19.新しい装備
スパが皮で防具を作ってくれると言う。
『服や靴も欲しいか?』
『欲しい!』
『任せな!』
思わず前脚を合わせて拝んだ。
『えーいいなぁ、俺も欲しいぞ!』
ルリハだ。スパはルリハのサイズを確認すると脚を上げて
『任せな!縫製は女性部の仕事さ。俺は皮を切る。皮を出しな』
スパが輝いて見える。思わず前脚で小さな小さな頭をトントンした。
防具に服、靴はオッケーだ。後は攻撃の道具だ。しかしな、金属は持っていない。
そう言えばオークの爪が有ったんじゃね?亜空間を睨む。いや、ただ空を睨んでる絵面なんだがな。
で、見つけた。鋭い爪だ。これを加工して俺の前脚に付けられれば。でもな、跳ぶ時に邪魔だと困る。収納式に出来ないかなぁ。
ん?収納…それだ!
オークの爪を取り出して、前脚に嵌められるよう試行錯誤。で、装着タイプにした。サンダルを引っ掛けるみたいな感じだ。活躍したのはスパの糸。粘性がある。なんたって獲物を絡めとるんだからな。
俺の毛にもフィットだ。
その爪を俺の前脚に空間固定しておく。でも邪魔だから、普段は亜空間に収納。呼び出した時だけ前脚に装着だ。気をつけないと、近くにルリハとかいたらスプラッシュだからな。
ルリハとハッチ、スパも呼んで、戦闘中に俺の前には出ないように言っておく。危ないからな。すると
『蜘蛛の糸で結界を張れるようになったぞ!』
スパが叫ぶ。マジか?進化が半端ないな。それなら安全だ。
『すげぇ!スパ、守ってくれるのか?』
『あぁ、友達だからな』
『マジか、俺はしびれたぞ、スパ!』
ルリハも嬉しそうだ。
『俺は麻痺攻撃を覚えたぞ!』
『お尻の針か?』
『頬袋の花粉だ!』
意外な戦法だな。
『何?花粉を吸ったら麻痺るのか?』
ルリハが聞く。風で流れてきたら俺たちも危険だ。
『風魔法で散らすから大丈夫だ!俺も簡易な結界を使えるようになったから、自分も守れる』
『マジか!すげぇぞ!!』
俺もルリハも大絶賛だ。
ハッチとスパが帰った後の巣穴で
『なぁ、ルリハ。俺たちの最弱称号はいまだに健在だ』
『だよな…所詮うさぎとネズミだ』
『巣穴に逃げ込めばこちらのものだが、外は危険がいっぱいだ』
『そうだな』
『俺たちも防御が必要だとおもうんだ』
『切実だよな!』
『結界を作れるようになりたい』
『俺もだ!いつもハルカに守られてるからな。せめて俺がハルカを守りたい』
ルリハを胸に抱きしめる。ひしっとしがみつくルリハ。
『今までも治療してくれただろ?』
『それはハルカが俺の前にいてくれるからだ』
『ふはっそうだな』
『あぁ、お互いに大事なんだ!出来ることするのは当たり前だ』
そう、ルリハは本当に真っ直ぐだ。ひたすらに。
『お互いに守れるように、そして、自分も…』
『分かった!結界だな』
『何か、呪文とか』
『そうだな、バリア!とか』
『普通だろ?守れる!とか』
『まんまだろ』
『…』
『…』
『どうする?』
『…俺たちだけだと決まらんな』
そうだな、まとまらなくて黙り込んでしまう俺とルリハ。いつもならカズハがならこうしよう、と提案してくれるんだ。でもここにカズハはいない。どうするか?
『あ、シールドだ!』
『それだ!』
って事で呪文というか、言葉は決まった。後は発動だな。
シールドは守るためって考えだが、敵を封じ込めるという使い方もあるのか?単体で強い場合だが。
俺は自分とルリハを守るようイメージする。堅牢なシールド。そうだな…ダイヤモンド並みの硬さだ。
『シールド!』
どうだ?いや、攻撃されてないから分からんな。
『ヤッホー!ハルカ、ルリハーいる?』
アベルだ。丁度いい。
『いるぞ!巣穴1だ』
『行くよー』
シュン
やって来た。アベルの管理する宮殿から声が届く仕組みがある。
『やぁ!疲れたよ。ハルカーもふらせ…べふっ』
ぶつかったな、俺のシールドに。
顔を強打して踞ってる。
『アベル、丁度良かった。シールドの硬さはどうだ?』
『ハルカ、酷いよ!』
えへへ。
『硬いだけが全てじゃないよ!柔らかく受け止める結界だっていいんだ』
受け止める?ルリハと顔を見合わせる。
『あ、ゴムだ!跳ね返すんだよ』
『あ…返すのか』
なるほど。受け止めて終わりじゃなく跳ね返す。それいいな。
『なるほどなぁ』
『ほら、柔よく剛を制すってね!』
格言だな。
『おぉーアベル凄ぇー!難しい言葉知ってんな』
ぽよんぽよんな玉、風船みたいな感じで伸びるけど破裂しない。受け止めて貫通しないで跳ね返す。
ジャイアントトードの皮みたいに柔軟で分厚くて…ダイヤモンドみたいに硬い。
どうだ!
『アベル、俺に突っ込め』
ん?と言う顔をしながらも素直なアベルは助走を付けて突っ込んで跳ね返った。
壁に当たる前に
『シールド!』
ルリハが受け止めた。ぽよんぽよんしてるぞ?
『柔らかなシールドで包んだ!トランポリンだ』
なるほどな。
『硬い結界が作れるなら空中に結界を出せば空を歩けるよ』
とアベル。なるなる。巣穴は余り天井が高くないから、3段くらい作ってみる。
おっ、歩けるな。
『でもよ、無防備だぜ?』
だよな?全方位から攻撃されるぞ。なら見えなければいいのか。隠蔽?シャドウは影だな。プリズムは光か…光。
『『光だ!』』
偏光させて、見えなくすればいい。
ルリハが俺が作った結界階段に乗って目を瞑る。
ぼやっとしたと思ったらルリハが消えた。光の屈折を利用して、見えなくしたのか。全方位からか…?指方性があるとある角度から見えたりしないのか。
チョロチョロと歩き回ってみたが見えない。
『ルリハ…凄い。触ればいるのに…見えない』
『だろ?光を味方につけたぞ!』
ドヤってるルリハが見えた。解除したらしい。
『でもな、ベビとか温度を感知する奴もいるぞ』
『それな…』
『視覚、聴覚、体温…触覚、それらを完璧に制御出来れば、目の前を熊が通っても安全だ』
『だよな』
アベルも考え込む。
『なぁ、なんだっけ。あの錯覚させる奴』
ルリハが聞く。
『なんだ、それ?』
『えっとな、黒い紙に白い丸と白い紙に黒い丸。同じ大きさの丸なのに、白い丸が大きく見える奴』
『あー確か幾何学的錯覚だな』
『そうだ、それ!それを使えば誤魔化せないか?』
『視覚だけだろ?』
『錯覚はイリュージョンだろ?いないと思わせるんだ!触覚的にも』
『出来るのか?』
『手触りを誤魔化せばいい』
『触ってないと思わせる?』
『そうだ!』
アベルが思案げに
『相手が触ろうとしてるなら誤魔化せる。ただ、闇雲に攻撃して来たら?』
『もちろん逃げる』
だよな。要はそこにいるから攻撃される。なら攻撃されないよう見つからなければいい。
『見つからなければいいんだ』
ルリハが潤んだような黒目を輝かせる。
『ルリハ、要検討だな。温度はどうする?』
『拡散させるか…』
なるほど。点在させてどれが本物か分からなくするのか。
『フェイクだな』
『おうっ!』
『何それ?』
アベルが食いつく。
『たくさんの反応があれば、どれが俺たちか分からなくなるって事だな』
『そうか!同じ温度のものを10個置けば、分散するから危険が減る』
『そうだぞ!』
やっぱりルリハは凄いな。理屈が分かっているからこそのアイディアだ。
俺たちはそんな風に防御について話し合った。
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