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「メイド服なんか絶対に着ません」とゴミを見る目を向けていた氷の令嬢が、俺のメイドカフェになぜか毎日居る  作者: ツインテール大好き


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第4話 私、令嬢じゃないので

 白銀の令嬢の隣に座る、黒いワンピースを着た眼鏡の少女。氷の令嬢に気を引かれすぎていたが、こちらもなかなかの美形だ。

 彼女は貴族のような態度で、オレの話に興味があると言った。


「あ、あのさ。オレはメイドカフェを開こうとしてて」

「なんと。学生なのに経営者とは、素晴らしい」

「それでメイドさんを募集していて」

「ふむふむ、とても興味を惹かれる内容だ。もっと説明するといい」

「もし可能であればだけど、君たちにメイドをやってもらえないかと」

「ふむふむ……それは面白い。検討してやってもいい」


 熱心にオレの話を聞いてくれている!

 願ってもないチャンスだとオレは気をよくして会話を……。


「ストップだ! (しのぶ)!」

(つかさ)?」

「ここから先は俺から説明しよう。構わないな?」

「……ほう、なかなかできる」


 司がカットインする。どうしてこのタイミングで横槍を入れたのか不思議だ。うまく進んでいただろうに。

 黒髪の少女がそれを褒めているのもわからん、どういうことだ。


「俺達、実はこの近所の神田にメイドカフェを開くつもりでさぁ。とびっきり可愛い女の子を探してんだよねー」


 などと、司が会話してる最中にメッセージが届く。差出人を見ると驚くべきことに司からだった。プロのナンパ師になると喋りながら別のメッセージを送ることが出来るのか。


『惑わされるな令嬢を構え』


 ……はっとして氷の令嬢を見ると彼女は黙々と食事をしていた。

 そうか、黒髪の子はあえて聞き役になることで彼女から注目を逸らしていたのか。

 よく見ると黒髪の子が机に置いていたのは売店のサンドイッチで、ここで食べずとも立ち去れるものだった。


「自己紹介がまだだったよな。俺の名前は一色(いっしき)司。君の名前は?」

「俗世の人間に名乗る名はない。闇焔の狂狩人【ダークネス・マッドハンター】と呼ぶがいい」

「ガードが堅いなー。にしてもダークネスか……長いから闇ちゃんって呼んでもいいか?」

「不許可」


 オレには伝わったぞ司。

 オレ達が好きなジャンプ漫画『To LOVEる-とらぶる- ダークネス』のキャラ名から引っ張って闇ちゃんに決めたんだろ。やるな司。

 オレがうむうむと唸っていると。


『感心してないで令嬢に声をかけろ』


 わかった。もうわかったって。

 だけどよ。このいかにも話しかけんなオーラ出してカルボナーラを食べ進めてる令嬢になんて声かけたら良いんだよ。


「……う、うん(咳払い)。オレは東城(とうじょう)忍っていうんだ。君は?」


 緊張しながらも司に倣って自己紹介をする。


「…………氷上(ひかみ)(れい)です」


 令嬢は若干迷惑そうな顔をしながらも、無視せずに答えてくれた。


「そっか、氷上さんっていうのか」

「はい」

「メイドカフェの件、どうかな?」

「お断りします」


 はっきりと嫌と言われると心に来る。でも、またとないチャンスなんだ。

 こんなに綺麗な女の子がメイドさんになってくれたら、どんなにいいか。


「そこをどうにかできませんかね?」

「無理です」

「…………そっか」

「…………(無言で食べ進める)」


 は、話すネタがない!

 それにこれ以上勧誘は無理!

 対面で話すだけでドキドキしてるのに!

 ちらっと隣を伺う。


「闇ちゃんてアニメとか好きそうだよね。こうみえて俺もアニメ好きなんだぜ」

「闇ちゃんじゃない。闇焔の狂狩人ダークネス・マッドハンター

「BLEACHとか幽☆遊☆白書とかさ。あと最近だと呪術廻戦も見てるぜ!」

「ラインナップが典型的なオタクに理解のない陽キャ。だけど幽白はわたくしも好き」

「だろ? 飛影とか好きそうな喋り方してるよな」

「そういうのを偏見という。でも飛影は好き」

「あっオレはNARUTOが——」


 イテッ! 司に足を蹴られた。


『こっちに混ざんな』

『でもでも』

『でもじゃない。褒めろ、いいから褒めろ』


 褒めろって言われてもよ……。何を褒めればいいんですかね。


「ひ、氷上さんは可愛いね。へへへ……」

「……そうですか」

「氷の令嬢って知ってる?」

「知りません」

「あ……こういう風に冷たい態度を取る令嬢のことを言うんだけど」

「冷たい? 初対面で断りもせず同席して、怪しい勧誘をする男性に対しては至極真っ当な対応に思えますが。私の自己認識としては決して冷たい人柄じゃありません。それに私、令嬢じゃないので」


 うお、凄く嫌われているようだ。心が痛い。

 と——突然隣の2人が立ち上がった。


「バカ野郎!! ジャンプの最大瞬間風速はBLEACHの尸魂界篇が連載していたときだろ!!」

「愚か者め。ジャンプの最大瞬間風速はD.Gray−manでアレンウォーカーが『神ノ道化』を覚醒させたときだ。異論は認めん!」


 テーブルをドンドン叩いてヒートアップしてる。どういう流れでこうなったのかわからないけど双方譲らない白熱の舌戦(ぜっせん)をしている。

 氷上さんも驚いて隣の友人を見上げているし、周囲の視線も更に集まる。

 これは……ジャンプ好きとして放ってはおけない!


「二人ともなに言ってんだ! ジャンプの最大瞬間風速はNARUTOのサスケ奪還編が連載されていたときで——」

「忍! ややこしいからお前はそっちの令嬢と話してろ!」

「嫌だ! オレもジャンプについて語りたい! 仲間ハズレにしないでくれ!」

「ほう、ならば今宵の聖戦を始めるとするか」


 そして……オレ達の視線は一人に集まった。

 そう、極力関わらないようにカルボナーラを食べている氷上さんに。

 三人の視線を受け、流石に我慢できなくなったのか気まずそうにフォークを置く。


「……あの、なんで私を見るんですか?」

「氷上と言ったか? 君の立場を教えてくれないか」

「氷上さんが好きなジャンプ漫画を答えて欲しいんだ。あとオレの店のメイドになってくれ」

「残念。零はわたくしの味方。貴方達に勝ち目はない」

「静子まで意気投合してるし……」


 友人に裏切られ、困惑している氷上さんに迫る三人。


「BLEACHだよな!」

「違う! NARUTOに決まってる!」

「D.Gray−man、そう答えて」


 はぁ、と氷上さんは大きくため息をついた。


「もう……静かに食事をしたかっただけなのに……」

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