10.三人の少女、ひとつの異物
机上に並ぶ複数のモニターが一斉に光を帯びた。
同時に、こちら側のカメラも起動し、それに伴う微かな駆動音が、乾いた会議室の空気に溶けた。
「これ繋がったの!?」
右側のスピーカーから、突き抜けるように明るい少女の声が跳ねた。
「エマ、静かに」
同じモニターから、落ち着いた、年配と思われる女性の声がその勢いを受け止める。
続いて、正面のモニター群から「ふふっ」と軽やかな笑いが流れた。
嫌味の欠片もない、自然に空気を和らげる笑い声。
直後、正面のモニターに映る体格の良い壮年の男性が、ゆるやかに口を開く。
「この度は集まっていただき光栄だ。
私は国際共同防衛研究機関VELUCTの対TARAK-X部隊の総司令、ジョンソンだ。
以後よろしく。」
硬質な声。けれど、その奥には多くの命を預かってきた者だけが持つ重さがあった。
「さて、未知の機構体。
これらが降下した国こそ、世界を牽引していく責務を負う。
まずはパイロット達の自己紹介から始めよう。早速だが、うちから失礼するよ。さぁ、オリビア」
名を呼ばれた少女が、静かに姿勢を整えた。
腰まで流れ落ちる金髪は、波のように緩やかに揺れ、淡い光を拾っては静かに返す。
透明度の高い青の瞳は淡く揺れ、わずかなまばたきすら絵のようだった。
「はじめまして。あたしはオリビア・カーター、十七歳です。
未知の機構体との共鳴率が高く、この場に呼んでいただけることとなりました。
今後、皆さんの力をお借りすることが多いと思います。その際はよろしくお願いしますね。
……あ、年長ですが、気軽にオリビアと呼んでください」
柔らかい声音のまま、彼女は丁寧に一礼した。
オリビアと呼ばれた少女が姿勢を整える際、椅子の背もたれが微かに軋む。
「はい! はい!!」
その音をかき消す勢いで、右側のモニターが震えるほどの声が飛んだ。
ジョンソン司令が「どうぞ」と促すと、少女は勢いそのままに名乗る。
濃い金髪を軽く束ねたツインテールが、動くたびに光を散らす。
同じ青い瞳でも、こちらは弾けるような明るさと無邪気さを宿している。
均整の取れた顔立ちのはずなのに、表情の変化が幼さを強く印象づけた。
「エマ! エマ・ハリントン、十二歳です!
強いのでエースやってます!
もっともーっと強くなりたいから、エースさんたちはオレと模擬戦やって欲しいです!!」
言い終えると本人は満足したらしく、勢いのまま椅子へ腰を落とし、金属の脚が軋む音が空気を割った。
あまりにも真っ直ぐで、あまりにも抑えが利かない。
それでも、だからこそ光って見える類の人間だとわかる。
ジョンソン司令は、今度は左側のモニターへと視線を向ける。
残されたのは――俺と、もう一人。
古川がミーティング前に告げた言葉を思えば、俺を最後に回す判断は妥当だろう。
左側のモニターに映る少女が、静かに口を開く。
藍色の髪は、夜気のように揺れ、長い前髪がまつげをかすめる。
深い紅の瞳は揺れず、まっすぐに焦点を結んでいる。
その姿勢は、言葉よりも強く彼女の本質を語っていた。
「カレン・リウ。十五歳です。
主に戦略を評価され、この席にいます。
よろしくお願いいたします」
感情の揺れを最小限に抑えた声音。
その落ち着きが、かえって存在感を際立たせ、彼女の静けさが画面越しに広がるようだった。
そして、全員の視線が一斉にこちらへ集まる。
まだ俺は何も言っていない。
なのに、この場の空気だけで、俺が異質だと理解されている。
その認識で構わない。
異質であるほど、到達したい場所へ踏み込める。




