第3話 勧誘
「氷?」
眼前の銀髪少女から胡乱な視線を浴びる。
その仕草や態度はごく普通の少女のそれであるが。
透き通る白肌、水晶のような瞳、すらりと長い鼻、細枝のような指……オレの視線を放さない豊満な胸。
彼女を構成するすべてのパーツがバランスよく完璧に調律されており、どれだけ粗探ししても欠点の一つもあげられそうにない。
絶世の美女——時代が異なれば国を傾けてもおかしくないような、恐怖すらある。
特にその肩を撫でる流麗な銀髪は、オレがイメージした通りの氷の令嬢で。
こんな子にオレ好みのメイド服を着せたら、自分が爆発して無くなるんじゃないかとすら思う。
「……なんですか?」
鈴のような声に現実に引き戻される。
すっかり見惚れて凝視していたら、咎められてしまった。
「なんだあいつ」
「オレ達が狙ってたのによ」
あと周囲からの視線も痛い。
オレの思い込みじゃなく、ガチでみんな浮き足だってこの子に注目してたみたいだ。
そこに、
「おい忍、トレー持って走ったら危ねぇぞ。しかしここだけすげぇ人だかりだな? っと席を確保してくれたのかサンキュー!」
追いついた司がドカッと椅子にかける。
初対面の女の子と一緒なのによく態度がブレないな。こういう時は頼もしい。
「で、首尾はどうよ……って、は?」
だが目の前の令嬢を見た瞬間に完全に硬直した。司もよく見てなかっただけか。
歴戦の司でさえ、平常心を取り戻すのに10秒はかかった。
令嬢はその間に隣の友達と黙々と食事を始めた。
スマホが振動する。司からのメッセージだ。
『誰だこのレベチな美人は』
『知らないのか?』
『学内の生徒なら俺の耳に入ってないわけない。他所の生徒か? まあいいだろう、それより……』
司はそこまで送ると、オレの背中をトントンと叩き。
白い歯を見せつつ親指でGOのサインを出した。
お、オレに行けというのか。
周囲の人間もそれとなくこのテーブルに注目している。緊張感がハンパない。
『忍、第一声はお前が始めろ。会話が始まったら俺もサポートに入る』
ある種の告白のような緊張感だが。
……大丈夫だ、司もついている。
それに……オレだってこの子にメイドになって欲しいという気持ちがある。
「あ、あの!」
パスタをすくっていた令嬢がビクンと跳ねる。
思ったより大きい声が出てしまった。勢いに任せるとこういうことあるよな。
「オ……オレの……」
言え、胸に渦巻くこの想いを言葉に出すんだ! オレ!
「君が——オレのメイドになってくれないか!!」
…………。
静まり返る周囲。
でもオレはちゃんと伝えたぞ。
隣で司はうんうんと頷いている。
令嬢は困惑した様子でその小さい口を開き。
「あのですね——」
迷惑そうな顔で何か言いかけたが、
「ふむ、このわたくしをメイドにしたいと申すか」
そう反応したのは令嬢の隣に座っていた黒髪ショートの少女の方だった。
「よかろう。どういった矜持であるか話してみるといい」




