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「メイド服なんか絶対に着ません」とゴミを見る目を向けていた氷の令嬢が、俺のメイドカフェになぜか毎日居る  作者: ツインテール大好き


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第16話 AKIBAサマーフェスティバル

 それがどれだけ期待に満ちた日であっても、今日が人生最高の日だ、と言い切れるだろうか。


 よく結婚式なんかが人生最高の日の筆頭に挙げられるけど、受験合格、スポーツ優勝、古い友との再会……人それぞれの幸せがあるわけで。

 これから先のイベントも控えている中で、まさに今日こそが最高の日だと言い切ることは出来るだろうか。


 少なくともその日は確信があった。疑うべくも無かった。

 ついに努力が実を結び、今日が人生で最高の日になると。


 だから、精一杯のおめかしをして、慣れない正装をして出立した。

 その胸の中に収まり切らないほどの希望と夢を抱いて。


 ああ、今日はきっと――すばらしい一日になる。




    ◇    ◇




「よし、お前らそろそろ出るぞ」


 司がメイドカフェ【Monochrome】の店内で声を張り上げる。


「りょーかい」

「わかりました!」

「準備出来てるぞ」


 明石(あかいし)さん、氷上(ひかみ)さん、オレの順で返答する。

 とうとうこの日がやって来た。


 AKIBAサマーフェスティバル。

 明石さんが楽しみにしていた今年初開催のイベントで、オレが作った衣装も今日のためのもの。

 コスプレ参加だけがメインのイベントでなく、秋葉原のメイドカフェやアニメショップ、同人グッズ、電化製品などサブカルチャーが集約したお祭りになる、らしい。

 

「忘れ物はしないようにな!」

「別に忘れても5分で往復出来るだろ」

「……確かに」


 会場のペルマーク秋葉原まではここから3分程度。めっちゃ近い。


「忍たちが近くに店を構えてくれて良かった。お手洗いに並ばなくて済む」

「イベントのときの混雑は長いですしね」


 オレのメイドカフェはイベント休憩用のトイレじゃないんですが……。


「よし、じゃあみんな集合だ!」


 司の号令で駆け寄る四人。


「お前ら、今日の目的をもう一度確認するぞ」

「ああ」

「いいですよ」

「一蓮托生」

「気持ちは同じか……。じゃあ……一斉に意気込みを語るぞ」


 ワンピースの進水式みたいなやつか。

 陽キャってああいうの好きそうだよな。


「俺は可愛いコスプレ美女をナンパするために!」

「メイドカフェの出店を制覇したい」

「素敵なコスプレ衣装を眺めたいです!」

「……わたくしのコスプレ大会優勝は?」


 ……まあわかってたけど、こうなるのは。


「忍! 遊んでる暇はねーつったろ! 俺達はこの店のメイドさんを集めるんだからな! コスイベに参加する女の子はメイド服に抵抗が薄いに決まってんだから、刈り入れどきだぞ!」

「わかってるよ。メイド服着てる子を探しつつ勧誘するぞ」


 司は昨日からそればっかりだ。ちょっとくらい楽しんでもいいだろ。


「零……」

「だって、コスプレのイベント参加って初めてですし。皆さんが気合いを入れて作った衣装がみたいです」

「零が興味を持ってくれて嬉しいけど、わたくしの応援もして欲しい」

「冗談ですって。今日はずっと静子と一緒にいますから」


 メインイベントの中にはコスプレの出来を競う大会があるようで、明石さんはその優勝を目指している。

 大会参加には審査があり、コスプレエリアにいるレイヤーさんの中から、スタッフが『この人こそ!』と思った人に声をかけて招待するらしい。

 いいな、その仕事オレもやりたい。


Monochrome(モノクローム)の名前で受付したんだからちゃんと応援して欲しい」

「わかっている。俺達もたびたび様子を見に行くし、審査が通ったら応援に行くからな」

「絶対通る。SHADEのデザイナーさんが作ってくれた衣装だから」


 司は改めて、各々の目的をまとめる。


「つーわけで、俺と忍はメイドさん探し」

「わたくしと零はコスプレを楽しむ」

「私は着ませんけどね。見る専門です」

「さあ……行くぞ!」

「「おう!!」」


 三人ともジョースター一行がエジプトに行くくらいのノリだが、徒歩3分だからな。




 少なくとも、今日は楽しい一日になるに違いないとぼんやり思っていた。

 まだ、このときは。背後から影が、すぐそこに迫ってきていることを知らなかったから。

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