20..新しい技
防御の話をした翌日。
せっかくだからとルリハと外の偵察がてら結界の成果を試すことにした。
*
うわぁぁーーー!死ぬ死ぬ死ぬー!
なんでこんな事に。
俺たちは今、ブラックウルフに追われている。俺は胸にルリハを抱えて跳躍する。
プリズムイリュージョンで姿は見えないはずなのに、追いかけてくる。
そう、俺たちは重要な事を忘れていた。そう臭覚だ。臭い消しのことを忘れていたから、嗅覚が鋭い狼には俺たちの場所がわかってしまう。大失敗だ。
それで、今まさに追いかけられている。
『ハルカ上だ、上に逃げるんだ』
そうか空に登ってしまえば追いついて来れない。でかしたぞ!ルリハ。
急いで階段状の結界を作り、跳び上がっていった。もちろん、跳んだ後は結界を消した。
そして、狼たちがジャンプしても届かない高さまで登って一息ついた。
『危なかったなぁルリハ』
『ほんとだなハルカ』
しかし狼たちはまだ諦めていないのか、俺たちの下で待っている。怖ぇー。
『ハルカ、どうする?』
何とか近くの巣穴まで逃げ込まなければ。
『こんな時に転移が使えたらいいのにな』
『ハルカ、それだ!巣穴まで転移できたらいいんだ』
『使ったことないだろう』
『だからだよ…火事場の馬鹿力って言うじゃないか』
やっぱりルリハはこんな時でも前向きだ。
よしやってみよう。
巣穴と宮殿をつなげている、転移陣のイメージ。あれは空間と空間をつなげる魔法。俺たちが今いるこの空と巣穴のリビング。
空間を、その間にある空間を飛び越して2つをつなげる。よし行けるか。
ルリハの体をしっかりと抱きしめて…いくぞ転移!
シュン
目を開ける。一瞬の浮遊感の後、そこは巣穴5だった。
『ハルカー』
『ルリハ…』
『『成功だ!』』
ルリハを胸に抱きしめる。
よかったちゃんとルリハを守ることができた。やっぱり慣れない状態で冒険するもんじゃないな。所詮俺たちは、最弱なのだから。
でもこれで転移することができるようになった。これはすごく大きい。地上で危険な目にあったら巣穴に逃げ込めるんだから。
『ルリハ、転移を使えるようになれ』
ルリハはその潤んだような黒目を見開いて
『どんなイメージだ?』
『空間と空間をつなげるんだ』
『空間と空間…ワープか!』
そう叫ぶと目をつむってぶつぶつと言い始めた。少ししたら目の前からルリハが消えた。そしてまた戻ってきた。
『できたぞ!』
『できたな!』
ハイタッチした。
これで俺たちの安全性は格段に上がった。さっき俺はルリハを胸に抱いた状態で一緒に転移できた。法則性はまだわからないが、触れていれば一緒に転移できるんだと思う。
これはハッチやスパと検証が必要だろう。場合によってはアベルにも協力をしてもらったほうがいいかもしれない。自分よりも大きいものまで一緒に転移ができるかどうか要検討だ。
俺がこの世界で自分が転生したんだと自覚してから、既に3ヶ月が経った。ルリハと出会った頃はまだそんなに暑くなかったから季節で言えば春だろうか。
その後明らかに暑くなったから夏。そして暑さの最盛期を超えた今、朝晩が涼しくなったような気がする。という事は今は初秋。ならばやはり冬が来るのだろうか。
俺たちはそもそも冬眠するんだろうか?餌がなければ眠るしかないわけで、餌があれば眠らなくていいのか。
魔獣の習性が自分でもよくわからない。
これはアベルか、もしくはアリレルママに確認が必要だ。
もし冬眠をしないのであれば、冬を乗り越えるための諸々が必要になると思う。
食料はもちろんのこと、寒さをしのぐためのあれこれだ。毛皮を着ているが防寒着が欲しい。凍らないようにブーツも欲しいし、何よりもふかふかのお布団が欲しい。あったかい飲み物もいるよなぁ。
ふかふかのお布団をゲットするために、羊さんとかと仲良くしたほうがいいんだろうか。栄養補給するために牛さんなんかも仲間になってくれると嬉しかったりする。それを言うなら鳥さんが仲間になってくれたら卵なんかも食べられたりするんだろうか。
わからないことばっかりだ。
ここはまずアベルを呼び出そう。
『ルリハ、季節は進んでいる。やがて冬が来るんじゃないかと思うんだ』
『まじか』
『あぁ、冬への備えが必要かアベルに聞こうと思う』
『そうだな、冬を乗り越えられなかったら…』
『待つのは死のみだ』
ブルっと震えると俺の胸毛にダイブしてきた。震えている小さな体を抱きしめる。
『大丈夫だ俺が守る、いや、俺の毛皮が守る』
潤んだ瞳で俺を見上げて、しっかりと頷いた。
『アベル、こっちに来れるか?』
『ガタンッと痛い!あぁハルカ、今行くよ』
シュン
アベルがやってきた。
『どうしたんだい?』
『季節のことを聞きたくて』
アベルは目をパチパチさせて俺を見る。
『季節?今は初秋だよ』
『それはわかってるんだ。冬が来るのか?』
『もちろん』
やっぱりか…。
アベルは不思議そうに
『そんな当たり前のこと?』
アベルは俺たちがまだ生まれたばっかりなのを知らないのか。
『アベル、俺たちはまだ1年も生きてないんだ。ハルカなんてまだ4ヶ月だぞ』
アベルは目をまん丸に開いて驚いている。
『えっ…そんな赤ちゃんだったの?』
知らなかったんかい!どう見たって世間知らずの子供だろう。
『俺は生後6ヶ月だぞ!』
ルリハが小さな胸を張る。
『俺は4ヶ月だなぁ』
アベルはまた驚いた顔で
『知らなかった』
そんなに驚くことなんだろうか?そういえばアベルは何歳なんだ。
『アベルは何歳だ?』
『僕?』
なぜか目を逸した。もしかして人族じゃないから長生きなのか?見た目はほんの小さな子供だけど、もう何百年も生きてたりして。
『ぼ、僕はまだ25歳だよ』
…まじか。25歳でママとか言っちゃうんだ。ほんの少し遠い目をした俺だった。
『まぁ種族が違うからな』
ルリハはそう言った。相変わらずまっすぐだ。
アベルも恥ずかしそうにしながらも嬉しそうに笑った。俺たちからすれば圧倒的に年上だが、そもそもの寿命が違うのだから。気にすることなんてないのにな!
『俺たち友達だからな!』
やっぱりルリハはいいやつだ。
とそんなこんなで、冬支度をする事にした。
『やっぱり冬支度って言ったら食料とふかふかの布団だよなぁ』
『違いない!』
『保存の効く食料ってなんだ』
『俺たち空間魔法使えるような?』
『でもよ、普通に腐らないか?』
『時間停止とかにならないだろうか』
『あー定番の?』
『定番だな』
その後、ルリハがうんうんうなりながら試行錯誤して、できた。
『ハルカ、コツを掴んだぞ』
『教えてくれ』
『強く願う』
『…それだけか?』
『それが1番大事なんだ』
『お、おう…できた』
ドヤってるふかふかのネズミ…可愛いぞ!
『何を備蓄したらいいんだ?』
『やっぱり栄養は大事だろう』
『味も大事だぞ』
『それな!』
そこにハッチがやってきた。
『やー元気かい?』
『ハッチいいところに。冬はどうしてるんだ?』
『普通の蜂は冬を起こせないからな』
たしかに、働き蜂の寿命は短い。
『存在進化したから冬を起こせるぞ』
『備えはどうしたらいい?』
『俺たちは眠るんだ』
『そうか』
ルリハと対策を考えよう。
*読んでくださる皆さんにお願いです*
面白い、続きが読みたいと思って貰えましたらいいね、やブックマーク、↓の☆から評価をよろしくお願いします♪
評価は任意ですが…もらえるととっても嬉しいです!
モチベーションになりますのでどうぞよろしくお願いします♪




