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「メイド服なんか絶対に着ません」とゴミを見る目を向けていた氷の令嬢が、俺のメイドカフェになぜか毎日居る  作者: ツインテール大好き


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第21話 再来の敵役

「なんやー(しのぶ)も隅に置けんな〜。好きな女の子が出来とったんか〜」


 はぁ……ウザいリアクションだ。


「しかし『オレのヒロイン』いうてた氷上(ひかみ)さんというのは、そんなに別嬪(べっぴん)さんなん? はよ会ってみたいわ」

「口説くなよ? あと、さっきいったこと覚えてるな? お前の後輩のGUILDの小泉ってやつが氷上さんをモデルに撮影しようとしてるから止めるんだぞ?」

「ワイとて後輩の活動の邪魔したくないんやが……。忍の頼みならしかたないなー」

「オレは赤の他人のふりして見守ってるからな。あと氷上さんに『あっちの男の方が全然お似合いやん』ってさりげなく伝えるんだぞ」

「そこまで言うたら裏で細工してるのバレバレやん! 忍。いつの間にそんな陰湿になったんか?」


 時雨(しぐれ)と会話しながら氷上さんがいた場所に戻るオレ達。

 ふっふっふっ、あの小泉とかいうガキも大先輩のこいつに命令されたら流石に逆らえないだろ。

 近くにこの天パがいてくれて良かった。


「しかし、あれやな。こんなクソ暑い中歩いてると河原でキャンプして撮影したの思いだすなぁ」

「ああ、オレもさっき思い出したよ」


 高校1年生の夏に、オレ達SHADEはワンボックスカーに撮影機材とキャンプ道具をぎゅうぎゅうに詰めて都内近郊の河原に出かけた。

 ショート動画のメインモデル——女王が巨大な皿の化け物と戦うシーンを撮るためだ。

 脚本(きゃくほん)を考えたカントク曰く、あれは捨てられた河童(かっぱ)の皿が三途(さんず)の川に流れ着き、死者の怨念(おんねん)を吸って進化したものらしい。


「暑さにやられた女王が急にクーラーボックスのトマトジュース被って『狂気の宴の開幕よー!』っていっとったよな」

「う、あの汚れ落とすの大変だった……。しかも撮影前にやるなよな」

「しかも夜に女王が衣装のまま花火やって服を焦がしとったな」

「ひぃいいいいい思い出したくない……」


 しかもその結果怒られるのがオレなんだからマジで人格破綻してるんだよな、あの女。


 撮影はいつもトラブルが絶えなかった。

 不意の事故なら仕方ない面もあるが、ほとんどがメンバーの人格によるものだったような。


『忍ー! 大変や! 女王が村長と喧嘩して村の祠を破壊しよったでー!』

『ひぃ、オレ達まで呪われたらどうすんだよ! だから因習村(いんしゅうむら)の撮影なんて嫌だったんだ!』


『忍ー! またカントクが勝手にワイらの金でVTUBERに投げ銭しよったでー!』

『もう資金ショート寸前なのにか!? 次のロケに行く金ないぞ!』


『忍ー! 忍がヒラヒラ衣装のお姉ちゃんについていって行方不明やー! もうフライトまで時間ないでー!』

『……本人がいないところでそれを言っても意味がないのではなくて?』


 何かあったとき、時雨(しぐれ)はいつも伝達係(でんたつがかり)だった。関西人じゃないくせにリアクションが大きいからな。

 ああ——そんな懐かしい日もあったな。


「積もる話もあるだろうが、まずは氷上さんの撮影を止めさせるぞ」

「忍はいつも一途やな。昔はルシアンルシアンよくいうて、ワイにファッション雑誌を見せびらかしとったやん。あのときは可愛げがあったのになー」

「……昔の話だろ」

「お前ルシアンみたいなドレスを作りたいて、いつも目を輝かせてたやん。今はちゃうの?」


 英国の若き天才デザイナー、ルシアン・レイヴンズクロフトは確かにオレの目標の人だった。

 SHADEで活躍すれば、ずっと追いかけていた彼に近づけると思っていた。その時は。


「……ん」


 まだ道中だが、なんか様子がおかしい。野外エリアに人だかりが出来ている。

 まさか——もう撮影が始まっているのか。みんなが氷上さんの際どい衣装に釘付けになっているのか?


「なんや? 喧嘩か?」


 身長の高い時雨が先に異変に気がつく。オレも人ごみの合間から騒動を眺める。


 その中心に立っているのは、困惑(こんわく)した表情の氷上(ひかみ)さんと……怒りをあらわにする金髪の大柄な女性。

 まるでキャバクラ嬢のように山盛りにしたヘアスタイルで、ピカピカ光る派手なドレスに身を包んだ女性は、数人の男女を引き連れて氷上さんに何かを訴えている。


 どこかで見たことある光景。あれは確か……。


「そうだ。食堂で氷上さんと喧嘩してた悪役令嬢だ」


 女帝と呼ばれている演劇サークルの怖い先輩。背後に立つのは演劇サークルのメンバーだろう。

 また氷上さんと揉めているのか?


「あれ? 小泉達やん? 何してんのや?」


 時雨の視点は違ったようで、氷上さんの近くにいる男女5名くらいのグループを見ていた。


「あれワイの後輩たちやで。忍がさっき言ってたチームGUILDや。ん、あのえらい別嬪の銀色の嬢ちゃんが忍の言ってた『オレのヒロイン』か?」

「ああ、そうだが……」


 GUILDは氷上さんの側に立って女帝を(なだ)めているようだ。

 例のガキ、小泉もいるな。


「零! またアンタなの? どうしてアンタはいつもいつもアタシの邪魔ばかりするのよ!」

志緒里(しおり)さん……これは……そんなつもりじゃ……」


 食堂の時と違って、一方的に責める女帝に対して、困った様子で縮こまる氷上さん。


「まあまあ落ち着いて落ち着いて!」


 氷上さんを責める女帝に、小泉が仲裁を促す。


「ちょっとした手違いがあったみたいですみませんねー。まさかこいつらがモデルのオファーをしてたの知らなかったっす」

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