12.お疲れだよ
目が覚めた。目を開けると水色の髪が見えた。アベルが俺を首元に抱きしめて寝ている。背中にそっと手が回されていてホールド中だ。まぁぎゅうぎゅうされてないからいいか。
胸元のルリハは俺の胸毛に埋れて頭しか見えない。俺のもふ毛はなかなかだ。
前脚でルリハの頭をそっと撫でると自分胸毛も撫でる。横になった状態で耳をぴくぴく鼻をぷもぷも、しっぽをタンタンする。一連の動作をすると落ち着くな。少しだけ体を舐めてきれいにする。
昨日を振り返る。最後のあれは何だったんだ?確か怒りで頭が真っ白になったことは覚えているが。あの時、魔法を発動したのだろうか?
自分の前脚を見る。もさ毛に覆われた前脚が見えた。まるんとしてて可愛い。
いや、違う。今考えるのは、昨日のアレだ。魔法だろうか?
怒りに任せて発動したアレだ。眩く光ったのは覚えている。何かを発動した?あの時は確か、ナツキに会えてないのにって思ってそれで…その後のことは覚えてない。
ダメだ。分からない。考えても仕方ないか…アベルが起きたら聞こう。
そのままなんとはなしにアベルを見る。
アベル
種族 人魚族
年齢 ***
レベル 32(人換算128)
体力 960
魔力 ***
知力 ***
魔法 ***、***、***、***、***、***、***
おっ、知った情報は見えるのか…。俺は人に換算したらレベル40。冒険者だとCランクか。
微妙だな?その他大勢の範疇だ。せめてBランクぐらいになりたい。
それにルリハを付き合わせていいのだろうか?小さいネズミのルリハは、俺よりも体力がない。と言ってもだいぶ追いつかれたが。
ルリハを見る、あれ?少しだけ引きで見てみる。大きくなってる?
いつもなら俺の胸毛に埋れて頭と顔も半分しか見えないのに、今は口元まで見えてる。しがみ付いているその前脚をそっと外して全身を確認する。前脚でしがみ付いていたが、なぜか脚は広げていてお股が全開だ。うん、小さなぶどうよりさらに小さな丸が2つ見えた。
いや、それはどうでもいい。サイズだ。本当に少しだけ大きくなってる…6cmくらいか?
俺は成長してないんだろうな…。どこかで背丈を測ろう!もしかしたら本当に少しだけ大きくなってるかもしれないしな。
ルリハが俺を探して(多分)前脚を彷徨わせる。そっと寄り添うと顔から俺の胸毛にダイブした。少し羨ましいと思う。自分にはダイブ出来ないし、ルリハは頬ずりしか出来ないし、アベルはもふもふしてない。
俺が間違いなく一番もふい。ふと顔を胸毛に近づける。お、鼻先だけもふれた。ふふふっ、これで俺も胸毛の恩恵に預かれる。
何度も言うが、人間だとキモいがうさぎなら許される。
そうこうしているうちに、アベルが目を覚ました。眠そうに瞬きをするとにっこりと笑って俺に頬ずりをした。
微妙にウザイが、仕方ない。色々と聞きたいこともあるし。頬ずりが終わったので、体を舐める。落ち着くな、耳を動かして音を拾う。うん、周りはいつもと同じだな。変わった音は聞こえない。
さて、起きるか。うさぎ生としては活発に動く時間を過ぎている。
ルリハは俺にしがみ付いているから、そのまま抱えてベットから飛び降りる。
ぴょんぴょん跳ねてマイルームを出て、居間に入る。
ごそごそと保管庫から木の実を出して齧る。うん、やっぱり食事は大切だ。
前歯が痒くなるから硬い木の実を齧って割る。柔らかい果実を食べて、中にある小さな種はルリハ用に取っておく。
ふう、命の水を水筒(常備してる)から飲む。うん、生き返るな!
さてと、ルリハを起こさないように毛繕いをしよう。うさぎでも身だしなみは大事だ。
胸毛はルリハが起きてから念入りにするとして、お股の掃除でもするかな。毛に覆われた鈴さんたちを舐めて(ルリハを抱えながら)、後ろ脚から太もも、背中へと進めていく。最後は前脚を舐めて顔だ。ううん、きれいになったかな?
まあな、浄化できれいに出来るけどやっぱり習性としてな…やらないと落ち着かない。
ふわぁ、終わった。うんこは散らしたし、あとは草でも齧りながらダラダラしよう。
良さそうな草を取り出してソファに横倒しになって齧る。美味しくは無いんだけどな…。
もぞもぞと胸元でルリハが動く。ん、起きたか?
と思ったらマイルームの扉がバァン、と開いて
『ハルカー、ルリハー』
と叫びながらアベルが飛び出してきた。びっくりした!なんだ?
『アベルどうした?』
アベルは俺を見て胸元に埋れたルリハも見て、なぜか泣きながら
『良かったー…間に合わなかった夢を見て、そしたらいないし…えぐっ、ぐすん…』
なんて不吉な夢を見るんだよ!怖いなぁ。
『いや、勝手に殺すなよ!生きてるぞ?』
アベルは俺を見てまた顔から背中から尻尾まで撫で回した。やめてくれ、しっぽは敏感なんだ。耳もダメだぞ?眉間の撫で撫では緩そう。うん、決して気持ちよくなんか無いぞ?
そうそう、その辺りが気持ちいいんだ…
といかん、いかん、また寝るところだった。アベルは俺を抱きしめてまた寝ようとしている。
『アベル、聞きたいことがあったんだ!起きろー!』
さらに俺に顔を埋めて
『んーもう少し…ママ、お願い…』
……ママだと?
まるでその声が聞こえたみたいなタイミングでひゅうと風が吹き、マイホーム(巣穴)の扉がバタン!と開いて、目の前に小さな女性が立っていた。
白くてふわりとした服を着た小さくて可愛らしい女性だ。
これはママフラグでは?
俺は咄嗟に寝たふりをする。きっと見ちゃいけないヤツだ。
『うふふっ、可愛いお願いだけど…ダメよ?ベル…起きなさい!』
優しそうな言い方だけど有無を言わさない強さが言葉に現れていた。怖えー。
ぴくりとアベルが震えて目が開いた。それもしっかりぱっちりと。そして目の前に浮いている小さな女性を見て、一瞬止まってから見なかったことにしてまた目を瞑った。
それはダメだろう。
ちなみに俺は目を瞑っているが、ヒゲの感触と耳で聞こえた瞬きの音で判断している。
うさぎソナーは優秀なのだ!
案の定、女性からは怒りの波動を感じた。そして
バチコーン、と良い音がした。
ぴくりとアベルの体が跳ねる。つられて俺の体もだ。
『いい加減に起きなさい!抱いているうさちゃんの方が空気が読めてるじゃないの…全く』
ぷんぷんしてる女性はアベルのママだろう。アベルが飛び起きると
『ママ…』
『母上、でしょ?ベル…』
怖えーやっぱり怖えよ…俺は真剣に寝たふりだ。起きちゃダメだ。目が合ったら目で殺されそうだ。アベルに隠れてぷるぷると震える。
『あら、怖がらせてごめんなさい!あなたには全くこれっぽっちも怒ってないわ…あなたにはね!』
2回言ったぞ?
アベル、骨は拾うからな!
『は、母上。どうしたの?』
必殺可愛い顔で誤魔化そう、だな。
※読んでくださる皆さんにお願いです※
面白い、続きが読みたいと思って貰えましたらいいね、やブックマーク、↓の☆から評価をよろしくお願いします♪




