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台湾祓清愛哀歌ー祓清の絆  作者: シットライヌ
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第十話「電脳の呼び声、鏡の中の双子」


台湾祓清愛哀歌:第十話「電脳の呼び声、鏡の中の双子」

1.双霊シュアンリン相談事務所の「警告」

台北に戻った双霊相談事務所には、いつもの蒸し暑い日常が戻っていました。

蓮が八極拳の「震脚」で事務所の床を揺らし、美鈴がiMacの前で「また床が抜ける!」と文句を言う。しかし、その平和な空気は、美鈴が上げた小さな悲鳴によって破られました。

「……先輩、これ。私たちのホームページに、変な書き込みが」

画面には、美鈴が管理している活動記録のコメント欄が表示されていました。そこには文字化けしたような記号の羅列に混じって、「旧時代の送魂では、次のゲートは開かない」という不気味な一行が残されていました。

「……枢栄会か」

蓮は動きを止め、汗を拭いながら画面を覗き込みました。

「ええ。アクセスログを辿りましたが、いくつもの海外プロキシを経由していて、足取りは完全に消されています。まるで、私たちの行動をすべて『高みの見物』しているみたいで……」

美鈴の隣で、シャドウが虚空に向かって低く、不気味に喉を鳴らしました。

2.ネットカフェ「電脳迷宮」の異変

そんな折、大同区にある大規模なインターネットカフェのオーナーから、林さんを通じて調査依頼が舞い込みました。

「特定の時間帯に、客全員のモニターに『白い服の女』が映り込み、それを見た客がひどい眩暈と、自分の住所をブツブツと呟き始める」という異常事態です。

蓮たちは黒のカローラを走らせ、現場へと急行しました。

2000年代初頭のネットカフェは、タバコの煙とCRTモニターの発熱で独特の熱気が充満しています。美鈴は持ち込んだノートパソコンをネットワークに繋ぎ、眉をひそめました。

「……先輩、これ。幽霊が自発的に出ているんじゃないわ。ネットワークを通じて、外部から『幽霊の波形』が強制的に流し込まれてる。……呪詛のデジタル配信です」

蓮には何も視えません。しかし、美鈴の視界には、店内の全モニターから溢れ出した「黒い霧」が、蜘蛛の巣のように客たちの背中に絡みついているのが見えました。

「シャドウ、霧の根元を噛み切って! 先輩、モニターの電源を一斉に落とします、送魂の準備を!」

蓮は符術を指に挟み、帰真剣を抜き放ちました。

「道法自然、破邪顕正! 鏡に惑う魂よ、本来の道へ還れ!」

剣が空を裂き、符が青い火花を散らしてネットワークのノイズを焼き切ります。美鈴のハッキング対策と、蓮の物理的な「送魂」の合わせ技によって、店内の異常な気配は霧散していきました。

3.暗闇で見つめる瞳

一方、台北市内の高級マンションの一室。

張志豪ジャン・ジーハオは、壁一面のモニターに映し出されたネットカフェの監視カメラ映像がノイズで消えるのを、穏やかな表情で見つめていました。

「……ふむ。道教の術をデジタル波形とぶつけて相殺するとは。佐藤蓮、そして李美鈴……彼らの『混成術式』は、データとして非常に興味深いね」

志豪は、旧日本陸軍の黄ばんだ極秘資料――「霊界通信の軍事的応用」と書かれた頁――を愛おしそうに撫でました。

「志豪、遊んでないで。あのネットカフェから吸い上げた『住所データ』、もう裏の名簿業者に売っておいたわよ。次の実験の資金が必要でしょ?」

姉の張麗華ジャン・リーファが、ワイングラスを片手に冷ややかに笑いました。

「わかっているよ、姉さん。僕はゲートを見つけたいだけだ。あのバディが僕の理論をどこまで『磨いて』くれるか、もう少し観察させてもらうよ。……まだ、彼らと直接会う必要はない」

志豪が指を鳴らすと、部屋のモニターが一斉に「双霊相談事務所」のブログ画面に切り替わりました。

4.エピローグ:勝利なき「担仔麺」

事件を解決したものの、蓮と美鈴の心は晴れませんでした。

「……先輩。私たちが霊を祓うたびに、犯人はそのデータを取っている気がするんです。まるで、私たちがテストプレイヤーにされているような」

美鈴の言葉に、蓮は重く頷きました。

「ああ。敵は姿を見せないだけでなく、俺たちの力を利用しようとしている。……だが、俺たちが立ち止まれば、救えるはずの人が犠牲になる」

二人は帰り道、沈んだ空気を変えるように、屋台で「担仔麺タンツーミェン」を注文しました。

エビの出汁が効いた優しいスープと、上に乗った肉そぼろのコク。2000年代の台北の夜風を浴びながら啜る麺は、唯一の救いでした。

「……後輩さん、次はもっと強固なセキュリティを考えないとな。iMacが呪われないように」

「そうですね。……でも先輩、セキュリティソフトより、先輩の八極拳でパソコンを叩き壊さないかの方が心配ですよ」

二人の笑い声が、喧騒の中に溶けていきます。

背後で、一台の黒いセダンが静かに通り過ぎていきました。その車内に、志豪と麗華が乗っていることには、まだ誰も気づいていませんでした。


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