡単に答えていいのか?
それがフラグだったと知るのは少し後のことだ。
『今日はゆっくりしていけば良い』
『おう、ありがとな!』
ルリハが答える。俺、何も答えてないぞ?
その日はドラゴンの巣でカゲツと一緒に寝た。子供体温なのか、あったかくてよく眠れた。スヤァ…
翌朝、リッカとカゲツに見送られてガビルの前脚にしがみ付いて巣穴に戻った。
そこにはアベルがいた。ソファで寛いでいる。それを見て俺もルリハもカチンと来た。俺たちは死ぬかと思ったのに、人の巣穴で優雅に寝そべりやがって。
『何してる!』
キツイ言い方になったのも仕方ないだろう。
『あ、お帰りー。どうだった?』
手を振りながら軽く聞かれた。さらにカチンときた。
『どうって、お前分かってて言ってんのか!?』
ルリハがキレた。
普段温厚な奴が怒ると大変なんだ。
『えっと…怒ってる?』
『当たり前だ!俺は、俺たちは本当に死ぬと、思って…死ぬと、ナ、ナツキにも会えず、に…朽ちるんだと、本気で…思って…それなのに、人の巣穴で寛ぎやがって。ふざけるな!』
ふうふうと息を吐きながらルリハが叫んだ。アベルは驚いてから体を起こして
『ご、こめん…その』
『お前も、お前の母親も…俺たちを、クソっ!ハルカがどんな思いで、俺抱きしめて…立ち上がれなく、て…』
アベルは俯いた。
『俺たちは、最弱なんだ…踏み潰されたら即死ぬ。鼻息の風圧で、飛ばされたら潰れるって…ガビルが』
ルリハが俺の代わりに言ってくれる。最後にこうやって怒ってくれるんだ。ナツキに会えなくて悲しいのは俺で、なのに、ルリハは俺のために怒ってくれる。
その小さな体を抱きしめる。
『ハルカ、ルリハ…』
アベルが手を伸ばす。俺はルリハごと跳んで逃げる。
『出てけ…ここは俺たちの、俺たち弱者の巣穴だ!』
そう言って俺の胸毛にしがみ付いて泣いた。その小さな頭を撫でる。ごめんな、嫌な役回りをさせて。
いつだってルリハが怒ってくれるから、俺は救われる。
ありがとう…
俺は後ろ脚で転移陣に土を掛けた。あんな目に遭わさせて、俺は怒ってる。ルリハにこんな事を言わせて。
俺はアベルの顔を見たくなくて、巣穴3に転移した。
『ママが…ごめん…』
残されたアベルは転移陣の土を手で避けて…泣きながら座り込んだ。
*****
僕は人魚族の第三王子だ。兄様と姉様が2人ずついる。
すぐ上の姉様でも80才、他の兄様や姉様はもちろん100超え。一番上の兄様は確か300才くらいだ。
僕は末っ子で、だからなのか。母様の監視が厳しい。
誰かと友達になったと思ったら
『あなたに相応しくないわ!』
と会う事を禁止されて、そんなことが何度もあって…僕は未だに友達がいなかった。
そんな時、最弱のはずのうさぎとネズミが面白い事をしていた。招待して、友達になったと思った。
そしたら、僕がいない間に死にかけた。ゴブリンの群れに当たって。まだレベル1とかの頃に、だ。
それも母様がやった。殺す気は無かっただろうけど、試したんだ。
結局、それを自力で乗り越えたから母様に認められて僕の友達になった。
多分、母様も少し浮かれていたんだと思う。ハルカもルリハもグングンとレベルが上がって、母様の無茶振りにもくらいついて。ゴブリンのことだってきっと怒ってたのに、許してくれた。
だから僕も母様も調子に乗ってしまった。
ハルカの願いは凄くハードルが高い。だから母様もなんとかしてあげたくて、また無茶振りをした。
仲間も増えて、本当に強くなった。全うさぎ、全ネズミの頂点に立つくらいには。
だから、もっとレベルを上げてと思った。思ってしまった。
ハルカはまだ生まれて4ヶ月、ルリハは6ヶ月。成長が早い小動物だとしても、まだまだ子供だ。なのに、母様はドラゴンの巣に放り込んだ。
僕も放り込まれたから分かる。あれはちょっとした絶望だ。僕も分かってたつもりだ。死なないからと。
でも、そもそもが強い人魚族とは違う。彼らは弱い人族よりさらに、そして遥かに弱い存在だ。
その絶望を僕も母様も軽視した。
まさか、あのルリハが怒るなんて。死ぬ思いでここまで強くなったのに、それがすべて無駄になると思った時の絶望感。そして、会いたいと…転生してまで会いたいと願った弟に会えないという絶望。
何故母様を止めなかったんだろう…
ハルカは転移陣に土を掛けた。きっと僕の顔を見たくないんだろう。
それでも僕は、きっとハルカたちは許してくれるとどこかで思っていた。
転移陣の前に座って待つ。きっと帰って来る。
でも、その日もその次の日も、そのまた次の日も…帰って来なかった。ハッチもスパもアンも来なかった。ポツンと座り込む。
ふと、ステータスを見る。そんな、まさか…。
僕は絶望で泣くことさえ出来なかった。
シュン
『ベル、ここにいたの?屋敷の管理はどうしたの?ダメよ!』
母様だった。僕は母様を見る。知らない人みたいだ。何か言ってるけど聞こえない。涙が溢れて来た。
やっと出来た友達なのに…やっと一緒にお泊まりが出来たのに…やっと、やっと。
なのに、母様のせいで…うぐっ、酷い、酷いよ…うわぁーん。ハルカ、ルリハ…許して!
お願いだから、見捨てないで…うぐっ、ぐすっ、嫌だよ…嫌だよぉ…
母様の手が頭を撫でようとしたから、その手を払った。
『触るな!僕の、僕の友達を…返せ!せっかく出来たのに…せっかくの友達なのに。うわぁぁん…』
*読んでくださる皆さんにお願いです*
面白い、続きが読みたいと思って貰えましたらいいね、やブックマーク、↓の☆から評価をよろしくお願いします♪
評価は任意ですが…もらえるととっても嬉しいです!
モチベーションになりますのでどうぞよろしくお願いします♪




